第244話 ノーストリリア城でリモート会議
ノーストリリア城の俺の部屋は塔の上階にある。
同じ階のもう一つは護衛兵の待機部屋だ。
リンギオとソーンは今そちらに行ってもらってる。
ソファに座り紅茶を一口。
目の前に展開されている、
空中投射された複数の画面には、
キトゥルセン連邦内の大臣や将軍などが映っている。
窓の外には満月。風がガタガタとガラス窓を鳴らしている。
「それとチェロキー湖戦線からの情報ですが、
未確認の魔剣使いが現れたとのことです」
焚火の近くなのか、バルバレスの顔は赤く照らされている。
「被害は?」
「魔剣の能力により、同盟の兵士、約4000が犠牲に」
多いな……。
「どんな能力か分からないか?
ユウリナ、機械蜂の映像は?」
数秒後、画面が一つポップアップされた。
「これは……なにが起こったんだ……」
真っ白い大地に、武器や甲冑がたくさん落ちている。
昼間の映像だった。
ミルコップが唸るのも無理はない。
甲冑の一つに機械蜂が寄る。
倒れている兵士の顔には、
大量の白い粒が浮き出ていた。
「これは塩ネ。
多分テアトラの将軍が持つ、
〝魔剣ゾルティアート〟
塩ヲ操る能力ヨ」
「塩……じゃあ人体の塩分を全て吸い出されて……
殺されたってことか? 4000人の軍が丸々……」
「そウよ」
「何という恐ろしい魔剣だ……」
レオプリオが呆然と言う。
「それと、敵の機械兵、通称ゴーレムの件ですが……
確認されたゴーレムは全部で27体。
これにより北ブリムス同盟軍は一気に押し返され、
戦線はタシャウス王国まで後退した模様です」
画面にゴーレムの映像。
そうそう、厄介なんだよな、コレ。
「こちらの神官……ユウリナ様が操る機械兵42体、
狂戦士化できる【十牙】の獣人4名、
捕虜の魔人ザヤネ、それとネネル将軍を派遣、
既に半数のゴーレムは破壊したとの報告が入っています」
「そうか、それは予想以上の戦果だ。
マーハント、ザヤネの様子は?」
「今のところ従順そのものです。
部下たちとも打ち解けてきたようで」
「油断はするな。引き続き頼むぞ」
「ちょっといい?」とネネルが割って入ってきた。
「地図だとジョルテシアは侵略されてないようだけど」
オレンジ色の敵勢力圏の中に、
ポツンと水色のジョルテシア連邦が島のように浮いている。
ジョルテシアにはネネルの姉が嫁いでいる。
心配なのだろう。
「厳しい山岳地帯なので地上軍は侵攻できないのだろう」
バルバレスが解説してくれた。
関連情報がパパッと出てくる。
「避難はしないのか」
「有翼人なのだからいざと言う時は飛んで逃げれる」
「しかしその先は?
生活するには拠点が必要だろう」
何人かの大臣がザワザワと話し始めた。
「移動するにも十万を超す難民が発生しますから、
受け入れの調整もあるでしょうし……」
いや、侵攻されるのは時間の問題だ。
「担当は誰だ?」
「北ブリムスの……
だめだ、三日前に死亡してます」
「他は?」
「我々が受け入れます」
声を上げたのはルナーオだった。
「食料も国費も兵士もまだ余裕があります。
手続きはお任せ下さい」
頼もしすぎる。
「助かる、ありがとう、ルナーオ女王。
そちらはどうだ?」
「こちらは第二軍をセキロニア付近、
第三軍をジャベリン自治区周辺に布陣させています。
第四軍は要請通り、シャガルムに向けて進軍中です」
ルナーオの声には芯が通っていた。
もう立派な女王だ。
地図に詳細が出る。
第二軍の将軍はウェイン、
第三軍の将軍はキョウ、
第四軍の将軍はバステロと表記されている。
それぞれが7000~10000の軍勢だ。
部屋の扉がノックされた。
入ってきたのは夜食を持ってきたマイヤーだ。
玉子と生ハムのサンドウィッチとオニオンスープ。
いい匂いだなー。
「ありがとう、マイヤー。
体調は大丈夫か?」
マイヤーは先日妊娠が分かったばかりだ。
「ええ、ご心配なさらず。
後で一緒にお風呂入りましょうね」
「ちょっ……声入るって」
「ん? オスカー様、今なんと?」
「あ、いやなんでもない、ラムレス」
ていうかラムレス、お前厨房にいないか?
口元が汚れてやしないか?
マイヤーはうふふっと笑うと部屋から出ていった。
「一つよろしいでしょうか」
画面の一つが大きくなる。
〝ラウラスの影〟長官のユーキンだ。
「テアトラに潜入した工作員から興味深い報告が」
映像が出る。
そこは岩山の街道らしき場所だった。
四足歩行の地竜のような魔物に鞍をつけ、
武装した防護服姿の兵士が上に数人乗っている。
それがずらりと彼方まで隊列を組んで伸びていた。
とんでもない数だ。
他にも犬のような魔物も複数確認できる。
あれが前線に到着したら……。
「確認できたのは北上している部隊と、
山間の平原で飼育されている箇所の2か所です」
ユーキンの報告書をよく読むと、
この映像を送ってきた工作員はダリナとドラグルだった。
二人は死んだことにしているので、
俺含め数人しか知らない偽名で記載されていた。
ちょっと感動。
二人でしっかり生きて、
しっかり職務を全うしている。
「最優先で叩く必要があるな。
……俺が行こう、全て燃やし尽くす」
リンギオ 王族の護衛【王の左手】
魔剣キュリオスを秘密裏にユウリナから渡される
ソーン 王族の護衛【王の左手】
元イース公国の将軍 老剣士で豊富な知識を持つ
ユウリナ 機械人で【七将帝】
数万の機械蜂を操り、星の管理人を自称する
バルバレス キトゥルセン連邦軍【七将帝】
総大将 右腕は戦争で失い、機械化している
ミルコップ キトゥルセン連邦軍【七将帝】
北限のノストラ王国の元国王
マーハント キトゥルセン連邦軍【七将帝】
魔物退治のプロ 信頼のおける古参の将軍
ネネル キトゥルセン連邦軍【七将帝】
ウルエスト王国の王族 雷を操る魔人で有翼人
ザヤネ 【千夜の騎士団】 影を操る魔人
ユウリナに心臓に爆弾を埋められこちら側の捕虜に
ルナーオ ミュンヘル王国の女王
精霊を操る魔剣オウルエールの使い手
マイヤー ノーストリリア城の料理番
オスカーの子を身ごもった やや変態
ラムレス キトゥルセンの宰相 食に貪欲
下あごがぷるるんしている 意外と優秀
ユーキン 諜報機関〝ラウラスの影〟の司令官
声が小さい
ダリナ 元はネネル軍の有翼人兵
裏切ったが捕まり、死んだことになって工作員として敵国に潜入中
ドラグル 元タシャウス王国の石化出来る魔人
紆余曲折あって今はダリナと共に工作員となる
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