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第162話 墓参り


シボは外縁の森にある戦没者墓地に向かっていた。


綺麗に整備された石畳の道で、王族メイドの2人とすれ違う。


オスカー様の盾になって亡くなったリーザというメイドの事を思い出した。


2人はリーザの墓参りの帰りだろう。


話したことはないが彼女は間違いなく英雄だ。


戦没者墓地は開けた静かな緑地にずらりと墓石が生えており、


奥の方では業者が墓石を設置している。


遠くで街を囲う壁の工事音が鳴っていた。


ぽつぽつと墓参りの人間が、墓石の前にいる。


目的の墓は遠目からでも分かった。


一頭の白毛竜が墓の近くで寝そべっているからだ。


「……ペグ。お前も悲しいのね」


ペグはシボを上目遣いに見て、ため息と共にまた目を閉じた。


ルレの墓の前には生前ルレが使っていた剣が刺さっていて、


周りにはたくさんの花束が供えてあった。


それを見て、シボの目には涙が溢れる。


「……ルレさん」


天気はいいが風は冷たい。


ルレとの思い出が頭の中を通り過ぎてゆく。


シボはしばらくの間その場にいた。


後ろから足音が近づいてくる。


振り返ると花束を持ったアルトゥールがいた。


「シボか……」


アルトゥールは涙目のシボを見て足を止めた。


「……出直すよ」


「いや、いいよ」


小さくうなずいたアルトゥールは花束を墓に備えた。


「……もうみんな来たんだな……


昨日の夜、オスカー様も花束を置きに来たみたいだ。


俺の部下が見たらしい」


シボは涙をぬぐい、無理やり笑った。


「それは……誇らしいね。


私ね……ルレさんの隊で本当によかった」


「俺にとっても、最高の戦友だった……」


「……だめだ、ここにいるとずっと泣いちゃう。


私もう行くわ。またね」


「……ああ」


シボは足早に墓地から離れた。




外縁の森の入り口でスノウに会った。


休みなのかラフな服装で、手には花束を持っていた。


「スノウ……墓地に行くのね」


「ああ……」


それだけ言うとスノウはシボの脇を通り、


足早に去ろうとした。


「待って! スノウ……あの時、私を援護してくれてありがとう」


ガラドレス城でハイガー旅団と戦った際、


スノウは連弩でシボと対峙した敵を射抜いていた。


「……俺は分家だからな。本家を守るってのが体に染みついてる」


「そんなこと……言わないでよ……」


スノウは少しイラついたようにため息をついた。


「俺はガキの頃からお前の家系にこき使わされてきたんだ。


シボに恨みはないが、俺の親は本家のために死んだようなもんなんだ。


なのに……オスカー様を守るのが最上の仕事のはずなのに……


あの時、常にシボ、お前を気にしていた。


守らなきゃって……体が勝手に動くんだ……。


そんな自分に心底腹が立つんだよ」


数秒の沈黙。冷たい風が街の喧騒を運んでくる。


「……ごめん」


「いや……悪い、熱くなり過ぎた。


ルレの方は……間に合わなかった。すまない」


「ううん、ありがとう」


二人は別れた。


数歩歩いたところでシボは振り返る。


「スノウ! 私の両親はきっとスノウの事誇りに思ってるよ!


王家の護衛兵団団長なんて、簡単になれるもんじゃないし!」


スノウは少しの間立ち止まったが、


振り返らずに足を進めた。



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