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第129話 対ドリュウ軍戦

ドリュウ軍が怒号と共に迫ってきた。


「魔人同士で勝敗を決めると言ってきたくせに……」


バルバレスは手のひらに拳を打ち付けた。


「まぁ予想の範疇さ。バルバレス、川岸まで進軍。


土手から上に敵軍を一人も上げるな」


「はっ!」


水量が減った川からこちら岸へ来るには腰ほどの高さの段差がある。


そこで迎え撃つ作戦だ。


クロエは既にミルコップ軍の白毛竜に回収され、


迫りくる敵歩兵に氷弾の雨を降らせている。


ギカク化で体力をかなり消費したようだが、


訓練のおかげかまだ戦力として活躍できそうだった。



前線の兵同士がぶつかった。


血しぶきと共におびただしい数の武器や腕や首が飛ぶ。


しかし、やや高いところから攻撃できるこちらはやはり有利なようで、


ぶつかった前線の敵軍ははじき返され川に落とされた。



川向こうにはまだたくさんの敵軍が控えている。


至る所で投石器の準備をしていた。


すぐにネネル軍に上空から火矢で攻撃させた。


だがさすがは老将ドリュウ、有翼人対策なのか、


矢の後部に回転翼の付いた大型の弩を放ってきて、


たくさんの有翼人兵が犠牲になった。


俺も川岸に立って炎蛇やら火球やらを撃ちまくった。


相手は1万を超す大軍だ。


容赦はしない。


勝敗は俺とクロエにかかっている。


「王子、あれを見ろ」


連弩を撃ちまくってるリンギオが指差した方に目をやると、


銀色の壁が近づいてきていた。


よく見ると、車輪がついた大型の盾が何枚も繋がっている。


俺は火球を放った。


巨大な盾は多少揺らぎ、数枚は剥がれたものの、すぐに立て直された。


炎弾も効果なし。


炎蛇を放ったが前列が熱に耐えられなくなったら、


すかさず2列目と交代する。


まったく歯が立たないわけではない。ボロボロと剥がれてはいる。


リカバリーが完璧なのだ。


全部まとめて凍らせれば早いのだろうが、


クロエは今、別の個所を抑えているし、


そもそもギカク化してしまったからそれをするには魔素が足りない。


銀盾部隊は3000程いるだろうか。


もしかしたら俺やカカラル対策なのかもしれない。


間違いなく敵の主力部隊だ。


『ベミー! 軍をこっちに移動してくれ。ミーズリー軍と入れ替えだ』


『えー、オスカーがこっちって言ったのにー』


『うるさい、早くしろ』


銀盾部隊にはベミー軍をぶつけた。


人間よりパワーのある獣人たちは多少てこずりはしたが、


次々と盾兵を撃破している。


狂戦士化したベミーに至っては一人で何列も突破し、暴れ回っていた。


銀盾部隊の半数ほどを崩した時、ドリュウ軍は陣形を変えた。


なんだ?


敵軍はあっという間にベミー軍を包囲する陣形に変わった。


機械のように動く兵にぞっとする。


六魔将ドリュウ。伊達に長く生きてるわけじゃないな。


『ベミー、戻れ! 撤退しろ』


応答がない。


千里眼で見てみる。


狂戦士化したベミーは完全に自我を失っていた。


「あのバカ……全然大丈夫じゃねえじゃねえか」


しかし、すぐにベミーは狂戦士化を解いた。


なんだ、心配させやがって……


そう思ったのもつかの間、よく見てみると敵将が光る剣をベミーに向けている。


シボのブロッキスと同じ類の剣……獣人に影響を与える石か!


まずい、このままでは獣人部隊が全滅してしまう。


「スノウ! ベミー軍を救出する! 行くぞ」


「はっ!」


「待て王子! もう来るぞ! お前だけは行っちゃだめだ」


リンギオに本気で腕を掴まれた。


『オスカー様、私が行きます』


横から100人程の騎馬部隊が川に降りて行った。


ダルハンだ。


たくさんの軍旗をはためかせ、敵軍を切り裂いて進んで行く。


『……頼んだぞ、ダルハン』


俺も火球を撃ち込みダルハンたちを援護した。


ベミーは狂戦士化を解かれ、かなり体力を消耗していた。


敵兵の槍を何とか避けている、非常に危険な状態だ。


『おい、猫娘! 聞いてるか?』


『……だからその名で呼ぶなよ……』


ダルハンとベミーの会話が聞こえてきた。


『お前に負けてからお前の顔が頭から離れねえのよ。


いつか再戦すんだからこんなとこで死んでもらうわけにはいかねえよ』


『なんだよそれ……勝手に決めるな……』


ダルハンがベミー軍の包囲に突入、穴を開けた。


上空からは有翼人兵も火矢で援護する。


電光石火の早業で、ダルハンたちはベミー軍の退路を作り、


騎馬部隊が半数を切っても攻め続け、やがて目的を達した。


ベミー軍のほとんどが敵の包囲網を抜け、自軍に帰ってきた。


ダルハンたちは包囲されながらも、まだ敵将と戦っている。


『おい、ダルハン! 早く帰ってこい!』


『こいつは、ドリュウの息子です!


こいつを倒せば、岸にいるドリュウが来るかもしれない!


やらせて下さい!』


そう言って間もなく、ダルハンはドリュウの息子の首を飛ばした。


『よし、いいぞ。戻れダルハン! 間に合わなくなるぞ』


向こう岸の一角が動いた。


読み通りドリュウ自ら残る軍勢を率いて川に降りてきた。


有翼人の数人がダルハンを救おうと降下したが、


弓に射られ失敗に終わった。


20名を切ったダルハンたちは完全に包囲されてしまった。


「ああ、くそ!」


俺は包囲するドリュウ軍に火球を撃った。


しかし、数が多すぎて埒が明かない。


『オスカー様! 私ら軍人は死ぬのも仕事です!


敵の大将仕留められるなら、これ以上ない最高の死に方だ!


……キトゥルセン軍に栄誉をっ!!』


「ダルハンッ!!!」


迫りくるドリュウと対峙したダルハンは鉾を振り上げた。


部下たちは包囲を狭めた敵兵に次々と槍で刺され絶命してゆく。


「オスカー様、危険です。下がって下さい!」


スノウ達に押され俺は川から離された。


『全軍、後退』


バルバレスが命令を下す。


騎上のダルハンとドリュウがぶつかった瞬間、


上流から凄まじい勢いで濁流が押し寄せてきた。


轟音を響かせながら圧倒的な量の黒い水は、


ドリュウ軍のほとんどを一瞬で飲み込んだ。




鉄砲水によるこちらの被害はなかった。


たった一人を除いては……。


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