第119話 魔獣アカシャラ&ギラク軍
陽が傾き山の影が伸びてきた頃、
前方にギラク軍が見えてきた。
数は4000.こちらとほぼ同じだ。
500mほどの距離を取り、
隊列を組んでいる。
さてどう出るか……。
ラウラス工作員からはギラクという将軍は小細工を嫌い、
力づくで攻める性格だと報告が上がっている。
今回もその通りなら、中央の兵を分厚くすべきか……
そんなことをバルバレスや軍団長たちと話していたら
何やら軍列の中央部が騒がしい。
千里眼で見てみると地面に穴が開き、
周りの兵達が押し合い圧し合い避けている。
『オスカー!!』
ネネルの声が聞こえてきた。
「ちっ!! 魔素だ! 離れろ!」
一際大きな土埃が上がり、姿を現したのは
巨大なヤマアラシのような魔獣だった。
視界に〝魔獣アカシャラ〟と表示された。
アカシャラは牙をむき周りの兵を威嚇する。
とその時、左右と後方の兵が軒並み倒れた。
視界をズームすると体を覆っていた針を飛ばし周りの兵を攻撃している。
針は刺さると小さく爆ぜ、液体をばら撒いた。
それに触れた兵士たちから白い煙と悲鳴が上がる。
強い酸性の液体だ。
『ネネル!』
俺が呼んだのと同時にアカシャラに雷が落ちた。
衝撃で針が飛び散り、周りの兵に被害が広がってしまった。
アカシャラは多少動きが鈍くなったものの死んでいない。
『だめだネネル、やめろ。周りに飛び散る』
兵達は混乱気味に距離を取る。が、アカシャラはまた針を飛ばした。
その間、俺は馬で駆け、現場に急行した。
兵達が避けてくれたので直線上にアカシャラが見える。
距離は100m。俺は火球を放った。
顔面に命中。続いて炎蛇を出す。
炎蛇のコントロールはだいぶうまくなった。
目標のアカシャラを囲うように動かし、
徐々に狭める。完全に炎の渦で包み、そのまましばらく熱した。
炎を止めると黒い団子が姿を現した。
一瞬どうなってるのか分からなかったが、
アカシャラは体を丸め、針を寝かし炎から身を守っていた。
もそもそを動き出したアカシャラは俺に一回吠えてから
地中の穴に戻っていった。
『オスカー様、来ます!』
バルバレスの声に前方を見る。
ギラク軍がすぐそこまで迫っていた。
上空の有翼人兵は既に火矢を放ち、
ダルハン、ミーズリーなどの軍も弓を放っていた。
俺の命令などなくても各自動いてくれるのはありがたいが……
ありゃなんだ?
黒い獣? 千里眼で確認するとでかい角牛の大群がギラク軍の前衛を担っている。
背中に兵は乗っていない。野生か? 先ほどまではいなかったはずだ。
ネネルが雷を落としまくるが1000頭の角牛はさすがに止めれなかった。
「オスカー様! お戻り下さい!」
ソーンに促され元居た場所に戻る。
五臓を揺さぶる地響きに、緊張感が走る。
そしてキトゥルセン軍の前線に黒い角牛の大群がぶつかった。
人が牛の突進を止めれるはずもなく、盾は何の意味も成さず宙を舞い、
兵は踏みつぶされる。
さらに前線が崩れた所にギラク軍が押し寄せ、見事なまでに蹂躙された。
しかし、こちらもそれなりに実戦を経験している。
劣勢になったのはわずかの間で、各自冷静に防御陣を作り、
抵抗に転じる。
俺は高台から全体を見渡した。
『ネネル、100名をミーズリー軍上空、残りは牛の駆除だ』
『分かった』
『ルレ、ダカユキー、アルトゥールは前線の立て直しに向かってくれ。
キャディッシュはボサップ軍の援護だ』
「バルバレス、半分を左翼ダルハンの援軍、もう半分は中央の補強に」
「はっ!」
バルバレスが馬で駆けていき、俺は敵将ギラクを探した。
いた、中央やや右側でボサップと戦っている。
パワー系同士、互角の戦いだ。
『ベミー、50人ほどボサップの所に回せ』
『了解!』
カカラルは混戦状態だと友軍に被害が出るので火は吐けず、
牛をつまみ上げることぐらいしか出来ない。
『オスカー、私、地上に降りるわ!』
こうなってしまったらネネルもカカラルと同じで
能力を出しづらい。
『分かった! だったら部隊長を優先的に倒してくれ!』
ネネルが少数を率いて最前線に降り立つのを確認した後、
俺も護衛兵団を率いて参戦した。
スノウ達の連弩の腕前は大したもので、
向かってくる敵を抜群の連携で最も近い順から仕留めていく。
冷静で確実。混戦の中に分け入っても崩されることなく、
俺は比較的安全を保ったまま進めた。
時折腕のいい敵兵が切り込んでくるが、
大体はソーンとアーシュの餌食になった。
初めの方こそ崩されはしたが、
こちらには魔戦力に白毛竜に有翼人に獣人に連弩部隊がいる。
同じ数の兵力程度では負けはしない。
空が茜色に染まった頃、劣勢を感じたのか
ギラク軍は撤退の笛を吹き、退いていった。
戦場には大勢の死体たちが眠っていた。
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