第102話 ラグウンド王国攻略編 宣戦布告
円形の王の間には赤い絨毯が敷いてあり、
文様が装飾された土壁には夜行花のランプが設置されている。
その奥にジョハ王が座っていた。
座っているというか、しゃがんでいるのか。
根人の体の構造的に座っていることになるのだろう。
王の背中からは木が生えていた。
脊髄が肥大化してゴ〇ラの背びれな感じだ。
老人だからか目が開いていない。
「キトゥルセンの王子よ」
しっかり俺の方を向いた。見えているようだ。
「血気盛んなのはいいことだ。
特に若い頃はそうでなきゃいかん。
しかしザサウスニアには敵わない。
剣を収め軍を引かせろ。
指導者ならよく考えてから行動するんだ」
もはや自らがザサウスニアの手先だと隠そうともしない。
「コマザ村を襲ったのはお前だな?」
「……私の国は2国に挟まれている。
吹けば飛ぶような小さな国だ。
強い者になびかなければ生きてはいけない」
「答えになっていない。コマザ村を襲ったのはお前だな?」
「……ああ、そうだ。しかしそうしなければ私の国は……」
俺は王のそばに火球を撃ち込んだ。
側近が慌てふためいて散り散りに逃げた。
「おい、被害者ぶるな。
お前がザサウスニアの誘惑に乗ったんだろ?
そう決断したんだろ?
指導者なら自分の行動に責任を持て」
「……中々生意気なことを言う。とても子供とは思えん」
王は不気味に笑う。
おかしい。どうしてこんなに落ち着いていられる?
軍は壊滅、敵勢に包囲されているのに。
「……こうなるのは分かっていた。
だからそのための準備もしている。
悪く思うな、キトゥルセンの王子」
床に黒い影が広がった。
同時に中から大勢の甲冑が、
まるで水の中から上がってくるように姿を現した。
赤い甲冑……ザサウスニア兵か!
全員が弓を構えていた。
「盾を構えろ!」
マーハントの怒号むなしく、構える前に矢は放たれ、
前列の兵士が次々と射抜かれた。
「オスカー伏せて!」
咄嗟にクロエが氷の壁を出し、
俺たちは何とか傷を負わずに済んだ。
「マーハントッ!!」
腹と肩に矢を受け、マーハントは膝から崩れ落ちた。
「応戦しろ!!」
リンギオが怒鳴り、素早く弓を射る。
気付けば俺は盾を構えた兵士たちに囲まれていた。
気持ちは嬉しいがこれではフラレウムが使えない。
狭い空間で矢が飛び交い、混戦状態の中、
横にいたクロエが突然紫色の電気に包まれ宙に浮いた。
「ッッッ!!……ぐ……あああああッ!!」
バチバチと爆ぜる電撃に目が眩む。
「クロエッ!!」
よく見ると手足と首に黒い紐のようなものがあった。
それを辿っていくと……いつの間にそこにいたのか、
黒衣を着た若い女が闇の上に立っていた。
その女はクロエを引き寄せ自らの盾にした。
「攻撃するな!! 矢を下ろせ!」
至近距離での撃ち合いは止んだ。
こちらの被害は甚大だが、向こうも相当やられている。
ダカユキー達の連弩が大きな成果を上げたのだろう。
黒衣の女の後ろから敵の将校が姿を現した。
龍の鱗を模したような派手な甲冑に身を包み、
口元にはいやな笑みを浮かべた、攻撃的な顔つきの男だ。
「お前がキトゥルセンの王子か。
初めて顔を合わすが……なるほど、生意気そうなガキだ」
「……お前は?」
「ザサウスニア帝国〝六魔将〟が一人、ラドーだ。
わが軍がお前たち半島を相手してやる。
魔剣も魔人も魔獣も思う存分使ってかかってくるがいい。
ああ……しかし、こいつは手土産として貰っていく。
手柄が欲しいんでね。
……面白いだろ? これは古代文明の遺物だ。
魔素を抑え込む機械だそうだ」
今まで見えなかったがクロエの頭上に小さな円状の装置が浮かんでいた。
「おい、死にたくなければクロエを放せ!」
フラレウムの刀身に火を灯す。
「おいおい、バカかお前は? その前にこいつを殺すぞ」
ラドーはクロエの腹を殴った。
「うぐっ……」
クロエは気を失った。
「てめえ!!!」
「……気づいてると思うがこいつも魔人だ。
お前らが束になっても勝てないぞ」
黒衣の女と目が合った。
「……悪いけど仕事なんで」
感情のない声にぞっとした。
視界にディスプレイが現れる。
〝夜喰いのザヤネ〟
検知結果
???
???
???
魔素数 1773
情報
【千夜の騎士団】所属
俺の総魔力量は659だ。相当強い。
ユウリナのデータベースに載るほどには有名ってことか。
それより……【千夜の騎士団】?
傭兵だと聞いたがザサウスニアに雇われてるのか?
「まあそう殺気立つな。今日殺すつもりはない。
ただのあいさつ……宣戦布告しに来ただけだ。
お前には期待している。せいぜい楽しませてくれよ」
ラドーはたっぷりと笑ってから足元の闇の中に入っていった。
続いてザヤネがクロエと共に沈み始めた。
「クロエっ!! おい、待て!」
「ウチの! 王が! 待てと言っているだろう!!」
キャディッシュが突風を起こし突進するが、
ラドーは笑いながら躱し、闇に消えた。
敵兵とラグウンドのジョハ王も闇の中に入る。
「キトゥルセンの王子。よく分かっただろう。
大きなものには逆らわず身を委ねるのも生存戦略の一つだ」
闇が小さくなっていき、ジョハ王の声だけが残響する。
やがてその場に残ったのは傷つきボロボロになったキトゥルセン軍だけとなった。
「……くそっ!! くそおおおおおおっ!!」
俺の絶叫だけが響く。
絶望と怒りで頭がイカレそうだ。
リンギオが俺の肩を抱いた。
「王子、一旦戻ろう。クロエは魔人だ、殺されはしない。
必ず奪還できる。
しっかりとした作戦を練って、俺たちの力を知らしめよう」
その後、負傷者の手当てをしてから全軍撤退。
失意の中、ノーストリリアに帰還した。
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