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1000文字短編「七転び八起き」

作者: はむ

『また貴方ですか……』


 僕の顔を見るなり女神様は溜め息を吐いた。


「はあ、またよろしくお願いします」


『貴方に学習能力というモノを期待する私が悪いんですかねぇ……とほほ』


 ―――二十歳より前に不慮の事情で死亡すると記憶を残したまま転生できる。

 ―――ただし、元の世界に戻るコトは許されない。

 ―――そして、その転生条件は「何度でも有効」である。


『これで7回目ですが、今まで全ての死因が"不慮によるもの"、つまり貴方に責任はありません』


「はい」


『でもですね! 冒険者になってダンジョンでスライムに丸呑みされたとか、そんなのどう考えてもダンジョンに行かなければ良いだけじゃないですか! 農民として平和に暮らす人生だってあったはずです!』


 確かに。


『前回だって、せっかく家猫に生まれたのに、ビール飲んで酔っ払ってかめに落ちて溺死ですよ! しかもよりにもよって辞世の句が南無阿弥陀仏……って、アンタを転生させたのは神だから! 仏様は何もしてないから!!』


 ごもっとも。


『その前に至っては、殺人事件の起こったペンションで「殺人鬼と一緒になんか居られるか! 俺は帰るぞ!」とか言って一人で部屋から出て行ったんですよっ! 何で死亡フラグ立てちゃうんですかバカああああーーーっ!!』


 最後のツッコミで絶叫した女神様はそのまま机に突っ伏して泣き出してしまった。


『ぜぇぜぇ……』


「あの……?」


『決めました!!』


「?」


 女神様はどこからともなくケータイを取り出して電話をかけ始めた。


『あー、わたしわたし。いや、オレオレ詐欺じゃないから! ちょっと数十年ほど下界行ってくるわ。だから留守番ヨロシクねっ』


 ブツッ!

 女神様は一方的に通話を終了させると、そのまま電源ボタンを長押ししてシャットダウンしてしまった。


「切れる直前に受話器の向こうから『ふざけんな!』って聞こえたような……」


『気のせいです! ……では、ゲートオープン!』


 目の前に見慣れた虹色の輪っかが広がった。


『さあ、ちゃっちゃ行きますよ! 今度の世界はリトルスターライト、妖精世界ですから孤島の殺人鬼も居ませんし、もしも泥酔してかめに落ちても飛んで脱出できます!』


 そして女神様は僕の手を握り、そのままゲートに飛び込んだ!


『女神の威信を賭けて、今度こそ貴方の人生を全うさせてみせますよっ!!』



 世界が虹色に染まる中、ちょっと怒り顔の女神様の顔を見て笑った僕は。




 ――― 今度こそ幸せになれる気がした。

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