1日目その3
5回。
俺はもう同じ日を5回も繰り返している。
3人と会った時に話す内容を変えてみたり、アイスクリームを買う店を変えてみたりしたが、
結局最後、あの明晰夢を見て、朝起きると実家のベッドの上で寝ている。
なぜだ、なぜなんだ。
「虹色アイス、美味しくなかった?」
俺を心配するクミが顔を覗き込んでくる。
「ん。ああ、美味しいよ。」
「これ、昔話に出てくる勇者パーティのナモミ様が、
アイスクリーム好きだったから生まれたらしいよ。」
「そうなんだ。」
何回も聞いた。その話は何回も聞いたんだよ、クミ。
・・・!
この何度も聞いたクミの話で俺はあることを思い出す。
昔、母さんに読んでもらった昔話の絵本。
そうだ!あの景色、絵本で勇者一行がラムチソに寄った時の話だ!
確かそこで、勇者ナモミはお金が足りなくて、魔法のローブが買えずに、
代わりに女神のブローチを買うんだ!
「クミ、ありがとう!何とかなるかも知れない!」
「?ど、どういたしまして?なの?」
・・・
その夜、俺はそろそろ見飽きた真っ白な街の露店商として、6回目のロールプレイする。
毎度のごとく、白黒の長い髪の少女が現れる。
「おっちゃん。この魔法のローブってやつ400Gになんない?」
「そりゃ無理だぜ姉ちゃん。そのローブは定価2500Gだぞ。店つぶれちまうわ。」
「ですよねー。んじゃ、代わりに最大MP上げるって書いてる、この女神のブローチってやつもらうわ。」
「あいよ。定価400Gだけど姉ちゃんかわいいから300Gにまけといたるわ。」
「マジで?おっちゃんナイス。そんなおっちゃんにはあたしの荷物持ちとして後ろをついて歩く権利をやろう。」
「いや、それはいいわ・・・・」
ほくほくした顔で露店から離れていく白黒の少女。
頼む、どうか。俺は祈るような気持ちで、ひらひらとはためく赤い洗濯物を見つめていた。
・・・
「おはよ~、二人とも眠れた~?」
眠そうな目をこすりながら、クミがユキコと一緒に部屋から出てくる。
「おうよ、おはよっ!腹減ったな!朝食バイキング行こうぜ!」
無駄に元気なリク。普段なら鬱陶しいと感じるが、今は本当にその元気さがありがたい。
本当に。
「ダイスケ・・・君?」
俺は泣いてしまった。22にもなって情けない。