イツカの夜、私情、
おはようございます、こんにちは、今晩は。
たぶん、多くの方はお昼頃に読んでくれていると信じて、こんにちは誄歌です。
本シリーズとしては約半年ぶりの投稿……
まだまだ、亀投稿で申し訳ない。
お待たせしました。
それでは、デジリアルワールドzero どうぞ( ゜д゜)ノ
タバスコ食べすぎてお腹痛い
混濁する意識の中、雪吹は必死に。
なおかつ無意識的に動いた。
「……ッ」
『イージス・アクタ』。
彼が使える防御の技を使いながら。
「状況は!?」
彼の目の前では幼馴染みである星菜が、武器を持たずに怪物に対して殴りかかっており、そんな光景を目の当たりにしたら、誰だって助けようとするものだ。
身体を奮い起たせながら、ファングルと星菜の間に飛び込む。
防御の技。イージス・アクタを右こぶしだけに小展開させた雪吹は、それでファングルの顔を殴った。
「雪吹!?あんた、起きたの!?」
「武器は!?」
星菜は驚きを隠さず、口元に手を当てている。
それに対してのリアクションなどしていられない。
なによりこの状況がわからない。
なぜ、星菜は剣を持っていないのか。
尾立は、奮闘しているようだがもう限界を向かえている様子。
金城は、暴走ギリギリなのか魔力を使わない戦い方をしている。
こんな状況の中、自分は寝ていたのかと。
いや、寝ていたのは自分だけじゃない。
先ほど救出した八乙女嵐は、今もなお意識を失っている。
「な、なんか急に消えた!引っ張られる感じで、だから!」
星菜の説明を聞きながら、目の前の怪物にトドメを射すために、ドライブを介して武器を出す。
しかし、もうわざわざドライブを探す必要はない。
ドライブを手に持っていなくても、武器を出す方法を知ったのだ。
雪吹は、ただ、寝ていたわけではなかった。
魔力も尽き、腕を失い、血を失って死にかけていた自分をある意味救ったのはそこで寝ている嵐だ。
雪吹は彼女の夢の中に落ちた。
正確には、引き込まれた。という表現が正しいだろうか。
そして嵐と初めて会話をした。
夢の中での嵐は、喜怒哀楽の激しい年相応の可愛らしい女の子だった。笑うと笑顔が素敵で、泣いても、怒っても、映える顔だった。
だが、同時に自身の悲しい過去をうちに秘めていた。
素手で触ったものは、全て朽ちる。
美しく咲く花は枯れ、懸命に生きる動物は命を落とす。
彼女はそこにいるだけで全てを破壊した。
全てを、色褪せさせた。
それが彼女のコード、『ルーイン』の力だと。
そしてこの夢は毎日見る悪夢であることを、嵐は語った。
毎夜繰り返される、見たくない光景。
目の前で人が死ぬ。それを助けようと手を差し出せば、自分が相手を殺してしまう。
小動物が大型の肉食動物に襲われそうなシーン。助けるために大型を殺せば、小動物に懐かれ、その小動物を自分が殺してしまう。
両親を、友達を、恋人をいつの日か自分の手で殺してしまうところ。
そんな、悪夢を彼女はずっと見続けてきたのだと言った。
なら、見なければいい。と、俺は言った。だが、
『こんな夢でも、まだ両親に会えるんだもの。もう、二度と起きたくない』
そう嵐は答えた。
だから、俺は。
彼女を夢から救うと決めた。
初めは世界のルールに飲まれ、目の前に現れた敵に良いようにやられていたが。お陰でそれを撃破するころには現実の身体の腕は繋がり、魔力もある程度は回復していた。
夢の世界で身体は傷一つないのに、腕は動かない。魔力はジリ貧だった……のは、自分が気を失う前の『記憶』が反映された結果だろうと、今なら思える。
「とにかく、このままじゃどのみち全員死ぬ……!みんな、集まってくれ!!」
正面から射ぬき、霧散するファングルを無視して金城、尾立が戦う怪物を順に射つ。
「お、?雪吹か!わかった!」
「っ、あぁ!」
と、一瞬戸惑いながらも二人は怪物から離れ近くまでやってくる。
誰も反論をしない姿を見て、ずいぶんと信頼されているもんだな。と、雪吹は思う。
自分ならこんなにも人を信用するだろうかと考える。以前の自分なら確実に、他人を守る余裕はなかった。守っても幼馴染みの星菜のみ。それ以外は知らない。そういう人生を歩んでいた。
だが、今は少しだけ状況が変わった。
世界を救わなくちゃいけなくなった。
それには仲間が必要で、その仲間の命を救って、逆に命を救われた。
その結果、この短い期間でもある程度の信頼関係が出来上がった。
それは、決して悪い気分ではない。
「『イージス・アクタ』!!」
すぐに全員を囲むように透明の殻を展開させた。
このときばかりは、自分に与えられた能力に感謝をした。
人を守ることに特化した技。攻撃力のない。自分だけの技。
だが、それではファングルから逃げられるわけではない。
「おい、どうすんだこれから!」
時間稼ぎ程度にしかならないのは、自分がよく知っていた。
現に大群に押し寄せられた殻は悲鳴をあげつつある。
「ぐっ、もっと……。魔力が残っていれば……!」
本当に、うんざりするほど世界は残酷なものだ。
世界を救えるのは君たちだけだと言われ、覚悟を決めてみれば全然力が足りないのだ。
現に弱い敵が群がってきただけでこの有り様。
いや、もっと言えば力があっても全員。
数日前まではただの一般人だったのだ。
急に力を与えられたって、うまく扱える通りはない。
と、考えるなら今の現状は妥当か。
このまま怪物に押し潰されて死ぬのが、関の山なのだろうか。
「いや、そうじゃない……」
ビシッと大きな音が鳴った。
「……!尾立さん!これが割れたら、今できる追撃を、お願いします!!出来ればで、いいから!」
小さな無数のヒビが続けてはいる。
しかし、それを見て前に割れた破片が怪物らに刺さっていたことを思い出す。破片の大きさによってある程度はダメージが入るだろう。
倒すまではいかない。だが確実にファングルはこちらを殺しにかかってくる。
だからこそ、尾立にトドメをさすよう頼む。
尾立は少し表情を曇らせたが、すぐに鋭い目付きでファングルを睨む。
「……っ、砕けろ!」
雪吹たちを捕食するために、襲ってこようとするファングルに対し、仲間を守ろうとして防御を展開し、押し返そうとする力。
その力が拮抗していたからこそ、起こる反発力。
パリンっと殻が割れ、破片が宙を舞う。
雪吹たちを食べるために素早く動くファングルに刺さる。
「くそ、やっぱりこれだけじゃ……っ」
トドメがさせない。
破片が目に刺さり、仲間を爪で引っ掻いているやつもいる。それで仲間割れのようなものが起こってくれればいいのだが、思うようにはいかない。
だが、その隙をついて尾立が槍を突き刺す。
無駄な動きをせずに、ただ核があるその一点のみを狙い定めて俊敏に動き続ける。
「星菜。お前にも頼みたい」
一本だけ矢を造る。ただし、弓で放つためのものではない。
射抜かずに、矢そのものを力強くで刺すための矢尻が大きめの矢。
「でも、そしたらあんたが……」
星菜は雪吹を心配しているかのように、困った表情で彼を見つめた。しかし、星菜が嫌な顔をするのは雪吹から離れる不安だけではない。
彼女は尾立が嫌いなのだ。こんな状況でも、共闘とも捉えられることはしたくない。だが今いかなければ全員死ぬかもしれない。でも、尾立との連携はしたくない。その心理が働いているのだろう。
「なら、俺がやる。お前はそこで突っ立ってろ」
「雪吹……でも、わたしは」
冷たく、星菜を突き離す。
しかし雪吹は限界だった。
立ち上がって、一歩目を動かすことなく片膝をつく。
「はぁ……はぁ……んっ…はっ……くそが、んっんん、うっごけぇえええ」
それでも雪吹は立ち上がろうとする。
彼は世界を救うために、そしてもう誰かの悲しい顔をみないために。
なにより、仲間が頑張っているときに自分だけなにもしないのは性に合わないのだ。
「う、ぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!」
葛藤の中で動きが鈍い星菜を狙った、一匹の胴を矢尻で叩き裂く。
「だめか!」
矢でやることではないから。そもそも矢は射抜くためのものだから、という理由ではない。
ましてや、魔力がないから力がでないという問題でもない。
コードが、斬ることに適していないのだ。
雪吹のコードは射ぬことに適したアーチャー。
弓を使い矢を放つことを得意とする。
「Gaaaaaaaaaaaaaa!!!」
胴を裂かれたファングルが、右脚を横に振るう。
星菜ごと雪吹を掻き殺すつもりなのだろう。
「させるか!」
すぐに体勢を低くして、左足で勢いよく星菜の足を蹴る。
「あっ」
と、間抜けな声を出して彼女は倒れた。
重力にしたがって落ちる身体と、その場に少しだけ残る制服の端。
その服を爪が浚う。
だが、星菜は生き残った。おまけに自分も生き残れた。
「ふんっ!」
すぐに手を伸ばして、ファングルに矢を突き立てる。が、やはり力が足りなくて、深く刺さらない。
今の雪吹では、核を破壊するだけの力がない。
それを可能にするだけの魔力が、彼の中にはない。
なら、ただ矢を突き刺してやられるのを待つか。
ただ訪れる死を待つのか。
彼がもし以前の自分のまま戦いに身を投じていれば、死は確定事項だっただろう。
このまま振り下ろされる脚を防ぐことができずに、一撃で殺されていただろう。だが、今は違う。仲間が居る。頼れる味方が、近くに居る。
「金城!」
男の名前を呼ぶ。
背後から勢いの良い右ストレートが、矢筈をめがけて叩き込まれた。
手の中で矢が勢いよく進み、核を破壊する。
おかげで、掌は血が滲む。痛い。
「おいおい、俺も限界なんだぜ?これ以上力使うと、暴走しちまうぞ」
「……適材適所だろ、今のは。俺の力だけじゃ、核は砕ききれない。お前もそう思ってたから構えてたんだろ?」
そういうと金城は少し照れくさそうに頭を掻いて、
「まぁ、俺も少し余裕出てきたからいってくる」
と、別の方角のファングルを迎え撃ちに出る。
「あっ、おい!たく、近くにきたらどうすんだって、ん?」
「…………」
金城を呼び止めようとしたところで、何やら少しだけ難しい顔をした星菜が、腕を掴んでくる。
「なんだよ、急に腕掴んで」
「……して」
「あ?」
「貸して!」
手から無理矢理、得物を奪われる。
星菜は二度、矢を握る感覚を確かめるようにして手の中で舞わす。
振り上げてみたり、下げたり。右へ左へ腕を動かす。
「うん、悪くはない……かも」
そう言って彼女は、自身へ飛びかかってきたファングルの胴を、一矢で二つに裂いた。
この場において私情を気にしていてはだめだ。
それは星菜もわかっている。だが、どうしても消しきれない。
まだまだ子供なのだ。
どんなに剣の道で心身共に練磨して、気力を育もうとも。礼節を学ぼうとも、修養を養おうとも、表向きは大人びて見せることができても。感性までは研くことが出来ない。
同時に、あの人も感じていることだと思う。
「茉優だって、私が嫌でしょう?」
腕を上に振るいながら呟く。
だからこそ、星菜は彼女を助けにでない。
今出ればきっと彼女の動きが鈍ってしまう。
自分とは違って、彼女の方があの事を気にしているのだから。
二人が動けなくなってはいけない。
「私自身は、本当はもう別に気にしてない。………………はず。正直わからない」
「…………」
私の愚痴に、幼馴染みは口を閉じたまま。
ただ静かに呼吸をして話を聞いている。
「変な話、腕の怪我はコードと、魔力が揃ったときに治った。それは私だってわかる。もう違和感がないもん」
「………………」
やはり彼は話さない。
雪吹はいつもそうだった。彼は星菜が大事な話をしている時は、決まって一言も喋らずに話を聞く。
「でも、それとは別にあの人の顔を見たとき、別の感情がわいちゃって。私より強いあの人に勝つために頑張った、私の結果なのに。あの人が責任を感じて剣士としての自身の道を折るんだもん」
「……そう、だったのか。てっきり俺は単純に嫌いなんだと思ってたよ」
そして決まって三言目の後に初めて口を開く。
「んーん。あの人の強さなら三段は余裕で取れただろうにさ。私に怪我させたからって受けなかったみたい。部長の座はその部の方針でやめれなかったみたいだけど」
星菜は悲しげな、それでいて怒りを抑えている表情で続ける。
「それがすごく腹立たしく感じちゃった。いやいやなのが、余計にイライラする。……私はむしろやめなかったことを良いと思うのに、あの人はやめたがってる。部活でもあの人、今は竹刀を握ってないみたいだしさ」
左肘を擦る。
彼女は以前、左肘を痛めたことがあった。
テニス肘……種別的には剣道肘とも言うべきだろうか。
高校に入る前の、ある練習試合の最中になった。
その相手が、尾立で。
それを知ってから星菜は彼女に負けないために練習に励んだ。
地域で一番強いと言われていた人と地域の交流戦で戦えることになったのだ。誰だって練習に力をいれる。
来日も来日も励んで、勉強よりも大真面目に打ち込んで、交流戦前の審査会で一段を取るくらいには強くなった。
でも、それが禍して肘を痛めてしまった。
でも、茉優とは戦いたい。
だから肘のことを隠して挑んだ。
途中までは良いところまで持ち込んでいたと、自負できる。
お互いに技を打ち込み、それを往なしては打ち込む。
一進一退の攻防をしていた、と思う。
あまり言うと自画自賛になるから、詳しいことは省くが結果としては、小手を無理矢理避けたところで、運悪く肘に剣先が強打され、悪化したというだけ。こういう競技をしていれば、良くある話。
「本来ならこの力は彼女が持つべきだと思う。そうすれば、適正が外れなかったんじゃないかな」
そう、星菜は後ろに迫るファングルを矢尻で切り裂きながら、半目で語る。
今この現状に、後悔しているような表情で。
悔しい気持ちを、圧し殺して、彼女は戦った。
すでに周りには敵がいなかった。
二人がこちらに近づけないよう、全力を尽くして倒してくれたお陰だろうか。
「はぁぁぁぁぁぁあ!!!!……はぁっ、はぁっ……っ!!」
茉優の荒い息遣いが聞こえて視線を動かす。
どうやら飛びかかってきた複数の怪物を薙ぎ飛ばし、刺し殺した後のようで、槍には散る寸前の、周りにはファングルが散った後の青い光が残っていた。
本当に彼女には適正がないのか。と、星菜は疑問に思う。
剣道と槍は動きが全くの別物だ。
尾立茉優という人物の全てを知っているわけではないが、少なくとも彼女が長年続けている動きとは違う。
しかし、彼女は足りない適正力を技量でカバーしきっているように見えた。
「これで、終わりのはず……」
そう言って茉優は槍を支えにして息を整えるために警戒を解く。
星菜は、なんとなく茉優の魔力がどうなっているのか知りたくなり、自分に出来る範囲の索敵を試みる。
雪吹のそれとは違い、星菜が出来るのは相手が自分より強いか、弱いかを見極める程度の感知だった。全力でやっても範囲は凡そ一〇メートルもない、短いもの。近接戦闘をする上で、彼のような広範囲の索敵能力は逆に邪魔になると私を造ったやつが判断でもしたのだろうか。
と、そこへ、新たなファングルが何処からか現れる。
偶然、範囲を広げていた星菜の感知ゾーンに一匹だけ、反応する。
たぶん、あれが最後の一匹なのだろう。
だが、気を緩めていた茉優は反応出来ない。
ファングルが襲いかかっているのに、彼女はその方を見ない。
「!?茉……っ、くそ、あんた!!!」
「……?」
茉優は嫌そうな顔でこちらを見る。やはり、ファングルの存在には気が付いていないように見えた。
雪吹が隣で動いた。
ドライブを握りしめ、弓を引く動作をしている。
だが、遅かった。
彼の武器を待っていては、彼女は助からない。
かといって、後ろにいるはずの金城の跳躍でも間に合わない。
なら、誰が彼女を助けるべきか。
考える。
「私は…………」
口にする。
「…………っ」
唇を噛む。
「「間に合え……!!」」
弓を完成させた雪吹が矢を生成し始めた。
しかし、その矢を作るよりも早く。
金城の助けようとする行動よりも早く。
「っ!!」
ようやくファングルの存在に気づいた茉優が動く。
だが、やはり遅い。
だから私は動く。
矢を裏手に持ち替えて、構える。
腕に魔力を込め、それを矢にも伝える。
魔力が矢を覆うと同時に、投げた。
「ガゥゥゥ……?」
牙を剥かせて、茉優を捕食しようとしていたファングルが迫る矢に気づく。それによってほんの一瞬、刹那の時間だけファングルの動きが鈍る。鈍るが、すぐに茉優を襲うことを優先して、矢を回避しようとしない。当たり前だ、私に投擲能力はない。
雪吹のように、矢で核を射抜くような腕前はない。
だからすぐにばれてしまった。この攻撃では、自分を倒せないと。傷がついても、目の前の女を食べれば直ると、判断させてしまったのだと。
しかし、そんな状況でも星菜は腕を横へ振るう。
すると矢が腕を振った方向へ、ほんの少し。僅かに傾く。
星菜の右腕を見ると、拳が強く握られていた。
力みすぎて、震えるほどに、堅く握られていた。
彼女は賭けをしたのだ。魔力で覆っていれば、少しくらい離れていても動かせるのではないかと。
「でも、これじゃ核は砕けない……!」
素早いファングルの動きに、加減が分からなかった星菜の矢は見事胴に刺さるが核が砕けない。
しかし、先ほどの僅かに出来た時間で茉優は動いていた。
「ふんっ!!」
槍を薙ぎ振るい、ファングルを自分から遠ざける。
その瞬間を見計らっていたように、一矢が宙を駆ける。
バシュン、と大きな音が鳴った。
やはり、星菜には出来ないことだった。
例え、弓を使っていたとしても彼女には正確に、たった一度のチャンスで小さな核だけを射抜くことはできない。
雪吹を見る。彼はどんなに限界だと言っても、仲間を助けるためには限界以上に動いてしまう。自分の身を滅ぼす行為だけはやめてよね、と星菜は思うが、彼はきっと無理を続ける。現に今もしているはずだ。
「雪吹、やっぱりあんたはすごいよ。あんな一瞬の間に射殺せるんだから」
「……なに言ってんだ。お前が矢を投げなかったら、今頃尾立さんは死んでたと思うぞ。色々と気持ちがあれなのかもしんないが、それでも助けようとしたお前が、俺は好きだよ」
「なっ!?なにを、唐突に……!?」
急に頬が暑くなった。
「……ふぅ。なんとか、みんな生き残ったみたいだな」
金城が近づいてくる。
「……その、なんというか」
茉優もきた。
二人とも疲労を隠す余裕なんてないようで、足取りが悪い。
当たり前と言えばそうだ。
二人とも休んでいない。
この場に居る、誰一人休憩という休憩をとっていない。
気を失っていた雪吹が唯一休んでいたようなものだが、腕が吹っ飛んでいたことを考慮すれば、むしろ休んでもらわないと困る。
「なんでそんな頬っぺた赤くしてんだ?風邪か?」
「んなぁじゃねぇーし!一々突っ込むな!」
「おぉ……?なんでそんな、キレる……」
どうどうどうっと、動物を宥めるかのように金城が両手を動かす。
「乙女には色々あるんですー?男には分からないんでしょうけどー」
それに対して、嫌みっぽく答えると困ったような表情を浮かべて、
「…………んで、これからどうするよ。雪吹。このままここに居続けるわけにもいかねぇと思うわけだけど」
と、話題を変える。
「そうだな……まずは、ここはどこだ?大通り……ってところではないようだが…俺は初めて来たところでわかんないぞ」
「なんか、西澤?って人と桜山ってやつが居る駅に向かってるらしいぞ。ここはその途中」
金城からの説明を受けて、雪吹は考え込む。
もしくは、コードの力を借りて空間を把握でもしているのだろうか。
目を閉じて、ゆっくりとした呼吸を始める。
「一つ提案だ。一度移動しながらでも、知っていることを詳しく説明してくれないか?その方が私としても助かるのだが……どうだろうか」
と、茉優が言ったところで、
「それもいいんですけど、二人が。駅に居ない……?」
と、雪吹が額に汗を垂らしながら話す。
そんなはずはなかった。
バラバラにならないために、もしもの集合場所としてあの大きな駅を指定したのは先生自身。
そう簡単に移動したりはしないはずだ。
「まさか、でもだとしたらどこに?」
詰め寄る形で彼の目を見るが、少し焦点が合わない。
虚ろな目で、彼方を見つめている。
疲労しきった顔。
しかし、それでも探すのを諦めていない顔。
頬を二度叩く。
だからと言ってこれ以上、無理をさせるのも得策ではなかった。
「雪吹、あんたはとりあえず力の温存をしなさい。私たちで何とか見つけるわ……といっても、一度駅にはいってみよう。なにか伝言が残ってるかも」
「……すまねぇ。さすがに、本当に。立ってる、の……も、辛い…………」
星菜も詳しいことは知らない。
だが、この内の誰か一人でもかけてしまえば、世界が救えなくなるということは理解しているつもりだ。
「とりあえず、俺の背中に乗っとけ。……変わりにこの子を誰か背負って上げてくんね?」
いつの間にか少女を背負っていた金城が、雪吹の前でしゃがむ。
「…………」
「……………………」
茉優とお互いに目を合わせてどちらが背負うか、という無言の会話が生まれる。
身長を考慮すれば彼女の方が部がありそうだが、力で言えば私の方に分配が上がり、安定性もある。
だから、星菜は仕方なく、立候補しようとして、
「……はぁ」
目を閉じてため息を吐いた茉優を睨んでしまう。
「……ちっ」
茉優は今、一瞬私の身長を見た。
そして、なにを思ったのか茉優は少女を金城から受け取ろうとしている。
「いやいや、待って?私の方が断然、動けるから。それに武器もないし、私が背負った方が無難じゃない?」
慌てて星菜は少女の腕を掴む。
「……。私も一度はそう考えたけど、私の方が戦闘面での力は限界だし、護衛には向いてないなと思って」
と、茉優はこれが最善だろう?
とでも言いたげな目で、星菜を見つめる。
「それはそうかもしれないけど、もし目の前に見たことのないデュエンデとか出たら、私対処できないよ?」
「…………俺がある程度、索敵してそれを伝えれば、戦闘を回避することは可能だと思うが……」
「だったら、尚更……あぁ、もう。わかった。私が先陣切る。雪吹!あんたは休め!私なりの索敵で移動を開始する」
言いたいことは山ほどあったが、飲み込む。
「……それにしても、その子はいつ目が覚めるんだろうね」
と、星菜は疑問を口に出して頬を突く。
すると少女は「んっ」と、小さな反応を見せて心地良さそうに寝息を立てた。
デジリアルワールドzero
どうでしたか?
今回はこのシリーズ初めてのサブタイが二つのみという形にしました。
これでも、ここまでわりと飛ばし飛ばしで書いてきたつもりなのですが、ここに来て急にテンポを落とすという所業。
サブタイトルに、含まれているように今回は五日の夜から話が始まり、そのまま終わります。
次の話は六日の朝からです。
世界の崩壊まで残り一日。
雪吹くん等には早く合流してもらいたいところですね。
…………と、本編に対してのことは終わりにして、、、。
終わるって書きながら全然終われなかった!!
多くても後二話ぐらいで完結できそうで出来ない雰囲気がある……。
当初の予定では七話完結(一話1日分)の予定だったのですが、ある時二話続けて同じ日のことを書いてしまったため、そこから予定がずれてしまいました。
エンドは決まっているので、そこに関しては安心してもらいたいです(???)。
このシリーズが完結したと同時くらいに別のシリーズが公開される予定なので、そちらも楽しみにしていただけたらなと思います(宣伝)。
そちらは一話完結ですが、長いと二話に分割公開するかもしれません。
では、また次の投稿でm(_ _)m




