七十六幕:作戦実行
「やめ、ろおおおおお‼」
考えるより速く、リルを押しのけて悪龍の前に立つと悪龍に向かって腕を振るう。その腕の動きに合わせて悪龍の首が胴体と離れ、床に転げ落ちた。
「リル。動くなよ」
一言そう告げてから再び悪龍と対峙する。見渡す限り、ざっと三十は下らないだろう。
『この数、常に我が体を操って戦ったところで勝ち目は薄いぞ。……良い策があるんだろう?どうするつもりなんだ』
ついさっきまで、龍神に全て任せるという他力本願な策を考えていた。だが、今その考えを改めた。そして、リルに聞かれないように小さな声で呟く。
「なあ龍神。体の一部にだけ憑依することって、可能か?」
『わからんが、さっき全身憑依できたことを考えると不可能ではないかもしれんが。どうするつもりだ?』
「なら、俺の左腕に憑依してくれ」
無我夢中だったとはいえ、悪龍と向き合って恐れることなく攻撃することができた。だから俺だって戦える。その上龍神が左腕を操ってくれるのなら、一つの体で二つの意識を持って敵と戦うことができる。俺自身の力や戦闘技術は龍神の足元にも及ばないだろう。それでも使う能力は龍神と同じものだし、少なからず龍神も気張ることもなく戦えるだろう。
『憑依には成功だ。……精神世界にいる時はわからんが、体を共有している時はお互いの考えを読めるようだ』
突然左手が勝手に動き、左に迫っていた悪龍を真っ二つに斬り落とす。
『小僧の考えは理解した、左は任せろ。小僧にはそこまで期待してはいないが、我一人で戦うよりは勝てる可能性が上がるだろう。……行くぞ。勝利を信じろ!』




