六十八幕:憎悪ノ声
動かなくなったエリナの亡骸を静かに横たわらせ、立ち上がる。
「……う。………しょう、畜生、畜生‼」
頭の中で憎悪の念が渦巻いている。
全テ壊セ。邪魔スル者ハ、全テ---。
耳の奥で、聞いたことのない声がこびりついて離れない。
「俺は、リルを助けなくちゃいけない。全てはそれからだ---っ⁉」
突然、目に激痛が走った。痛い、痛い、痛い。目を握り潰されるような、そんな感覚。
痛みが消えた瞬間、意識を失った。
突然、龍也君が目を押さえてもがき苦しみ出した。明らかにただ事ではないだろう。
「龍也君、大丈夫⁉」
慌てて駆け寄るが、治癒ができるわけでもない。僕はただ、苦しむ彼の側にいることしかできなかった。
「ア、ガ……」
龍也君がいきなり唸り、立ち上がった。その彼の顔を見て驚きを隠すことができなかった。
「龍也君。目……目が……」
右目が青く燃え、光っていた。そして右目が白龍特有の蒼眼へと変貌していた。声が聞こえていないのだろうか、呼びかけても反応がない。
龍也君がゆっくりと腕を横にはらう。直後、周囲の瓦礫は遠く彼方へと飛んでいき、瓦礫の下敷きになっていたらしい二人の人間と三匹の龍が姿を現した。
それを確認するなり、彼は転移して姿を消してしまった。




