六十六幕:神ノ神託
「……コホン。お取り込み中悪いんだけどさ、君たち僕の神託を聞きにきたんだよね?そういうのあんまり好きじゃないんだ。よそでやってくれないか?」
独り言にも捉えられるほどの小さな声でため息まじりに毒突く。そうだ、ここに来た本来の目的を忘れるところだった。いけないいけない、アポロンの方に向き直り、正座をする。
「申し訳ありませんでした。では、神託をお聞かせ願えますでしょうか」
「はぁ。なんか都合よく使われてる気がするけど……君たち、ジュペンって大陸は知っているかい?」
「はい。少しの間ですがそこに滞在していたので」
「知っているならいいんだ。その大陸で、何か大きなものが終わり、また新たに何かが一から始まる。……それだけだ」
「それだけ……ですか?」
驚き、間の抜けた声が出る。名指しで大陸を指している以上、ジュペンで何か大きな事が起こるのだろうが、とりあえずは龍神に会って話を聞きたい。
「それだけだよ。龍神のことを聞いてもそこに行け、としかお告げは来ない。とにかく急いでジュペンに向かったほうがいいんじゃないかな?」
今ある手札は、ジュペンで何かが起こるという手がかりしかない。アポロンが急いで行け、と言うのにもどこか引っかかるものがある。
「よし。神様、ジュペン大陸に向かおう」
神様の方に顔を向けると、深く頷いていた。これでひとまず行き先は決まったな。さて、どう行くかだが……
と、そこでアポロンが手を挙げる。
「ジュペンまで僕が送るよ。元、仲間とはいえ久々に会った神族だからね」
そう言ってこちらに手を差し出す。すると、周囲が淡く光り出す。
なんかもう転移するのにも慣れたよなぁ。慣れって怖いや。そんなことを思っていると、転移する直前、
「先は厳しいと思うけど、頑張って」
と言って、かすかに笑うアポロンの姿があった。
転移を終え、視界が戻ると、まず最初に自分の目を疑った。
「ここ、本当にジュペン大陸なのか……?」
周囲一帯には火、火、火。見渡す限り真っ赤な火の海が広がっていた。




