幕間:過去回想陸
「それで、どうやるってんだ?」
城の廊下を全速力で駆けながら、龍神が聞いてくる。
「君の能力を調べさせてもらったんだけど、君の能力で人の赤子になり、僕の能力で先代と同じ子宮の中に送り、世界の記憶を捏造する。理にはかなってると思うよ」
「思うよ、って……かなり心配だぞそれ」
ため息まじりに言う。まあ確かに、この短時間で考えた案だ。多少の穴があっても仕方ないかもしれない。でも、これを試せる期間がいつ、どのくらいあるかわからない。なら善は急げ、一刻も早く試すべきだろう。
「じゃあ、ちょっと待ってて」
目的地に着くなりそう言うと、ドアを開けて中へと入る。
「はーい、ヘルメスさんですよー。伝令のお仕事かな?長期滞在届かな?それともプライベートな用事?確かに君は可愛いけどちょっと若すぎるかなー」
な、なんだこの人……ノリについていけない。
「チビじゃないですよ!ってそうじゃない、長期滞在届を発行したいんですけど」
要件を伝えると、明らかにつまらなそうな顔をする。そして、机の下から羊皮紙とペンを取り出すと、何か書き始める。
「じゃー、滞在期間と行き先教えて」
「えっと、地球に三日ほどですかね」
露骨にテンション下がってるなこの人……どちらにせよ冗談に付き合ってる時間はない。心の中で軽く謝っておく。
「はい、これと一緒に身分証も持ってないと駄目だからねー。そんじゃ、いい旅を」
要件を伝え終わると、出てってくれと言わんばかりにそっぽを向いてしまった。まあ届け出を貰えたし、まあいいか。軽く会釈をして、部屋をあとにする。
「よし、じゃあ次はアテナ様のところに行こう」
「もう、出発するのか?身分証は持ったんだろうな?」
聞かれ、髪に付けている花柄の髪飾りを見せつける。一概に身分証と言っても、カード型に限らず装飾品などでも身分証として使えるのだ。それを見て小さく乗れ、と告げられ、言う通りにすると龍神が走り出した。
いきなりで振り落とされそうになったが、なんとか体制を立て直す。この体では出せない速度で、 凄く爽快感があったが、何より懐かしい感じがした。
「着いたぞ」
束の間の娯楽が終わり、アテナ様のいる部屋の前に着く。
「すみません、アテナ様。転移をお願いしたいのですが」
すると、勝手にドアが開く。龍神と顔を見合わせるが、これを入れ、の意とみなし、中へと入る。直後、どこからともなく声が聞こえてきた。
「いらっしゃい。申し訳ないんだけど私は今戦争に出ていていないの。悪いけど、出直すか、お父さんのところに行って頂戴」
神王様か……理由を聞かれなければいいけど。変に勘付かれても困るけど、ここは博打を打つしかない。
「神王様のところに向かうよ」
そう言って、龍神にまたがる。
龍神は何か言いたそうに口を開くが、すぐ口を閉じると、神王の間に向かって走り出した。




