幕間:過去回想弐
「ここは物置で、その向こうが宝物庫。……と、これで全部ですかね」
あれから小一時間、アポロンに城内を案内してもらっていた。
「こんなに長く時間を取らせてごめんなさい。そして、ありがとうございました!」
「どういたしまして。じゃあ、この後は……あ!ごめんなさい、もうすぐ十二神の議会があるんです。散々振り回しておいて申し訳ありませんが、これで失礼させていただきます。では、これで」
慌てた口調でそう言うと、先きた道を走って行った。
「んー、これからどうしよっかな」
顎に指を当て、考える。だが、妙案が浮かぶことはなかった。
「暇だし地上の様子でも見てよっかな」
地上の様子を見るには意識を地上に持っていかなくてはならない。睡眠状態と同じような状態となる。
寝るなら中庭かな、そう考えて先ほど教えてもらった道を通って中庭へと向かう。
中庭に入るなり、大の字になって寝転ぶ。ここは日当たりもよく、絶好の昼寝スポットらしい。確かに、暖かい。この城の周囲は四季がないので暑すぎることも寒すぎることもなく、常に心地よい暖かさを保っている。
「それじゃ、そろそろ始めようかな」
一つ、深い深呼吸をしてから意識を地上に集中させる。次の瞬間には周囲の景色が変わっていた。
車のクラクション。それぞれ高層ビルに吸い込まれていく人たち。いつ、何が起こるかわからない。だから面白いと思える。その上体は神界に置いてあるので羽目を外しても気付かれることはない。
「じゃ、人間界の散策にれっつごー!」
右腕を高く突き上げると、雑多の中へと繰り出した。




