六十四幕:裏切ノ神
「やあ、父上から話は聞いているよ。予知、だよね。何もないけど、まあベッドとかそこら辺に座って」
そう言うアポロンの部屋は、無駄なものが何一つなかった。それこそ生活する上で最低限必要な物しかなく、趣味関連の類は一切見当たらなかった。とりあえずベッドに座ることにする。
少し経って、アポロンは茶を持ってくると近くにあったテーブルにそれを置き、自らもベッドに腰掛ける。
「改めて、僕はアポロンだ。この神界ではそこそこ偉い方なんだ」
ふふん、と少しドヤ顔をして言う。そうだ、俺も返さなきゃ。慌てて名乗る。
「お、俺は蒲生龍也です!人間、です」
「へえ、君があの……」
名乗ると、一瞬目を見開いてから身を乗り出してじろじろ見てくる。なんか落ち着かないな……
「ああ、ごめん。君はこの神界では結構な有名人だからさ。波乱な人生を歩み、裏切りの神と行動を共にする者!……って具合にね」
「裏切りの……神?」
現実で俺があったことのある神は神様と龍神だけだ。そしてよく一緒にいる方は神様……昔あったって件と何か関係があるのだろうか?
「その様子だと聞いてないようだね。彼女もいないことだし、聞きたいかい?」
「是非!」
迷うことなく、そう答えていた。アポロンはニヤリと笑うと、懐かしむように話しだした。




