五十五幕:作戦成功
神様の作戦は、見事成功した。動作を停止した悪龍の脇をすり抜け、施設の奥へと走っていく。
「凄いよ龍也君!信じてはいたけど、まさか本当に成功させるなんて!」
「その言い方、信じてないように聞こえますよ……」
だが、まさか本当に成功するとは。神をも超える力を持ったやつを停止させたってことは、俺がそれ以上の力を持ってたからってことだよな?じゃあ俺は、神様よりも上の力を持ってるってことか⁉
「舞い上がってるところ悪いけど、空間操作の能力は相手の強さはほとんど関係ないんだ。だから自分には力がある、と過信しちゃ駄目だよ。第一、まともに肉弾戦もできないんだから」
神様はため息を吐くと、俺の伸びきった鼻を根っこからへし折る。そこまで言わなくてもいいじゃないか……
歩を進め、龍神がいた部屋へとたどり着く。だがそこに龍神の姿はなく、荒れた部屋が残っていた。そして、至るところに---血痕。
「なんだ、これ。俺の部屋も同じように荒れていた。これ、なんなんだよ」
「龍也君、これ見て!」
部屋を物色していた神様が、一枚の紙切れを見つけた。それを受け取り、読み上げる。
「お前は俺らを潰そうとヒトガミと共に乗り込んでくるだろう。俺はそれを信じ、ここに手紙を残す。まず、この施設内の惨状についてだが。これは、全て悪龍がやった行為だ。俺は人間を悪龍へと変貌させる研究をしていた。だが、どこからか情報が漏れ、世に悪龍が放たれた。元は、こんな事態を起こすつもりなどなかったのだ。全てはアルスのせいだ。俺があいつを……これ以上は破けて読めないな」
それにしても、どういうことだ?悪龍を製造したのは龍神なんだろ?それなのに他の誰かが悪龍を悪龍として、世界に産み落としたような言い方だ。ああもう、頭の中がこんがらがってくる。
「とりあえずは今倒すべきは悪龍で、アルスが敵だ、ってことだけわかってれば充分だよ」
俺の思考を察してか、神様が今必要な情報だけを、簡潔に取り出す。
その神の裏を見ると、日本大陸が載った地図が記されていた。そして、関東付近に赤でバツ印が刻まれている。
「今はアテもないし、とりあえずはここに向かおっか」
神様のの提案を首肯すると、踵を返して元来た道を進んでいく。




