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白龍転生劇  作者: 蓮羽
一章
51/124

四十七幕:空間把握

「C区画って言われても、範囲がっ、わかんねーよ!」


龍神と別れてから、五分走っているが、それらしき気配は全く見当たらない。


このところずっと飛んでばっかで、全く走ってなかったのが祟ったか。もう息が切れてきた。


アルスのやつ、大まかな位置だけじゃなくてもう少し詳細も教えてもらいたいものだ。来て一日も経ってない俺に区画だけの説明で敵がどこにいるかを把握しろだなんて。


……ん?待てよ、把握ならできるじゃないか。前に盗まれた龍を見つけた時。あの時もどこに誰がいるのか、把握できていた。あの時、俺は空間を把握しようとはしたが、通常とは違い、祈って発動したわけではない。


そう考えると空間把握は能力の一環として、息をするように使えるわけか。それなのに今の今までそれをやっていなかった俺はただの馬鹿、というわけか。


「……なんでこんな大事なこと忘れてたかなあ」

頭を掻きながら、ぼやく。そして歩みを止めると、周囲の空間に意識を向ける。


見えた。


ここから二つ目の十字路を右に曲がったところに一体。そのもう一つ先の十字路の左側にもう二体。合計三体か。大丈夫、前と違って能力の使用上限はないし、そうそう負けはしないだろう。ここで暴れ出す前に、とっととぶっ潰してやる!


勝利を確信し、走り出す。




二つ目の十字路を曲がり、敵を見据える。直後、開いた口が塞がらなかった。


黒い体を持った龍。確かに悪龍だ。だが、こいつには見覚えがある。異様に大きな右腕。そして、その龍の腹部には、一生消えることはないだろう、横一文字に裂かれた傷跡があった。


間違いなく俺が前回戦った相手、そして俺が死にかける原因となった龍。早く逃げなくちゃ。そんな警告が脳内で鳴り響く。でも、こいつらは倒さなくちゃいけない。だったら戦うか?それなら、龍化しないことには始まらない。だが、体はおろか、頭が真っ白になって、思考が正常に働いていない。頭の中には、目の前にいる敵に対する恐怖心しか残っていなかった。


「……だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ‼︎」


だだっ子のように、ただただうめく。目からは涙が溢れ、動悸がひどい。体中が震えて動けない。


悪龍はこちらに気づいたらしく、振り向いて俺の存在を確認すると、重い足を運んで、こちらへと寄ってくる。一歩、一歩と近付くたびに、呼吸が荒くなっていく。


ついに、手を伸ばせば届く距離まで近付いた。もう、終わりだ。恐怖で目を閉じる直前、悪龍がその凶悪な腕を振り上げたのが見えた。

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