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白龍転生劇  作者: 蓮羽
一章
41/124

三十七幕:諸刃ノ剣

昨日の分として、気持ち多めにしてます。

「あれ、神様?なんでここにいるんだ?俺は今から新しい一生を送ろうと……」


聞くなり、あはは、と大声で笑いだす神様。


「はははっ、あー、お腹痛い。本当に勘違いしているみたいだから言っておくけど。まず君、まだ死んでないよ。むしろ体は回復されて、かすり傷一つ残ってないレベル。あとは、今ここにある君の魂がその体に戻るだけでいいんだけど……僕からも君に話があるし、君も僕に話があるみたいだね」


「また心読か。本当便利だよなその能力。そういや、アヴルも心読できたよな」


心からの褒め言葉に、神様は嬉しそうにふふん、と胸を張る。


「人間に出来て、僕にできないことがあるわけないじゃないか。こんなの朝飯前さ」


「え、じゃあ空間操作もできるのか⁉」


「あー、いや、さすがにそれは無理かな……んな都市伝説レベルの業、 そうそうできるもんじゃないよ。他にできないものと言えば、物質干渉くらいだね」


「物質干渉?」


空間操作レベルに名を連ねる以上はなかなかの能力なんだろうが、聞いた感じあまり強そうには感じないな。


「あんまり強くなさそうとか思ってるんでしょ?ある意味、あの能力は最強の能力なんだ。質量を持ったものなら破壊させたり、消失させたり、材質はそのままに物質の形を変えたり。それらをものに触れることなく使うことができる能力なんだ」


「でも、空間操作でその空間を停止したりすればそれで終わりなんじゃないのか?」


「いやいや、気体にも質量はあるんだよ?それこそ一定箇所に特別な空間を作ったのだとしたら、その空間もある種の物質となる。物質ならば、消すこともできるあの能力は対抗できないんだよ。僕も、少しくらいならものを生み出したり、形を変えたりすることはできるけど、所詮その程度だ。そんな岩で武器を生成したりなんてできないさ」


なるほど。そう聞くと確かに最強と言えるな。それにしても、俺の能力が最高クラスって聞いて嬉しかったのに、その上位互換が出てくるとか。とてもやるせない気分になる。


「まあ、落ち込むことはないよ。君の能力だってちゃんと練習して鍛えていけば、誰に干渉されることもない最強の空間を保持することもできるようになるから」


それを聞いて、少しムッとする。


「その練習を一日一回に制限してるのは神様じゃないか。これじゃあ皮肉にしか聞こえないよ」

「あはは、ごめんごめん……そうだなあ。制限かけられてるくせに、一日に何度も能力使うほどの馬鹿だからなあ」


なんだこの神様は。喧嘩売ってるのだろうか。


「そこで、君の能力発動を五回にまで制限しようと思う。その上で、六回目を使ったら確実に死ぬレベルの爆弾を脳内にこしらえておこう」


「確かに上限を増やしてくれたのは感謝する。でも、そこまでして上限をかける理由を教えてくれよ!上限あったら、数日で覚えられるものも何週間もかかっちまうじゃねーか!」


俺の全力の抗議にやれやれ、と首を振ってみせる。


「あのさあ、最初に会った時に能力を解放してあげたでしょ?その後君は結構乱用してたみたいだけど、全く体に異常をきたさなかったの?」


言われ、思い出す。確か最初は問題なかったが、使い続けている途中に何度か頭痛を発作したっけか。


「覚えがあるみたいだね。その頭痛は今回の上限以上の回数、能力を使った時に起きた頭痛と同じものだ。もっと言えばあの回数が君の上限。あれ以上使えば命に関わる。物質干渉の能力だってそうだ。ランクが上がるほど威力は上がるが、使用する当事者にも影響が及ぶ、言わば諸刃の剣なんだ。そんなもので死んじゃったら、君をかばった僕の頑張りが無駄になっちゃうじゃないか。だから、あまり無理をしないでほしい」


なるほど神様も神様で、俺のこと心配してくれてるのか。そう言われると、言い返そうにも言い返せなくなる。俺は何も言わずに引き下がった。


「わかってくれたのならそれで充分だ。そろそろ現世の君の体についても心配している頃だろう?もう戻るかい?


「ああ、その前に一つ、気になったんだが」


体、という単語を聞いて疑問が浮かんだので問う。神様は肯定の代わりに首を傾げる。それを見てから、続ける。


「この世界は神様のあたり以外真っ暗だろ?だから俺は自分の姿が見えないんだけど、俺ってここでは人間と龍、どっちの姿をしているんだ?いや、今は龍として生きているけど、日本語は喋れないわけだろ?でもここでは喋れる。俺の他愛のない疑問なんだが、少し気になってな」


それを聞いて、少し驚いた表情を見せてから、不敵な笑みを浮かべる。


「それは言えないな。どうしても知りたかったら、自分で結論にたどり着いてみるといいよ。そのために一つヒント。この世界の君は、人間でも龍でもないよ。それ以上は言えないから、元の世界で考えてみるといいよ。それじゃあね、蒲生龍也……ピィ君」


これが、神様が初めて俺を龍の名で呼んだ瞬間だった。

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