三十四幕:一念発起
「アルス……」
いつの間にか湖畔に着いたリルがぽつん、と呟いた。
「探したんだよ?でも、アルスのことだからなにか訳があったんだろうけど。見つかって、よかった」
なにかに吸い込まれるように、悪龍たちのど真ん中へと歩いていく。何やらいつものリルと調子が違う。
「リル!待て、待つんじゃ!そやつ、なにか様子が---」
直後。ドン、と鈍い音が聞こえたかと思うと、リルが後方に吹き飛ばされ、木と衝突する。
リルはうめき声を漏らしながら、そのまま意識を失ってしまった。
ずっと探していたとはいえ、ここまで我を失うものなのだろうか?だが、そんなことはもうどうでもよかった。気がつけばもう、体は動いていた。
そう、今日二度目の能力を発動したのだ。内容は、身体の巨大化。直後、今までに感じたことのない頭痛が襲ってくる。
痛い。頭が破裂してしまいそうになるくらい痛い。今になってああ、これが神様の言ってた封印の痛みなのか、と思い出す。これは確かに味わいたくない痛みだ。出来るのなら、もう二度と。
でも。
それでも、少なくとも今はもうしばらくこの痛みに付き合わなくちゃいけない。他人の痛みなんてわかるはずないけど、リルは心身ともに、こんなものじゃ済まないくらいの傷を負っているはずだ。その上で、いつも俺を気遣ってくれたり、助けてくれたりする。だったら、その分の恩返しとして、多少の無茶は致し方ない。
一つ、深呼吸。
よし。しっかりと前を見据え、悪龍に標準を定める。
俺のマスターの仇、命に代えても討ってやる!
次回!ピィ、命がけの無双!(今回短くてすみません)




