終幕:龍生序幕
0時とか1時に出すとか嘘つきました本当すみません!
あのあと寝落ちしてしまって、またいつも通りの時間の更新となります。
今回で一章終わりなんですが、一章終了に合わせまして、全作品のタイトルの章→幕へと変更させていただきます。
リルの熱弁に心を打たれたのか、ライネックは自分の非を認め、憲兵団に自首をして全ての事情を話した。この件は王とライネックの二人しか知らなかったらしく、憲兵も驚いたらしい。まもなくこの一件は城下町から各地の市町村に知れ渡っていき、殺到した非難で王は逮捕され、玉座を降りることとなった。先王には一人息子がいるそうだが、なにぶんあの悪事を働いた王の息子だ。王の座を引き継ぐことは認められず、一月経った今でもまだ玉座は空いたままらしい。
一方ライネックは、多大なる罪を重ねたが、この一件を密告した、ということで多少罪が軽くなったらしい。
誘拐された龍たちは、次々と元の主人の元へと帰っていった。自分の龍が見つかって安堵する者、今回の一件に憤激する者など、様々であったが、帰るときには皆一様に、安堵の表情を見せていた。その顔を見るたびにリルは幸せそうな顔をしていたが。
この一件が落ち着くまで、リルたち一行はアルテアへの滞在を強制されたが、部屋は豪華で、客人のような扱いを受けていた。
「今回の一件、ご協力いただき、ありがとうございました。事が落ち着くまで、一ヶ月も滞在させてしまって……なんとお詫びしたらいいか」
すみませんすみません、と何度も謝ってくる兵士に、リルは笑顔で答える。
「いえいえ。それでも街を散策したりとかできて楽しかったですし!むしろありがとうございました!」
「そう言っていただければ、私たちも救われます。では、村までお送り致しますね」
龍に乗せてもらい、村に向かって飛び立つ。
リルの腕の中で心地良い風を味わっていると、段々と眠気が襲ってきた。
目がさめると、闇の中で足をぶらぶらさせながら座っている少女の姿があった。
「だいぶ、無理したみたいだね〜。今までずっと封されていたものを大量に吐き出したんだ、中身は空っぽだろうね。この調子で使っていったら神にすら対抗し得る力になるだろうね。でも今回の件だけでも龍神に怒られちゃったから。流石に放置しておくわけにはいかないからさ。それでも僕は鬼じゃない。一日一回。この条件で封印をかける。もし、一日に二回以上使ったのなら、体に恐ろしい激痛が走る。それこそ死んでしまうかもしれないね。僕的にも君には死んでもらいたくない。だから、約束は守っておくれよ」
「そんなやばかったのか。守るようにするよ。ところで、前に自分の空間を捻じ曲げて龍の姿に見せてる、って言ってたけど、到底そうは思えないんだ。直せるなら直してみたいんだけど、できないのかな?」
前回会ってから、ずっと気になっていたことだ。もし、これが空間を捻じ曲げただけの偽りなら、元の姿はおろか、他の姿にもなれるのではないだろうか。
「ううん、それは無理なんだ。その姿は、事故の衝撃で能力の根底が、無意識のうちに体の周りに龍の皮を生み出して、それを被ってるんだ。だから、この化けの皮が必要なくなったときに、その空間はなくなると思うよ。まあ、どうしても、って言うのなら、自分の能力を使って、さらに皮を被れば化けることはできると思うよ。でも、その間はどう過ごすかは保証のしようがないけどさ」
そうか。もし俺が人間に化けたとして、リルやエリナは俺の人間の姿を知らない。そう考えると、今の姿のままでいい気がする。
「もう質問はないかな?じゃあ、封印を始めるよ……」
神様は手を俺の頭に向けて差し出すと、聞いたことのない言葉で詠唱を始めた。
ふと目がさめると、沢山の木の節目のある、見覚えのある天井があった。
長かったけど。これでやっとリルの龍としての日々を歩めるような気がする。リルの元へ飛んでいき、はだけた毛布をかけ直してやると、一緒の布団に潜り込んだ。
『改めて宜しく、マスター』




