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白龍転生劇  作者: 蓮羽
序章
24/124

二十一幕:名論卓説

次回、エピローグで一区切りつきます。

今筆が凄くノってるので、0〜1時頃には出せそうです。

「お父さん……なんで、ここに?」


「なんでって、ここが団長室だからに決まってるだろ。むしろ、お前たちがノックもなしに入ってきた理由を知りたいんだが。そこの白龍はなんのためにここにきたか理解しているようだが」


こちらを向き、微笑みかけてくる。胡散臭い笑顔だ。再びリルの父親に向かって威嚇する。


「おお、怖い怖い。仕方ない、白状しよう。今回起きた龍の誘拐犯。その犯人は、俺だ」


あっさりと白状した。なんだ、こいつには悪意ってもんがないのか?


「アルスは正義感の強いやつだった。悪を許さず、悪事を働いているところを見かけたら、すぐさま飛んで行って、解決していた。だから、こういうことを繰り返していれば出会えるかもしれない、というのが半分本心だ。もう半分は悪龍騒動の元凶となったカタルトス家への報復と、王からの直々の命令だ」


王からの命令?どういうことだ?王が、龍を盗めと命令したのか?


「今、この国は東方の国と戦争を行おうとしている。その戦争で、王は悪龍を利用しようと考えていらっしゃる。そのための実験サンプルとして、次々と龍を回収していった。だが、国の役に立てるんだ。苦などない、むしろ幸せだろうに」


狂ってる。国のためとはいえ、他の気持ちをこれっぽっちも考えちゃいない。リルの父親と言っていたが、こんな外道、見過ごすわけにはいかない。爪をたて、襲いかかる。


「ピィ、待って!」


叫び、尻尾を掴まれる。尻尾千切れるかと思った……。


「お父さん。お父さんは悪龍騒動でアルスがいなくなって、なんとも思わなかったの?」


「思わないわけないだろ。だから、現にこうやってアルスを見つけるために---」


「違う‼お父さんは、自分の龍がいなくなって、悲しさや、寂しさを抱かなかったのか、って聞いてるの‼」


いつものリルと何か違う、ここまで怒りをむき出しにした姿を見たことがないが、そんな気性の荒いやつだったのか?たった数日しか見てないからなんとも言えないが、そんな性格には思えない。


「こんなことをしておいて、悲しかったなんて言わないでよ‼自分が悲しかった。それで、理由はどうであれ顔も知らない誰かを同じ境遇におとしいれて。もし本当に悲しかったのなら、なおさらその悲しさを他人に与えちゃだめじゃん‼ましてや龍騎師団長なんでしょ⁉国の人々と龍の平和を守るのが仕事なんでしょ⁉だったら、ちゃんと仕事してよ‼王に頼まれた?そんなの関係ない。頼まれてもおかしいと思うなら止めればいいじゃん!そんな勝手な決定で皆に不幸を与えないでよ‼」


大声で、泣きながら。悲痛に胸を押さえながら、訴える。


他人のことなのに。あくまで他人のことなのに、なぜそんな悲しそうに、苦しそうに、自分のことのように思えるのだろう。他人のことは他人の勝手にすればいい。他人が何をしようが、他人の勝手。他人の事情に介入する必要性なんてまったく、これっぽっちもないのに。なのに、彼女は他人のことで心を痛め、泣きながら訴えている。


ああそうか。俺だって思ったじゃないか。


拘束されているたくさんの龍を見たときに思ったこと。痛そう。苦しそう。そして、可哀想。リルはそこからもう一歩踏み出し、その可哀想を解決させようと努力する。良く言えばお人好し、悪く言えばただの馬鹿だ。俺はこの考えに賛同できやしないし、するつもりもない。


でも。


こんな考えを持っている人間がこの世の中に一人でもいるのなら、人間という種族に少しくらいは期待してもいい、そう思えた。


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