幕間:夢の中で・其の二
シリアス回です。
会話文くっそ長いです。
文章おかしかったら指摘お願いします。
めっちゃネタバレ回なんでこの話から見ることはおすすめしません。一話から見ていただけると幸いです。
「……神様、だって?」
一体、この子は何を言ってるのだろうか。思い込みが激しいお年頃なのだろうか。まあ兎にも角にも今置かれている状況を知ることさえできれば誰だって構わんが。
「うんうん……龍也君?君の考えてることはわかるんだよ?そんなこと考えてるなら、今の状況を説明してあげないよ?」
ニヤニヤ、とにやけながら煽るように言ってくる。まあいい、この際致し方ない。
「申し訳ありません!今までのご無礼をお詫び致します!」
「んー、下心丸見えだけど……ま、いっか。今君がいるのは君の生み出している固有空間だ。君の能力上、僕の固有空間には引きずり込めないからね。代わりにこちらからお邪魔させてもらった次第さ」
「わ、悪い。ちょっと待ってくれ。固有空間だか、能力だか、いまいち理解が追いつかないんだが」
なんだ?俺の固有結界って。夢の世界のことを言ってるのか?
「ノンノン。これは夢なんかじゃないよ。まあ、厳密に言えば夢には近いかもね。今君、現実で寝てるし。能力をうまく使えてない以上、眠っている時に起きる防衛本能が生み出した固有結界に僕が入り込んでいるわけ」
「だめだ……全く理解できない」
これが理解できない以上、次の話は理解できないだろう。まずはここを理解しないと。
「どう言えばいいかな……もう、説明めんどうだから、ここは君の夢で、僕は君の夢に入り込んでる。そう思ってくれて構わないよ。あながち間違ってないしね」
なんか腑に落ちないが……まあ、いいか。
「それで、神様が俺の夢の中にまでご足労いただいて、一体何の用なんだ?」
聞くと、神様は貧相な胸を張ってよくぞ聞いてくれました、というような満足そうな顔をする。
「先に言っておくけど、僕は人間界の神様だ。他の種族に許可なく干渉したとなれば大問題になる。だが、龍也くん。君は別だ。今の君は虎の威を借る狐……龍に化けているだけだからね」
「……は?」
驚きすぎて、素っ頓狂な声を漏らす。化けるって、どういうことだ?少なくともあの世界のことがすべて本当のことだとしても、俺は卵から生まれている。化けるもなにも、生まれ変わっただけじゃないのか?
「いいや、違う。君は皆が焦がれる異世界転生を果たした、と思っているようだけど、君が行ったのは異世界転移……正しくは空間転移だ」
「空間……転移?」
「そうだ。君は、自分の周囲の空間を切り取って、あの世界に貼り付けた。まあ、あの世界にたどり着いたのはただのまぐれだろうね。そして、今いる世界にたどりついた君は、人間界にいた頃に願った、人間以外になりたい、という願いを叶えて龍になったんだろう。そして、安定した生活を送れるよう、リルが森を歩いているタイミングに、彼女が来るタイミングで卵となって現れた。それから先は、君の知る通りさ」
「そもそも……空間を切り取って貼り付けたり、化けるとかって、どうやるんだよ。そんなの、人間のなせる業じゃねえよ」
いよいよ理解が追いつかない。一体自分は何者なのか。自分の中に知らない自分がいることが気持ち悪くてならない。俺は、無価値でなんの才もない平凡以下の存在のはずだ。そのはずなんだ。
「確かに君はなんの才もない平凡以下の存在だ」
否定はしないのか。少し傷つくな。まあ自分で言ったことで、事実だが。
「だが、無価値というのは過小評価が過ぎる。君は生まれた時から空間を操る能力を持っていた。人間が能力を持つ、なんてことはごくごく稀なケースだから、神界じゃ大問題になったね。このまま彼を生かしておいていいのか、後々危険な存在になるんじゃないか、って。だけど、僕がその能力を封印する代わりに生かしていく、という決断が下ったんだ。ある意味、君は僕のおかげでいきているんだからもっと感謝するべきだよ?」
なんか……俺をめぐって凄いことになってたんだな、神界は。
「あ、ありがとう、感謝、してる」
身に覚えのない行為に対してお礼を言うのは多少違和感があるが、おかげで生きて入られてるのなら、まあ文句はない。
「お、素直になってきたね。まあ、封印と言ってもそんな強いものじゃない、ただの蓋のようなものだから、身に危険が迫ったりするとその蓋が取れて能力が暴発しちゃうんだ。そして君はまだその蓋が取れている状態だ。だから封印しにきたんだ。---けど、ちょっと君の現実世界の方で危なっかしいことになってるっぽいね。多分君の空間操作の能力を使うことになりそうだ。神様の勘は結構当たるんだ。じゃあ、行ってらっしゃい。封印は、次の機会にしよう。あ、能力を使いたければ対象に向かってその空間をどうしたいか心で祈るだけで充分だよ」
神様の声が、段々と遠くなっていく。それにつられて目の前が真っ暗になった。




