幕間:夢の中で・其の一
ふと、目が覚めた。短くも長い、そんな夢を見ていた。内容もはっきり思い出せる。俺が死んで、龍に転生して色々こき使われてたような。なんだ、中々に気分の悪い夢だな。
そんなことを思いつつ、ベッドから起き上がる。と、しまった。夢の中とはいえ、体に染み付いてしまったのか、四つん這いになって経ってしまった。うっかりうっかり。
冗談はさておき、ここは、どこだろうか。傍らには自室にこしらえてあるベッドがあるが、それ以外はインクを零したかのように、真っ黒だった。光がないわけではない。事実、ベッドは見えているし、自分の手だって視認できる。だから、なおさら理解しがたい。
突然、ビー、と開演ブザーのようなものが鳴り響いたと思うと、目の前に大きなスクリーンが現れた。
そして、映し出されたのは---赤ん坊。
何事だろうか。これは一体、何なのだろうか。
「よかった……産まれた……‼ありがとう、ママ!」
と、聞いたことのあるような、男性の声。顔は二人とも後ろを向いていて見ることができない。
「産まれてきてくれてよかった。本当にありがとう、龍也」
これを聞いて悟った。これは、自分の人生の歩みだ。そう考えると、男性の方の声に多少の聞き覚えがあって納得だ。だが、母親の声がどうにも母の声と違う。なぜだろう、そう思っていると、
顔がこちらを向く。そして映し出されたのは、西山の母親だった。いまと多少は違うが、左目の泣きぼくろ、今つけているものと同じだろう眼鏡。何より、そのまとっている雰囲気が、西山の母親だということを物語っていた。
「龍輝も無事だといいけど……」
そう言って、赤ん坊の俺の頭を撫でる。
どういうことだ?うまく頭が回らない。ようは俺は親父と西山の母さんとの間に産まれた子で、西山とは双子だっていうのか⁉
それから、ずっと一緒に暮らしていたが、三歳の時、二人は離婚して、俺は親父、西山は西山の母さんについていくことになった。その後に再婚。
その相手は、紛うことなき俺の母さんだった。
衝撃の事実。俺と母さんとに血のつながりなんてなかったのか。なんだろう、いつもなら驚き悶えるだろうが、案外あっさり受け止めることができた。
それからは、俺の記憶に残ってたり、残ってなかったりというような内容がハイライトで流れ続けた。まあ、そのほとんどがいじめられたり、やり返して喧嘩になっているシーンばかりだったが。
段々と日付も最近のものへと近づいていく。
そして、今年の七月十六日。
蒲生 龍也 死去。享年十七歳。
……え?
俺は今、確かにここに存在している。だから、死んでいるはずなんてない。もしこれが本当だというのなら、あの夢が本当だということになる。だが、信じろというのか?あんな浮世離れした世迷言のようなあの夢を。ああもうわけがわからない。頭をかかえているところに、カツ、カツ、と靴音が聞こえてきた。
「やあ、龍也君。どうだったかな?君の人生をかたどった上映会は。---いや、何も言わなくていいよ。君の考えていることはお見通しだからね。僕が何者か、そう思っているでしょ?僕はただのしがない神様、だよ」
いつの間に現れたのか、目の前には自称神を名乗っている小学生くらいのショートヘアの女の子がふんぞり返っていた。
次回、後々に関わってくるかなり重要な秘密が暴露されます(はずです)!




