十三幕:驚天動地
なんか気づいたら閲覧数1000超えてました、ありがとうございます!
エリウスが飛び込んで、一瞬何が起きたのか理解できなかった。
「ピ、ピィ!助けにいって‼」
リルの叫び声ではっとすると、エリウスを追いかけて崖を降りる。エリウスは落下している中でも全く臆すことなく、要塞をしっかりと見つめている。昨日はこんな龍必要ないとか言ってたくせに。大事にされてるんだな。
だからこそ、こんなところで死んでもらっちゃ困る。青龍のため、となると不本意だが、さすがに可哀想だしな。
羽根を折りたたんで空気抵抗を減らし、落下速度を上げ、エリウスの肩を掴むと、崖の上へと飛び上がった。
全く、昨日の敵を助けることになるとは。昨日の敵は今日の友とか言うけど、忠実に再現しすぎだろ。
崖の上に戻ってから。正座をするエリウスと、上から説教をするリルの絵があった。なかなかお目にかかれないぞこんな光景。
「それで、なにも心当たりないの?何か恨みを買うようなことをした、とか」
「昔、わたくしの祖父が悪龍製造に手を出したことがあって……悪龍騒動、と言えばわかるかしら、あの事件の首謀者だから、周囲から恨まれてるのかも……」
悪龍騒動?なんかそんな感じのことつい最近聞いたような。と、リルの体が震えていることに気付く。リルは俺を抱え上げると、ゆっくりとした口調で俺の謎を解決した。
「悪龍騒動は、アルス……私のお父さんが使役してた赤龍が失踪した事件なの」
リルが告白した瞬間、エリウスは虚を衝かれたような顔を見せた。
「そう、だったの。……本当、ごめんなさい」
「なんで謝るの?やったのはエリウスのおじいさんなんでしょ?エリウスは悪くないよ。それに、謝られてアルスが戻ってくるわけでもないし」
そう言って、遠い目をする。
「これはわたくしの問題、あなた方に迷惑をかけるわけにはいきません。村までは案内しますが、城塞都市までは一人で行きます」
急にエリウスは立ち上がると、元来た道を歩き出す。
「待って。あの城塞都市は龍のためにできたと言っても過言ではない。そんなところに、龍を連れずに人っ子ひとりで行くつもり?」
「え、ええ。わたくしは今、龍がいませんもの」
振り返ることなくそう答えると、また歩き出す。
「なら、私もついて行く。駄目と言われようと、なんと言われようとも、勝手について行くから」
エリウスの足が止まる。その足が心なしか、かすかに震えていた。
目の当たりを袖で拭うと、満面の笑みでこちらに振り返った。
「仕方ないわね!それならこのわたくし、エリウス・リナ・カタルトスについていらっしゃい!」
あ、こいつ名前長いな。略してエリナでいいか。
「エリウスちゃんの名前初めて聞いた。……略してエリナ、でいいかな?」
最近、リルと感性が似てる気がしてならない。
結局、エリウスのあだ名はエリナで固定されることとなった。




