百三幕:無双剣舞
「え、っと……今俺がいる紅蓮教と暗黒教が敵対している。そしてリル曰く暗黒教の手先が悪龍らしい。だが紅蓮教の教祖はアルスときた。悪龍はアルスの統率下に置かれているはず。それなら悪龍は暗黒教よりも紅蓮教にいる方が自然だろう。なのに、なぜ悪龍は暗黒教の元にいるんだ……?」
紙に現在の状況を図に興す。だがむしろこんがらがるだけで詰んでいる現状を改めて目の当たりにさせられるだけだった。
「あー、イライラする。もう直接調べに行くしかねーか」
頭を抱えながら外へと出る。
---近くにおわす悪龍よ。全てここに!
そうして出てきた悪龍の数は、ざっと見ただけでも五十はいるだろう。
「これは……ちょっと予想外だったが。まあいいか。イライラしてたし丁度暴れたい気分だからな!」
声を張り上げつつ、両手で空間を固めて作り出した不可視の剣を握る。そのまま一番近くにいた悪龍の首を振り払う。そして、ひとつ深呼吸をすると一歩、また一歩と悪龍の集団ににじり寄る。
見た感じ一個小隊といったところか。そう考えると後ろにいる周りより大きい悪龍が隊長か?なら、あいつを倒せば……
と、突然目の前に三匹の悪龍が道を塞ぐかのようにして入り込んできた。まあそう簡単には隊長の元には行かせてくれねーか。ま、でもそんなことするくらいなら、
「もっと張り合いがなくっちゃ。なあ……?」
左手を一閃。横になぐと豆腐を切るかの如くいともたやすく三体の胴が半分になる。畜生、結構返り血浴びちまったな。ちょっと鉄くせえや。先代なら返り血も浴びないんだろうけど、さすがに俺がそこまでの領域に達するのはまだまだ無理だろうな。
剣についた血を振り落とすと再び隊長に向かって歩き出す。だが、他の悪龍が攻め入る様子はない。なんだよ、さっきので怖気付いたってのか?本当張り合いねーな---
直後、右に跳躍する。その数瞬後、俺のいた場所には鋭い鉤爪が振り下ろされていた。
「なかなか骨のある奴もいんじゃねーか」
そんなことを呟きながら、こちらに狙いを定めていた後ろの悪龍を反時計回りに回りつつ、左手で斬り伏せる。そのまま右手でもう一体の悪龍を右手の剣で貫く。
「しっかし、空間把握ってのは本当便利だなあ、不意打ち食らうこともねーし。これに関しては本当先代に感謝するよ。ま、この能力がなかったらこうやって今戦うこともなかったんだけど、なっ!」
だらだらと愚痴をこぼしながら次々と悪龍を斬り倒していく。あ、でも俺のいた世界も破滅状態になってたのか。そう考えると全面的に先代に感謝しなくちゃじゃねーか。でもやっぱ、俺を守って消えるくらいなら俺が消えた方が良かったのかもしれないけどな……って、何感傷に浸ってんだ俺は!戦闘中だぞ集中しろ!
自分の頬を殴って気合を入れ直すと再び悪龍の群れに斬りかかる。右腕を振り下ろし、左腕で斬りあげる。そのまま時計回りに回りながら三体の悪龍を斬り伏せる。
あと……十五体か。少し疲れてきた。とりあえずは増援が来ないことを祈りつつ、目の前の敵を倒すだけか。
ああもう!消耗激しいけどもう面倒くさい、使っちまえ!
二振りの剣を消し、悪龍の群れに向かって手を伸ばす。そして、悪龍の上に不可視の剣を無数に生み出す。
「これで倒せればいいんだけどな---放て!」
俺の掛け声とともに文字通り剣の雨が悪龍たちに降り注ぐ。これで全滅してくれるのが一番ありがたいんだけど……
案の定砂塵の中には一体の龍の影が見えた。
「やっぱり生き残るよなあ、お前は」
少しは予想していたけど……あの攻撃をよく避け切ったな。結構射程範囲広げたから一瞬で避けられる狭さじゃないと思うんだが。
その疑問は砂埃が収まることによって明らかとなった。
「な⁉」
残っていた悪龍全てが背中から血を流し、隊長の側で倒れていた。
「なんだよこれ……信頼関係抜群かよ」
こんな大物と一騎打ちするならあんな大技使わなきゃよかった。まあいい、やってしまったものは仕方ない。もう一度両手に剣を作ると、このひときわ大きな悪龍と対峙する。
戦闘描写書くのって楽しいですねぇ。
上手い下手はともかく僕は書いてる時すごく楽しいです。




