十一幕:正体不明
この二日間忙しくて短くなってしまいました、すみません。
明日からは通常通りの文字数に戻る……はず、です。
昨晩、夢を見た。大事な夢だった気がするが、思い出せない。まあいいか、ソファから抜け出すと、天窓まで飛んでいき、外に出る。うん、いい天気だ。もっと高いところで朝日でも眺めようか。家の屋根にのぼる。
そこには、先客がいた。炎のような赤い鱗に真紅の瞳。赤龍、だろうか。朝日が昇るだろう方を向いて、佇んでいる。
王者のような風格をまとっているその赤龍に圧倒され、迷惑をかけるわけにはいかない、と思い、家へと戻る。その時。
「待ちなさい、銀龍」
凛とした声で制され、家に入ることを留まった。見ると、赤龍はこちらをじっと見つめていた。何か気にくわないことでもしただろうか。俺の存在が気にくわないとか?いやいやどんな独裁者だよ。そんな一人問答をしていると、赤龍が二の句を継ぐ。
『あなた、私のマスターの娘……リルの、龍でしたよね?どうです、この家には慣れましたか?』
ということはこの赤龍はリルの親の龍、ってことか。俺レベルじゃないけど格好いい龍だな。
『え、と……はい、まあ、まだ来て数時間しか経ってませんけど。リルの両親も優しいですしね』
『ええ、確かにあの二人は本当に優しい。ですが、二人の優しさに依存しないでください。悪夢を見ることになりますよ……と、もう朝ですね。それでは私はこれで。二人にはよろしく、とお伝えください』
そう言って、遠くの空へと飛んで行った。その背中を見送っていると、朝日が顔を出す。眩しさに目を覆い、次にその方を見た時には、赤龍の姿は見えなかった。
出窓から家に戻り、二度寝をしようと、ソファで丸くなる。
あの赤龍、なんだったんだろう。リルの親の龍なら、一緒に家に入れば良かったのに。それに、両親によろしく、と伝える理由もわからない。なにか今は帰ることができない理由でもあるのだろうか。だが帰れないほどまで重要なことなんてあるのだろうか?
そんな疑問の答えを考え続けているうちに、リルが起きてきた。
「おはよう、ピィ。早起きだね。ちょっと待っててね、今ご飯作るから」
まあ考えるのはあとでいい。今はこの、腹が減ったと鳴き続ける腹を収めることのほうが重要だ。




