九十九幕:記憶消失(上)
「そうだよ……そうだよ。あんなのあり得るはずがなかったんだ。でも、そうなるとどこからが夢だったんだ?なあ神王、今の下界の様子ってどうなってるんだ?」
問うと、神王が唖然とした表情を浮かべている。
「小僧……記憶は残ってるのか?」
「記憶……?記憶といってもタチの悪い夢を見てたことくらいかな。死んだはずの家族が龍の姿で何事もなかったかのように生き返ってるんだぜ?悪夢だわあんなの」
「記憶は、そこまでか?」
神妙そうに聞いてくる。
「?ああ、そこで意識なくなって、気がついたらここにいた」
神王が一つため息を吐く。なんなんだよ一体。なんか変なことでも言ってるのか?
「小僧、落ち着いて聞け。……主が見た夢はそのまま事実だ。死んだ人間すらも龍となって生き返っている。これもアルスが立てた作戦の一つだろうがな。そしてそれを目の当たりにした小僧はそこで意識を失った、と言ったな?」
首を傾げつつ、肯定する。
「それは半分間違えている。確かに小僧は意識を失っていた。だがそれは不条理を目の当たりにして能力が暴走した際、同時に自我を失ったんた。要は小僧の意識がない間、充分に暴れたんだ、体に疲労や倦怠感、頭痛などの症状が起きとるんじゃないか?」
言われてみれば。心なしか、だるさや吐き気が込み上げてくる。それにしてもあれが全て現実だったなんて。現実と向き合うたびに頭が痛くなる。
「そういえば、先代の龍神はどこ行ったんだ?」




