九十八幕:人類龍化
「どうしたの?龍、そんな狐につままれたような顔して。早く座りなさい、冷めちゃうわよ」
お盆を持った龍が、こちらに向けて話しかけてくる。テーブルでは無邪気に肉を頬張っている小さな子龍と、新聞を読んでいるひときわ大きな龍。
こんなの、俺の家族じゃない。
「わ、あああああああ‼」
目の前の現状を受け入れることができず、声を張り上げながら外へ飛び出す。
「ど、どうしたの龍⁉」
後ろから制止の声が聞こえてくるが、そんなものは無視する。何で知らない奴の制止を受け入れないといけないんだ!
玄関で靴を履き、外へと飛び出す。そこでも例に漏れず空を龍が飛び、地を龍が闊歩している世界だった---。
「---ろ。起きろ、小僧!」
図太い声が脳内に響き渡り、意識を取り戻す。
目を開くと、そこには何度か見かけた貫禄のある白髭を生やした顔。
「あ、れ……なんで神王がここに……?」
神王は一瞬キョトンとすると、わっはっは、と笑いながら答える。
「ここも何も、わしの部屋じゃからなあ。ここにおっても構わんだろうが」
なんで俺神界にいるんだっけ。えっと……アルスを追いかけて、それで裏切られて捕まって……
「そうだ!家族が龍に!」
思い出して、がばりと起き上がる。周囲を見渡すが、アルスとの戦闘の時についた戦いの痕もなければ神王も龍になっていない。
あれ、どうなってるんだ?……疑問とともに一縷の希望が見えてくる。
「もしかして……今までのは全部、寝落ちだったってのか?」




