九十五幕:手練手管
「では、この部屋で待機していてください」
そう言い残して広い部屋に一人取り残される。
「やっと、一息つけるな……」
とりあえずその場に座り込み、今までのことを回顧する。
ここから抜け出して、神界へと続く道を見つけ、戻ってきたらジュペンが焼き野原になってて……ジュペン城内に乗り込んでリルが殺されて、神様も死んで。また神界に行って、ここに戻ってきて……たった一日二日でこんなにやり遂げたのか。なんだか一週間とか一ヶ月とかくらいに感じるほどに濃い数日だった。
でも、それももう今日で終わる。皆を生き返らせて、それでハッピーエンドだ。ああそうだ、多少のいざこざはあれどそれで表面上は全て解決するんだ。
もうすぐ終わりだと思うと何か少し眠くなってきたな。まあ時間になったら起こしてくれるだろうし、能力を今以上に使えるようにするには仕方のない行為だ。これで大義名分ができたわけだし、少しだけ眠るか……
「ん、んぅ……」
寝心地の悪さに眼が覚める。
「おはようございます、龍也さん」
どこか、こもった声。ゆっくりと目を開けると、斜め下にアルスがいた。
あれ、俺こんな高いところにいたっけ……?少し疑問に思いつつそこから動こうとするが……動かない。見ると、両手と両足が壁に固定されている。
「アルス……何度裏切れば気が済むんだよ‼」
「大丈夫です、裏切りはしませんよ。きちんと約束は守りますから。ああ、でも生き返らせる時に手違いで人間以外の姿で生き返るかもしれませんね。例えば……龍とか」
「おま、最初からその気で……」
「ええもちろんですよ。龍なら私の統率下に置ける。それはあなたとて例外ではありません」




