十幕:往事渺茫
……ん。
あれ、俺は……何をしていたんだっけ?
青龍と決闘して、その後、青龍から強襲を受けて---あぁ、そうだ。俺……死んだのか。
ゆっくりと目を開くと、木でできた天井が目にはいった。
あの世にしては随分と現世寄りだなぁ。そう思いながら、四肢を投げ出す。
その時。
「ピィ!体の具合はどう?どこか、痛いところはない?」
リル⁉なんでリルがここに?そんな疑問を抱く。
すると、俺の意図を察したのか、
「あ、っと……ピィは来たことなかったもんね。ここは私の家。決闘が終わってすぐに、ピィが倒れちゃったから、ここまで運んできたんだよ」
と、説明してくれた。
だが、それは嘘だろう。ここはあの世ではなく現世で、ここがリルの家、というのは本当だろう。だが、決闘後、確かに闘ったはずなのだ。夢にしてはあまりにも鮮明すぎる。俺が嫌なことを思い出さないようにするための配慮だろうか。思ってもらえてる、と考えると少し嬉しくなった。
「今日は疲れたし、もう休んで、明日また村を散策しよっか」
外を見ると、もう夜の帳が落ちている。体に疲労感がほとんど残ってないが、きっとさっきまで寝ていたせいだろう。これ以上詮索せず、大人しく眠ることにした。
その晩、夢を見た。巨大な銀龍が、様々な種の龍たちを先導し、人々を襲っている。龍に対抗する術を持ち合わせていない人間たちは、無残にもされるがままに殺されていった。
戦場は炎で包まれ、地面は血の海と化している。それを見て凱歌とも取れる雄叫びをあげると、空高くへと飛んでいく。




