八十八幕:神王ノ雷
「よし、これならあいつは復活できないだろ」
海水を呼び出した直後、俺の周囲の空間を海へと繋げる。こうすることによって俺は水を被ることなく、かつきちんと海に水を戻すことができる。単純だが、我ながら良い策だと思う。
『なぜ、海水などを呼び出した?』
「ほら、アルスって炎で燃やして灰から新しい体を生み出してるわけだろ?それならその大元である火を起こさせなきゃいいんじゃないかなって思ってさ。海を選んだのは少しでも多い方がいいと思ったからさ」
龍神が戦っている時に見えた神王の間にある噴水。あれがなきゃこんな考えは出なかった。神王の趣向に感謝しなくちゃな。
「……って神王!あの人放置しっぱなしだった!」
どうする、探すか?だが探すならこの海水がなくなったあとじゃないと危ないだろう。かといってそのままだと海水と一緒に流されて海に転移してしまう。
「わしを放ったらかしてこんな所業をし、その上城を壊すとは。なかなか肝が座っとるようじゃのう、なあ少年?」
「よ、よかった、生きてたんですね……?」
「よ、よかった、生きてたんですね……?じゃないぞ!わしだって不老不死だとはいえ痛いものは痛いのだ。もっと丁重に扱ってもらいたいのう」
愚痴をこぼすなり、何か呪文のようなものを唱え始める。すると、一瞬にして海水が消滅した。
「わしは神の長である以前に全能の神なんだ。これしきのこと、朝飯前じゃよ」
ドヤ顔でそんなことを言っている。
「そうだ!神王様、あの憎き赤龍アルスをこの手で追い詰めました。そして神王様は雷を操るのが得意だと聞いたことがあるのですが、あのアルスの肉片に雷を落としていただけないでしょうか?」
明らかに神王の目つきが変わる。
「そんなこと主に教えた覚えなどないのだが……まあいい、わしもあいつに一度打ち負けて一矢報いたいと思っていたんだ。よし。わしに任せておけ」
言うなりニヤリと笑いながら手を天に向けて突き上げる。
「来い!」
神王の声に雷がアルスに向かって落ちることで答えた。
直後、アルスの残骸は炎に包まれた。




