八十六幕:名案発企
なんだ今の感触……俺は、死んだのか?死ぬ時ってあんな感覚なのか。でもこの感じ、どこかで覚えがあるような……
ゆっくりと目を開くと、目の前に映画館のような巨大なスクリーンが浮いていた。スクリーンには、アルスが目の前で攻撃を繰り出しているのが見える。
やっぱり。あれは精神世界に転移した時の衝撃だったんだ。安堵すると共に、これから先のことを考えると頭が痛くなった。
今こうして戦ってるってことは龍神が憑依した瞬間にどうにかして避けたのだろう。それにしても、あんなに細かく斬っても核に当たるどことか変化一つないなんて。あんなの粉々にしても倒せる気がしない。
さっきから見ていると復活中に攻撃しようとしても反撃されて近付けない。何かいい手はないのか……⁉
何か弱点や倒す手段はないのか。手がかりを探そうとスクリーンを凝視する。
「どこだ……どこに弱点が……っ!」
一瞬、スクリーンにあるものが見えた。もしかしたら。あれを使えば勝てるんじゃないのか⁉あとは……
「龍神‼この勝負勝てるかもしれない!能力をあまり使わずにアルスを追い詰めてくれないか⁉」
返事は、ない。だがわずかに映像が縦に揺れた。アルスに悟られないようにとの配慮だろうか。あとはその時が来るのを待つだけだ。
それにしても、本当龍神は戦闘センスあるよな。今は龍の姿で本領発揮できているんだろうけど、人間の時だってかなり高レベルの動きをしていた。前にヘラクレスが龍と人間の戦い方は違うとか言ってたけど、そんな壁は微塵も感じられなかった。今度戦闘のコツでも聞いてみるか。
『もうすぐ”切れる”ぞ!準備しろ!』
不意にそんな声が響いた。声の主が龍神なのはわかったが、何が切れるのだろうか。とりあえず、いつ戻っても大丈夫なように深呼吸をして心を落ち着かせる
『いくぞ。二、一……』
世界が光に包まれた。あとは任せろ龍神、俺がこの戦いに終止符を打ってやる!




