八十五幕:木端微塵(上)
「あいつらの死が……有意義、だったってのか?」
「ええ。彼らの魂は貴重なサンプルだ、丁重に取り扱わせていただきますよ」
駄目だ、こいつには何を言ってもそれが当然であるとばかりに返してくる。これじゃ埒があかない。
再び剣を生成してアルスに向かって剣を振るう。
だがそんな見え見えな遠距離攻撃が当たるはずもなく、簡単に避けられて近くにあった柱に当たり、砂埃をあげて崩れ落ちた。
よし。砂埃の中に入り、アルスの後ろに回り込み、剣を振り下ろす。確かな手応え。だが一撃与えただけではまた再生してしまう。左手にも剣を生み出し、両手をアルスに向けて振り回す。少しでも細かくするために。こうやって何度も再生するやつには必ず核があるはずだ。頭や心臓など、核がありそうなところを重点的に斬り刻んでいく。
煙が収まった頃にはアルスは握りこぶし大の肉片となってバラバラになり床に散らばっていた。
「もう大丈夫……だよな?」
しばらく注視していたが、復活の兆しがないことを確認するとへなへなとその場に座り込んだ。
「やっと終わった……皆の仇、討ってやったぞ……」
不意に皆の姿を思い出す。喬が笑顔でリルに抱きつき、リルは少し困った顔をしている。それを見ているエリナは頭を抱えてやれやれ、と呆れている。神様は何か悪いことを思いついた子供のようにニヤニヤとした笑みを浮かべている。
畜生……涙が出てきちまったじゃねーか。




