表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白龍転生劇  作者: 蓮羽
序章
1/124

序幕:人生終幕

 人間、という種は嘘を吐き、その嘘を嘘で塗り固める。それを繰り返し行って、生きている。人間誰しも保身のために嘘を吐くくせに、他人には本心を求める。実に独善的な生き物である。


 なぜ、こんな悲観的な意見を述べているのかというと、たった今、ずっと親友だと思っていた相手に裏切られたから、である。


 時は十分ほど前にさかのぼる。放課後、忘れ物に気付いて教室に戻り、ドアに手をかける。すると、中から声が聞こえてきた。普段は誰がしゃべっていようと問答無用で入っていくのだが、自分の名前が聞こえてきたことで、入るのをためらってしまった。


 何の話かな、そう思ってドアの前で聞き耳を立てる。どうやら声の主はクラスのメインのグループに属するやつらのようだった。


「蒲生ってあいつだろ?あのクラスでいっつも本読んでるやつ」


「そうそう。あいつまじでなんなの?体育も出来ねーし勉強もできないとか。生きてる意味あんのかな?」


畜生、言いたい放題言いやがって……お前らみたいなやつと関わりたくないだけだ。そう怒りに震えていると、耳を疑う名前が聞こえてきた。


「西山、そういえばお前あいつと仲よかったよな?」


西山だって⁉この学年に西山は一人しかいないはずだ。そして、僕の唯一無二の親友も西山……どういうことだ?


「おいおいやめてくれよ。幼稚園の頃から同じってだけで、あいつが構ってくるから致し方なしに付き合ってるだけだよ。仲良いなんてこれっぽっちも思ってねーから」


嘘、だろ?幼稚園の頃からずっと一緒に遊んできて、困ったら相談乗ってもらって、親友だと思ってたのに。西山は、あいつは、裏切ったっていうのか⁉


いや、違う。悪いのは自分だ。他人に依存し、すがる。勝手に信じ込んで、期待する。どれも、自分が勝手に思い込んだ末路だ。 だからあいつは悪くない。


悪いのは勝手に親友、と決めつけて信じ込んだ自分に責がある。そう、わかっているのに。涙が止まらない。これは自分の失態なんだ。嘘を見抜くことができなかった、自分が悪いんだ。だからあいつを責めることはしない。それでもやっぱり信じたくはなかった。


もう、その場に居たくなくて、その場から逃げ出した。靴も履かず、ただひたすらに走り続けた。ただ、ただ、行き場のない思いに苦悩し、涙を流しながら。


「畜生、畜生、畜生‼」

自分に言い聞かせるように、何度も、何度も。叫び続けた。苦しい、辛い。こんな思いをするくらいなら、人なんて信じない。いや、関わらない方がマシだ。もし、生まれ変われるんだとしたら、もう人間にはなりたくない。


少し落ち着いて、立ち止まる。気付くと、太陽は傾き、家からもかなり遠いところまで来てしまっていた。


遅くなると親が心配するだろう。そろそろ帰らないと。そう思い、帰路につく。


明日からあいつにどう接すればいいんだろう。そんなことを考えながら歩いていると、突然すぐそばでクラクションが鳴り響いた。悲鳴も聞こえてきた。危ない、という声も。


驚いて、音のする方を向く。すると、そこには事故のあとはなかった。その代わり---





僕の眼前には、トラックが迫ってきていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ