5、もふもふ天国と心臓を強くする方法
「キュンキュン!」
「おはようございます、シロさん」
朝起きて身支度を済ませると、それを待っていたかのようにシロさんが部屋の前にいます。
白い狼の子供の姿をしているシロさんは、本当に本当に可愛らしいです。
ついついたくさん撫でてしまいますが、よく考えると普通の狼ではなく精霊なのですよね…。
ペットのように撫でくりまわしてしては申し訳ないと思いつつ、フワフワモフモフの毛並み楽しんでしまう手を止められないのが現実…
これは私が悪いのではない。
可愛すぎるシロさんの罪なのであります。
それはともかく。
朝の庭のお世話と、早朝の森の薬草採取は毎日行っています。
シロさんとは常に一緒です。
浅いところとはいえ森ですから、何かの拍子に野生動物や魔物に襲われるかもしれません。
薬師様の計らいで、私にはシロさんがついてくれることになってます。
…でも。
「シロさん?お家の中は大丈夫ですよ?」
「キュン?」
朝の仕事を終えて朝食を用意していると、足元にフワモコな感触が…。
歩くとフワフワ。
立ち止まるとモコモコ。
これは…巷で噂に聞くアレでしょうか…!
天国!
もふもふ天国!!
さらに、もふもふ萌えという概念が王都では流行っていると聞きました。
(ちなみにオルさんは「俺はミラ萌えだけどな!」と言ってて、ちょっと引きました。)
「ミラさん、おはようございます。シロ…シロは本当にミラさんが好きなのですね…」
「薬師様おはようございます!」
「キュン!」
珍しくちょっとお寝坊な薬師様です。
やわらかな亜麻色の髪にも寝癖がついてます。
薬師様は私の足元にいるシロさんを抱き上げて、何か話しかけてます。シロさんもキュンキュン頷いてます。寝ぐせの薬師様とセットで、一枚の絵になる可愛さです。
眷属ともなると、主と意思疎通が出来るそうでとても羨ましいです。
私もシロさんとお話ししてみたいです…。
「今日は夕方まで出かけますので、ミラさんは室内で座学をしててください」
「わかりました。珍しいですね、薬師様のお出かけ…」
薬師様は作業場にいることが多くて、外出は週末に村に薬を届けるくらいです。
それも、私をオルさんの所に送り届けるのも兼ねてますから、薬師様だけでの外出は私の知る限り初めてかもしれません。
「ちょっと厄介ごとがありまして…急いで村に行かなくてはなりません。家は空けられないので、今日は一日家にいてもらえますか?」
「わかりました薬師様。いってらっしゃいませ」
ぺこりとお辞儀して顔を上げると、ポカンと口を開けた薬師様がいます。
綺麗で整った顔が台無しです薬師様。
「薬師様?」
「あ、いや、すみません、なんか良いですね、それ」
「はい?」
「ずっと独りだったから、新鮮です。
ちょっと憧れていたんです。こういうやりとり。
…いってきます、ミラさん」
はにかんで微笑む薬師様。
ちょっと 顔を 赤らめて 微笑む 薬 師 様 。
もう一度いってらっしゃいませと薬師様を見送ってからドアを閉めると、私の顔は一瞬で真っ赤になってしまうのでした。
もう!!今日の座学は心臓を強くする薬について調べます!!
可及的速やかに!!
ブクマが増え…た…?
朝になったら消えてるとか、夢だったらどうしよう…( ;´Д`)