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22、勇者と聖女の噂

王都のメイン通りは、いつにも増して人が多くなっています。

それはそうです。

魔王を倒してから、旅に出ると行方を眩ませていた『銀髪の勇者』が、王都に帰還したという話ですから。

しかも『聖女』を伴って、です。

これで勇者様が旅に出た理由は、聖女様を探していたからだって、たくさんの人達が噂しています。

なんか、すごいことになってきましたね。


私は手乗りサイズになったシロさんを撫でながら、宿の部屋から外を見てぼんやりとしていました。

マール様が王都の貸本屋から薬学本を借りてきてくださって、部屋のテーブルには本が数冊置いてあります。薬学以外にも観光案内本とか、オルさんのことが載っている騎士の本とか借りてくださいました。

でも、私はそれを読む気分にはなれません。


「カーチスさん、大丈夫ですかね…」


先日運悪く私の白金色になった髪を目撃してしまったカーチスさんは、マール様の提案で髪を銀髪に染められてしまったのです。魔法の効果は三日とのことですが、なぜそんな事をするのかと聞いたら「実は頼まれていたんですよ、ふふふ」と。それって答えになっていないのですが…。

オルさんが王都にいるらしいので「ミラさんの誕生日は王都でやりますか!」と、王都に連れて来られたのは良いのですが、そこから私は宿の部屋でお留守番なのです。

私も魔法で髪色を変えれば良いのでは?と言ったら、私には十年前の魔法が中途半端にかかっていて、誕生日にならないと解けないらしいのです。

そんな訳で、手乗りシロさんに「認識阻害」という、他の人に認識されないようにする精霊魔法で守ってもらっております。


「それにしても、聖女様はすごく美人だとか、大輪の花が咲くような存在感だとか、どこから噂が出るんですかね、シロさん」


キュン、キュン?(ミラも花のように愛らしいから、噂どおりなんじゃないの?)


「私は聖女様じゃないですよ?」


キュキュン(勇者に愛を捧げれば聖女なんだから、ミラがそうじゃないって言えないよ)


「あ、あああああ愛を!?そもそも私は勇者様にお会いしたこと無いですから!」


あ、愛を捧げるとか、な、何を言ってるんですかシロさん!

それに、男性と何かあるとか、私にはそんな事…身近な男性なんて、家族のオルさんくらいしか、あとマール様…


「っっ!!!!」


顔が一気に熱くなります。

シロさんが不思議そうに私を見てきたので、何でもないと笑って誤魔化します。


なぜでしょう。

マール様の顔を思い浮かべただけで、こんなに胸が、心臓が苦しい…。

前は実際見たりしたらそうなっていたのに、今は考えただけで心臓が壊れそう…病気でしょうか…。


赤くなったり青くなったりする私に、シロさんがペシペシと肉球で私を叩きます。

我にかえると、窓から銀の髪が見えて、歓声も聞こえてきます。すごい人気ですね。…カーチスさんご愁傷様です…


ドアをノックする音が聞こえて、シロさんがキュンと返事をすると、マール様が入ってきました。

顔がまた一気に真っ赤になります。何でしょう。何だかすごく恥ずかしい気持ちでいっぱいです。


「やぁ、カーチスさんは上手くやってくれてます。これならすぐに解決しそうですよ」


「…そ、そう、ですか。良かった、です」


マール様の甘く優しい笑顔が、さらに鼓動を早めます。

体が固まって、顔が熱くなって、頭から湯気が出そうです…


キュン!?(ミラ!大丈夫!?)


「え、ミラさんどうしました!?顔が真っ赤ですよ!?」


マール様が心配して近くに寄ってきます。顔が、吐息が、近い!ちか…あうあうあう…


「ら、らいじょうぶれす〜」


「ミラさん!?」


のぼせて目を回す私。

慌てるマール様とシロさん。


「何やってんだお前らは…」


呆れたオルさんの懐かしい声が……オルさん!?




「久しぶりだなミラ!良い子にしてたか?」





お読みくださいましてありがとうございます。


あれ…展開が…どうしてこうなったんでしょう?

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