16、勉強の日々、昨日見た夢
森の家に帰ってから2週間、薬師様から多くの薬学を勉強するよう言いつけられました。
森の薬草採取、薬草園の世話などは私に全て任されて、薬師様は作業室に篭って村に卸す薬を作っています。
ご飯の時には出て来るのですが、ちゃんと睡眠をとっているのか心配です。
一ヶ月を過ぎた頃、薬師様は朝から鶏のミルク煮を作ってました。
久しぶりの薬師様のミルク煮です。嬉しいです。
「おはようございます薬師様!調剤は終わったんですか?」
「おはようミラさん、おかげさまで、半年分の仕事が終わりましたよ」
「ええ!?」
半年分!?
なぜそんなに急いで仕事をしたのでしょう?
「もちろん、ミラさんに付きっきりで教えるためです」
にっこり笑顔の薬師様。
跳ね上がる鼓動を気力で抑えつつ、半年分の仕事を一ヶ月で終わらせる薬師様の実力…やっぱり凄いです。尊敬なのです。
でもその理由が私っていうのが、少し、いやかなりひっかかるんですけど。
「おや?ミラさん化粧してます?」
「え?化粧はしてません…ああ、最近肌が白くなって、髪質も変わったような気がするのです。薬師様から頂いた石鹸が良いものだからでしょうか?」
気になってたそばかすもほとんど無くなって、肌も白く滑らかになったような気がします。
薬師様は私を見て、ちょっと難しい顔をしました。
「ミラさんの誕生日まで、あと一ヶ月くらいでしたよね?」
「はい、オルさんから聞いたんですか?」
「そうですか…オルは他に何か言ってましたか?」
「いえ、特には…」
薬師様は黙り込んでしまいました。一体どうしたのでしょう。
「オルはまだ戻ってないですし…うーん…僕が言うのも…」
どうやら色々私の為に悩んでいるようです。
オルさんも過保護ですが、薬師様も違った意味で過保護というか何というか…。
「とりあえず、オルに手紙を書いてみます。専用の魔道具を使えば届くでしょう。ミラさんの誕生日までに帰るよう強く言わないとですからね!」
薬師様は鼻息荒く、手紙を書きに行きます。
そうか、いつもオルさんと二人きりだけど、今年は薬師様も祝ってくれるのかもしれません。
自然とにやける顔を押さえつつ、朝食の準備を始めるのでした。
おとうさん…おかあさん…
暗闇の中で泣いている子供。
泣きすぎて、まぶたが真っ赤に腫れています。
綺麗な白金の髪を揺らし、体を震わせて泣いています。
どうしたの?迷子なの?
問いかけたつもりが、声が出ません。
それでも通じたみたいで、こちらを向く子供。
ちがう…おとうさん…おかあさん…いないの…
いないの?
まっかなの…おとうさん…おかあさん…だっこしてくれたけど…まっかっか…
まっか?真っ赤?
気づくと子供は消えて、私だけが暗闇の中。
地面にへたり込むと、地面についた手が濡れます。
水たまり?
手のひらを見ると、私の手は赤く…血に濡れて…
「いやああああああああ!!」
叫んで目が覚めました。
大量にかいた汗で髪が張り付き不快です。とりあえず顔だけでも洗おうと洗面所へ向かいます。
冷たい水を何度も顔に当てます。
泣いている子供。
大量の血。
恐ろしいくらいに現実感のある夢でした。
本当に…夢なのでしょうか…
ひとしきり顔を洗うと、タオルで水気を取りながら鏡を見ます。
顔色の悪いせいか、真っ白な肌。
そして思わず、声にならない悲鳴を上げました。
私の茶色だった髪が、すっかり白金色になっていたのです。
ブクマが増えたり減ったりに一喜一憂。
風邪もひき、連休が残念なことに…
が、頑張ります…頑張ります…




