14、王都デート
王都は村で行う『収穫祭』かと思うほど人通りが多く、薬師様から「これが普通ですよ」と言われて、さらに驚きました。
何の催し物もない日なのに、一体どこから人が来るのでしょう。
市場は午前中しか開いてないとのことで、まずは朝市の見学です。
見たこともない果物や魚が並んでいるだけではなく、他の国からやって来た行商人の方々が様々な香辛料をで店に並べてます。
香辛料の味や効能は興味深く、興奮した私は薬師様に幼子のように質問攻めにしてしまいました。薬師様は呆れる事もなく、一つ一つ丁寧に教えてくださいます。
香辛料の中には薬として使えるものもあり、毎日の食事で自然と体調を整える『先人の知恵』の素晴らしさに感動したりしました。人ってすごいですね。
「ミラさん、これ美味しいんですよ」
薬師様が果物屋さんから赤い果物を一つ買うと、小さなナイフを取り出し手早く切り目を入れ、ひと口大に切り分けます。
「はい、どうぞ」
「へ?」
思わず変な声が出てしまいました。
笑顔の薬師様は、甘く滴る蜜を含んだ実の欠片を、なんと私の口元に持ってきます。
「ほら、ミラさんの手が汚れますから、このままどうぞ」
「え…えうぅ…」
恥ずかしすぎて、変な声が漏れる私。
これって、これって…
恋人同士とか、新婚さんとかでやる、噂のアレですか。
もしやあの「あーん」ですか?ですよね??
(もう!!何が何だかワケがわからないですーーー!!)
心で叫びを上げて、気合いで薬師様の手にある果物をパクリ!
勢いつきすぎて、薬師様の指に私の唇が触れてしまいます。
一瞬あわてましたが、口いっぱいに広がる甘い果実は一瞬で私の思考を奪い、豊潤な香りに勝手に顔がにやけてしまって…。
「こんな果物食べたの初めてです…美味しいです!」
「ふふ、良かったです。これはネクタと言う、東の地方では神様の食べ物だという言い伝えがあるくらい人気のある果物なんですよ」
薬師様は蜜に濡れた指を舐めながら、ニコニコ笑顔で説明する薬師様。
「あっ…!!」
「どうしましたミラさん?」
指…薬師様の指に…さっき私の唇が…私の…
「ミラさん?大丈夫ですか?顔が真っ赤に…」
ぷしゅーっと湯気が出そうなくらい、自分でも顔が赤くなっているのが分かります。
もう、いっぱいいっぱいです…
「と、とにかく、どこか休めるところに…!!」
珍しく慌てる薬師様。
ふわふわする私を連れ、市場から離れることにしました。
「すみません」と何度も謝りましたが、色気ダダ漏れの薬師様も悪いと思うのです。
市場から少し離れた喫茶店は、薬師様が王都にいることによく利用していたとのこと。
薬師様は懐かしそうに、私は興味津々で店に入ります。
木の素材を生かした内装は、まるで森の中にいるような気持ちになります。
オレンジ色のランプと、たくさん置いてある観葉植物が、暖かく居心地の良い空間にしているようです。
「すごく落ち着く所ですね」
「ミラさんに気に入ってもらえて良かったです。ここは森の力を強く感じるので、精霊のシロもお気に入りなんですよ」
そういえばシロさんを見てないなと思っていましたが、精霊にとって王都は居心地が悪いようで、今日は好きな所で散歩しているそうです。
自由ですね、シロさん…。
まぁ、眷属なので呼べばすぐ来るとのことなのですが。
「おや、久しぶりだね、マール」
「マスター。お久しぶりです」
不意に奥から声をかけられます。
カウンターから出てきた男性は、穏やかな雰囲気をまとった年配の方でした。
ミラさんは色々耐性が足りません。
レベル低いです。(恋愛の




