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森の薬師様と私  作者: もちだもちこ


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12/38

12、現状把握

ちょっと湿っぽい感じです。

後半視点が変わります。

「はぁ…さすがに今日は色々ありすぎて、頭が破裂しそうです…」


バフーンとベッドに倒れると、そのままゴロゴロしちゃいます。

清潔そうな布団には石鹸の香りがして、やっと人心地ついたような気がしました。

オルさんと薬師様は同じ部屋で、私は贅沢にも一人部屋です。

正直、心身ともに疲れ果てていたので、お二人には感謝です。


それにしても…。


オルさんの事は「もしかしたら…」と思っていましたが、まさか王国の騎士で、しかも総隊長だったとは。

兵士の隊長になると王国の騎士になれるって、王国史にありましたから…元とはいえ、偉い人だったんですね。そんな方が親代わりだったなんて…。

言葉遣いは乱暴でも物腰が優雅だったり、剣の腕が異常に強かったり、なんだか不思議だったんですよね。おかげで小さい頃からの謎が解けました。


それと薬師様。

天才と言われ、王国一の薬師と呼ばれ、何だか凄すぎて頭がついていきません…

精霊の力をつかったり、結界を壊すくらいの武器を持ってたり…

しかも…元騎士様とか!

確かに、後ろから抱きしめられた時「結構鍛えてらっしゃるなぁ」とか、腕や胸の筋肉を感じたり……って、私ったらハシタナイ!!今のは無しです!無しの方向で!!


ふぅ…少し落ち着きましょう。


そうです。王女様。

キツイ感じもしましたが、やはり凄く美人でした。

そして…私を憎むような目。

今まであんな風に人から見られたことがなかったし、あれほどの強い感情をぶつけられたこともなかった。

あれは、たぶん愛情。

どんな形であっても、王女様は薬師様を愛してらっしゃる。

オルさんも言ってました。王女様は薬師様にご執心だと。


胸にチクリと痛みが走ります。

一度ではなく、何度も。

チクリ、チクリ、胸を針に刺されるように。


ふと、顔に冷たさを感じました。


「どうして冷たいの?……涙?」



なぜでしょう。

私、泣いてます。



そうです。

私は平民で、小さな村の何の取り柄もない女の子で。

とても偉い薬師様のお世話係で。

そんなお方に仕えることが出来るだけで。

薬学をご教授頂けるだけで。

普通の人よりも恵まれてて幸せなんです。

何を期待していたのでしょう。

何を甘えているのでしょう。

泣いている自分が情けなくなってきます。



薬師様は優しい。

でも…

優しい薬師様が、優しすぎる薬師様が

なんだか悲しいです。

訳が分からないけど辛いです。



胸の痛みはさらに強くなり、涙は止まらず後から後から溢れてきます。

雫はそのままベッドシーツを濡らし、清潔な布団は私の嗚咽をも包み込んでくれたのでした。




===============================



「どうしたマール?」


「ミラ…泣いてる、泣いてる!」


身体中の血が沸る。彼女が泣いているなんて、僕には耐えられない!


「落ち着け!元に戻っているぞ!」


オルの声に我に返った。部屋にある小さな鏡を見ると、僕の目がアメジストのような紫色をしていた。


「……すまない」


「マール、冷静になれ。お前が怒ったところで今は何も変わらねぇ」


「分かっている」


いや、僕は分かっていなかった。薬師になってあの子の側にいる事が出来て、僕は浮かれていたんだ。

第二王女が持っていた魔道具、あれは人為的に作られたものだ。


「森の家近くに埋められてた魔道具、『ミラ』を転移させるように作られていた」


「何っ!?まさかあの事が!?」


「わからない。だが、あれほどの物を作る人物がいるという事は…」


「これは、探ってみるしかない…か。もう少し村人生活を堪能したかったんだけどな」


「頼む。オル」


オルはニヤリと笑って、気にすんなと手を振る。


「お前も、ミラのケアをしっかりしとけよ。分かってるんだろ?」


「いいのか?」


「何だ弱気になって、お前らしくねーな。これは『決まってた事』だろ?」


そうだ。彼女は…


「今から俺は出る。城でちょっくら叙任されてくるわ」


「軽いな」


出て行くオルを目だけで見送って、ドアが閉まるとため息が出た。

さて、明日は彼女にどうやって接しようか…。




ブクマが、ユニークが、とても嬉しいです。

ありがとうございます!

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