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クリスマスとプレゼントの日 前編

 12月の中頃の日曜日。ゆかりたち四人は駅前の複合商業施設にきていた。ここには、服から子供用のおもちゃ、ゲーム、本、音楽CD、飲食店などたくさんのお店が入っている。

 ここに来たのは他でもない。

 もうすぐ12月25日。

 そう、クリスマスプレゼントを買いにきたのだ。

 ここで二つのペアに別れて買い物をする。そのペアは、ゆかりとさあや、まなとちか、の二つだ。

 別れて買って、当日に何を買ったかサプライズにしよう。というさあやの提案でこうなった。


 

 ゆかりとさあやは洋服店を中心に歩き回っていた。

 お店では店員さんたちがお客さん一人一人に対応している。可愛らしい服を買いに来た同い年くらいの人もいれば、カップルで来ている人たちも、子供用の服を買いに来た親子もいる。

 二人は店の商品を似合うかどうかと触りながら、それぞれの送る相手が何を欲しがっているのか話し合うことにした。

「どうしよっかなぁ。まなって大人だから私とは着てる服が違うんだよなぁ」

 背とか胸とか。

 ゆかりは頭にまなの姿を思い浮かべる。

 いつも、黒とか紺色の服ばっかりたから、明るい色の服は似合うかな?この前のメイド服みたいなフリルとかどうかな?それは着ないかな。二人っきりの時は着てくれるかな。あれ可愛かったからなぁ。

 だんだん関係ない方に考えが向かっていくなか、さあやも悩んでいた。

「そういえば、ちかってどんな服が好きなんだろう」

 普段着ているのは、オレンジや黄色のTシャツやスカートだ。寒くなってきた最近は、その上に同じく暖色のコートやセーターを好んで着ている。

 それを買えばいいと思うのだが、なんか、おもしろくない。どうせなら、あっと驚くようなものを買いたいなぁ。

 と、さあやは思っていた。

 そこで二人が入ったのが、おしゃれな柄物の服が多く置かれたお店に入った。

 カラフルな洋服がたくさん置かれているこの店には正直、普段は入らないお店だが、せっかくなのでと入ってみた。

「これ、可愛いなぁ。ほら」

 ゆかりは白地に赤、青、黄色の三色の英語が書かれた長袖の洋服を手に取った。

 茶色のコートを脱ぎ、白色のニットの上にその服を合わせる。

「まなに合うかな?それ」

「どうだろう。なんか、カッコ良くないかな?」

 ゆかりはその洋服をみながら、頭の中でまなに着せてみる。

 左手を腰にあて、右手はあごの下に、頭を少し傾けて、ふふんと満足げな顔を浮かべたまながそこにいた。

 なんだろう。どんな格好でもいいんじゃないかなって。

「あ、これ良くない?」

 そういってさあやが持ってきたのは、服に絵の具をまき散らしたようなカラフルな服。

「どうだろなぁ…」

 うん。微妙。でも直接は言いません。言った方が良いこともあると思うけど。

 さあやは、いいと思うんだけどな、とつぶやきながら服を元あった所に戻しに行った。

 二人はその後もいくつか店を回ったものの、服は難しいと諦めて別の場所に向かった。

 そこで気付いた。別に同じ場所で買う必要はないと。

 まなにはまなの、ちかにはちかの欲しいであろうものを買えばいいと、そう思った二人はまず、まなの欲しいであろうものを探し始めた。

「本かな?この前、好きな小説家の新作が出たって嬉しそうに言ってたけど」

「もう買ってるんじゃない?」

「たぶん。なら、料理本かな。最近よく料理してるから」

「まなって最近料理し始めたんだろ?腕はどのくらいなの?」

「上手だよ。レシピ通りに作るから、読み間違いさえしてなければ完璧だと思う」

 まなは、時々分量をはかり間違えたりする。砂糖と塩を間違えたりはしないし、食べれなくないからいいけどね。

 ということで料理本を探すと比較的楽に見つかり、購入。

 これで、まなへのプレゼントは決まりました。


 続いてはちかへのプレゼントですが、さあやにはちかの欲しいものを思い出したようです。

「そういえば、ぬいぐるみが欲しいっていってたな」

「ぬいぐるみ?」

「うん。この前、まながゆかりにぬいぐるみプレゼントしてたじゃん?」

 私の誕生日の日に、まなが白猫のぬいぐるみをくれたのだ。

「あの日、帰ったあとちかが、あのぬいぐるみが可愛いって言っててな。よく考えたら、ちかってあんまりぬいぐるみ持ってないんだよ。だから、欲しいのかなって」

「そうなんだ。なら、ぬいぐるみにしよう」

 二人は今いるフロアの上の階にある、おもちゃなどか売っているフロアに来た。

 もうすぐクリスマスということもあり、子供も多く来ている。

 高校生二人はそこで、昔遊んでいたおもちゃをいじりながらぬいぐるみを探す。

「どんなのがいいかな」

 ゆかりはいくつか並んでいるぬいぐるみをみながら呟いた。

 さあやはペンギンのぬいぐるみを手にとっていろいろ弄っている。

「昔、ちかがよくペンギンの絵を描いてたんだよな」

 どうやら、ちかは昔水族館で見たペンギンが可愛かったようで、それをよく描いていたらしい。たしかにペンギンは可愛いと思う。小さい頃は、しゃがんで、手を下にまっすぐのばしてパタパタさせて、ペンギンの真似をしていた。

 懐かしいなぁとそのぬいぐるみを手に取ると、さあやは、よし、と決意したように言った。

「これ買う!」

 そう言ったさあやの手には、二つのペンギン。

「どうして二つ?」

「一個は私の分」

 そ、そう。

 ゆかりは笑って、近くの黒猫のぬいぐるみを手に取った。

 わたしもこれ買おうかな・・・。料理本だけよりはいいかな。

 二人は揃ってぬいぐるみを買い、待ち合わせのカフェへ向かった。



 少し時間を巻き戻して。

 まなとちかの二人は、雑貨・インテリアのお店に来ていた。

「ここで、手帳を買うんですか?」

「ええ、ゆかりは持ってないみたいだから、新年からでも使ってもらえたらと思ってね」

 ゆかりはマメに手帳に書き込みはしないのだが、手帳にはスケジュールの管理以外にも、日記として使うことも出来る。なので、交換日記のように使うこともできるだろう、とまなは思い手帳を買おうとしている。

「そうですか・・・。お姉ちゃんも手帳渡したらちゃんとスケジュール管理してくれるかな?」

「して・・・いなさそうね。ほとんど白紙のまま終わるんじゃないかしら」

「ですよね。あれでも宿題とかはちゃんとやるんですよ」

「夏休みの終わりに一気にやるとかではなくて?」

 クラスに必ずはいるであろう、宿題を休みの終わりまでやらず、焦って終わらせたり、間に合わないという人。

 さあやもそうなのだろうとまなは思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。

「気づいたら、終わらせているんです。いつやってるのかと聞いても、内緒♪と・・・」

 今度、ゆかりに聞いてもらうわ。とまなはちかに約束して、手帳を購入する。

 坦々とまなの買い物は終わる。それに、ちかが質問した。

「まなさんって、買い物には時間を掛けないんですか?」

「ええ。買いたいものを決めてから行くもの。それ以外はほとんど買わないから、時間は掛からないわ」

 ちかは、へぇー、と返す。

「ゆかりさんといてもですか?」

「ゆかりはいろんな物につられるから、その時は付いて行くわ」

「子供みたいですね。それで何か予定に無い物を買ったりは?」

 ちかは小さく笑いながら、そう聞いてきた。

 まなは、買わないわ、と呆れたように返す。

「だからこそ、しっかりこれに予定を書いて、その通りに買い物をしてもらうわ」

 とまなはバックに入っている手帳を指差して言う。

「変わらないと思いますけどね」

 笑うちかにまなは、同じ質問を返した。

「私は、欲しい物を買って、その後はぶらりと服とか見て・・・、いいのがあったら、来月に買ったりします」

 ちかはまだ中学生だ。自由に使えるお金にも限りがあるのだろう。

 そこで、まなは一つの提案をした。

「なら、ちかの買い物が終わったら、少し回り道してみましょうか。何かいいものがあったら、高いもの以外なら、買ってあげるわ」

 たまにはそういうのもいいだろう。ちかには、少し妹みたいなところを感じる。私は一人っ子だから、ちょっとそういうのに憧れる。

「おぉ~。まなさん、優しい。お姉ちゃんより優しい」

「姉妹ではしないものなの?」

「ん~。私たちはしないですね。誕生日くらいです、お姉ちゃんに何か買うのは」

「まぁ、いいわ。今日くらいは優しいお姉さんに甘えなさい」

 まなは腰に手を当て、ふふんと鼻を鳴らす。

「まなお姉さん!一生ついて行きます!」

 それは困るわね。と二人は笑いながら次の買い物場所へと向かった。


 ちかは、さあやにボールペンをプレゼントするそうです。

 といっても、普通のボールペンではなく、色を切り替え可能なボールペンだ。その中でも4色ボールペンを買おうと思っている。

 というのも、

「え?さあや、赤ペン持ってないの?」

「そうなんです。いつも私のとこに借りに来るんです。面倒なのでプレゼントします」

 だそうです。

 ノートに写すときに使わないのか・・・?

 黒板の内容をノートに写すとき、重要なことがいくつかある。その中でも、ノートに書くときには基本は黒で、重要な所には別の色を使う、と色を変えて書くようにするといい。その方が見やすく、復習しやすいノートが出来上がる。

「お姉ちゃん、復習とかしないですから」

 まなは驚いていた。

 塾に通っていないまなは、家に返った後にはノートを振り返り、今日勉強したことをまとめている。それくらいしなければ成績をキープすることは出来ない。

 今の、ある程度自由な生活が送れているのは、良い成績を収め、勉強をしっかりとしているから、親に一人暮らしを許されている。

 これくらいは、苦でもなんでもない。

「ちかはしてるわよね?」

「あ~。時々、してます」

「嘘はつかなくていいわよ・・・」

「してないです!はい!」

 やっぱりね。まぁ、ゆかりもしてないみたいだし、いいのだけれど。

「同じ学校を目指しているのなら、せめて受験勉強くらいしなさい。わたしやゆかりも、言ってくれれば手伝うわ」

 さあやはともかく、私たちはちゃんと受験勉強して、試験を受けている。高校の授業内容も、事前に知っておくと有利なことがいくつかある。

「助かります。お正月にでも、よろしくお願いします」

 

 二人は雑貨屋の中のペンが売っている場所に来ると、手帳のあった場所から少し移動しただけなのだが、ボールペンを探し始めた。

 すぐにお目当ての3色ボールペンをみつけると、それを買い二人は雑貨屋を出て、一つ上のフロアに向かった。

 そこはファッション関係のお店が並んだフロアだ。

 つまりゆかりたちが最初に訪れた場所、そこに来ていた。

「あ、これいいですね。大人な感じで」

 そう言い、ちかは白襟の黒いワンピースを手に取った。

 暖色系の多いちかにとって、こういう服はあまり縁がなかったのだ。

 似合うかな、と身体に合わせて鏡をみている。

「着てみたら?似合うと思うわ」

 まながそう言うと、ちかはそれを持って試着室に入った。

 少し待つと、そのワンピースを着て出てきた。

 セミロングの茶に近い黒髪を左右の耳の下あたりで結んだツインテールに、黒のワンピースが可愛らしく映えている。

 少し子供ってぽいところもあるが、それも良さだろう。

 どうですか?とちかが目線で聞いてきた。

「似合ってるわ。とても可愛らしいと思う」

 ちかは嬉しそうに、くるりとまわってみせた。

 ふわりと浮かんだ髪に、ひらりと舞った膝上のスカート。

 子供っぽさの中に大人な色っぽさが出て、普段の悪戯な笑顔に、小悪魔のような印象を受けた。

「いくら?多少高くても買ってあげるわ」

「いいんですか?7000円です!」

 うっ・・・。まぁ、良い服だし、それくらいはするわね。

「分かったわ。喜んで買わせてもらうわ」

「ありがとうごさいます!」

 一度、鏡で自分の格好を見てから、くるりと振り返った。

「ありがとう。まなお姉さん」

 いつもの笑みに、少しドキッとしてしまった。

「ええ。喜んでもらえたなら、嬉しいわ」

 ちかは更衣室のカーテンを閉めて着替え始めた。

 


 二人は会計を済ませてから店を出て、待ち合わせ場所へ向かった。

 待ち合わせ場所となっているカフェにはすでにゆかりたちがいて、飲みながら話をしていた。

「あ、まなにちかちゃん」

「お待たせしました」

「お待たせしました~。おや、お二人は何を飲んでるんですかな?」

「テンション高いな・・・ちか」

 ちかはニコニコとしている。服を買ってもらったのがよほど嬉しかったのだろう。

「私はカフェオレだよ。さあやはオレンジだったかな」

「相変わらずコーヒーの飲めないお姉ちゃんですね!」

「うぐ・・・。別にいいだろ。別にー・・・」

 最高の笑顔でちかはお姉ちゃんいじりを続ける。

「ちか。何を飲む?買ってくるわ」

「ありがとうごさいます。私、カフェオレで」

 ぺこりと礼をしてから、ちかは空いている席に座った。

「ちかちゃん、どうしたの?何か良いことあった?」 

「はい!まなさんに服を買ってもらったんです」

 ちかは、宝物を祖母に自慢する子供のように、買ってもらった服を袋ごと見せつけた。

「へぇ~。良かったね」

 ゆかりは、それを暖かく見つめる母親のような、

「なんで、ちかだけ・・・」

 さあやは、妬む姉のような感想を口にした。

 飲み物を両手に持ったまながテーブルに来て、さあやに突っ込んだ。

「子供じゃないんだから。自分で買えるでしょう」

 飲み物をテーブルに置いて、まなも席に座る。

「ありがとうごさいます、まなさん」

 改めて礼をしたちかにまなは微笑みかけ、ブラックコーヒーに口を付けた。

 

「よし。みんなプレゼントは買い終わったね」

 ゆかりが確認すると、みんなは頷いた。


 もうすぐクリスマス。

 最高の1日になるといいなぁ。

後編に続きます。

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