海と塩と姉妹の日
「海?」
「そうそう、本当は妹と母さんと行くつもりだったんだけど、母さんが急用でいけなくなって」
夏休み前、昼休みの教室の中。
ゆかりとまなを最初につなげてくれた友達、さあやは二人を遊びに誘っていた。
「二人で行くよりだれか誘おうって事になって」
「それで私たちを?いいの?」
あの日から一ヶ月程たち、教室でもよく話すようになったまなは、最初はギクシャクしてたけど、さあやが一番に仲良くなり、いろいろと配慮してくれたおかげで皆とも仲良くなれた。
まなも、前のひとりでいた頃と違い、少し明るくなったような気がします。
「もちろん!二人よりも、たくさんいたほうが楽しいからね。といってもあんまり増えすぎてもあれだから、ゆかりとまなの二人と、私と、妹のちかの四人だけのつもりだけどね」
さあやには中学3年生の妹がいます。名前はちかです。
ゆかりは、さあやの家に遊びに行ったときに会ったことがありました。
真面目で、姉思いないい子です。ちょっと、過ぎるところがありますが。
「そう、ならいこうかしら。ゆかりは?」
「もちろん行くよ。海かぁ~、ひさしぶりだなぁ~」
最近は行ってなかったので楽しみです。水着着れるかな。あ、まなと水着買いにいってもいいかも。
それから、日程や時間、お金について話して。
「うん。それじゃあ、そんな感じでよろしくね」
「うん、分かった」
「ええ、分かったわ」
そして、夏祭りがあったりして。
8月の、気温も高くなり、アイスが美味しくなって、いろいろな所でかき氷も売り始めたとある日。四人は電車で30分程行った所にある海に来ていた。
全員制服を着ていこうということになり、ゆかり、まな、さあやの三人は、ワイシャツに紺に青いラインの入ったスカートを着ている。さあやの妹ちかちゃんは、上が白、下が黒のセーラー服を着ている。ゆかりも中学生の頃はその制服を着ていたので、とても懐かしい気分になりました。
「海だー!」さあやと、
「海だ~!」ゆかりの二人は海にはしゃいでいる。
「元気ね…」
まなは暑さからかだるそうにしている。立っているだけで汗が出てくるくらいの暑さなのだ、仕方ない。
「元気ですね、元気すぎるくらいです」
ちかちゃんは、はしゃぐ姉に少し恥ずかしそうにしながらも、周りをきょろきょろと見回している。楽しみなのだろう。
四人は海のそばにある更衣室で征服を脱ぎ、下に着てきた水着姿になる。
ゆかりは白、まなは黒の色違いの水着だ。まなはそれにパレオを着けている。さあやはオレンジの水着を、ちかちゃんは、黄色の水着で、通称タンキニと呼ばれるものを着ている。
「ちかちゃんかわいい~」
「ゆかりさんもかわいいですよ。似合ってます」
ちかちゃんは目線をまなに移す。
パレオからのびる足は白く細い。でも、女性らしく魅力的な大きさでもちもちとしていそうな太ももに目線は誘導され、そこから上に移していく。腰やお腹、胸を通り、顔へ。見られているのが恥ずかしいのか、少し顔を紅くしたまなの顔をみたあと、視線は再び胸へ。本人は隠そうとしているようだが、体の線を引き締めるはずの黒のビキニが余計にその大きさを主張している。
「あまり、みないで・・・」
「まなさんも似合ってますよ。きれいで、大きくて、うらやましいです」
「そう、かしら」
まなは、ちらっとこちらをみた。
「うん。似合ってるよ、まな」
一緒に買いに行けて良かった。他にもいろいろ着せれたしね。ワンピース型のとか、面積の少ないのとか。
顔を紅くして恥ずかしがってる姿が一番かわいかったかな。
「よし、遊ぶぞー!急げ!ちかー」
「待って、お姉ちゃん。お二人も行きましょう」
「うん!いこう、まな」
「ええ・・・」
「ん?どうしたの?」
「いえ、大丈夫よ。行きましょう」
どうしたんだろう。どこかを見てたけど。
あれは。うん、そうだ。
あの姿は、間違えるわけがない。
「ゆかり、ごめんなさい。少し向こうを歩いてくるわ」
「わかった。大丈夫?体調悪い?」
「いえ、ごめんなさい」
「ううん、わかった。ここら辺にいるから」
砂浜は太陽の熱で熱く、ビーチサンダルの隙間に砂が入ってきてどこか歩くのが楽しくて、どんどん歩いていくとビーチの人混みの中、一人の少女を見つけた。
中学生のころ、私が好きだった少女。
まさか、こんなところで会えるなんて。
それもそうだ。この海はここらへんでも有名なビーチだ。学生も家族も多く訪れるから、いてもおかしくない。
ただ、あの頃と違うのは、その少女が数人の男女と一緒にいること。
彼女にも彼女のつながりがあり、彼女の道を歩いてる。それは私にどうこうできることじゃない。
それに、楽しそうだ。
すると、その少女がこちらに気づいたようだ。
驚いて逃げようと走るように歩いていくと、後ろから声をかけられた。
「まなちゃん?」
振り返ると、その少女がそこにいた。
「ひさしぶり・・・」
「久しぶり!中学以来だよね!」
それから少し彼女の話を聞いていた。
高校に進んだ彼女は、持ち前の明るさで多くの友達を作り、今、彼氏を含めた数人で遊びに来ているそうだ。
そんな彼女に私は聞いてみたくなった。
「ねぇ、女の子同士での恋ってどう思う?」
「え?いきなりだね」
驚いた様子の彼女。どうしてそんなことを聞いたのか?と聞かれても、気になったからとしか言えなかった。でも、
「別にいいんじゃない。私の友達にも女好きの女子いるし。レズってやつ?べたべたされると、ちょっとあれだけど、でもいやじゃないし」
「その人、普段からそうなの?」
「そうだよ。男に全然興味ないの。私には理解出来ないけどね。人それぞれってやつ?十人十色みたいな」
ゆかりとは話したけど、他の人の恋愛観とか、レズへの意見って聞いたこと無かったな。
だから、聞けて良かった。ちょっと、自身が出た気がした。
「ありがとう。聞けてよかった」
「そう?ならよかった。まなちゃん、いきなり元気なくなったからどうしたのかと思ってたから。元気そう?だね」
「ええ。それなりに楽しくやってるわ」
「なら良かった。あ、じゃあ私は行くね」
手を振って少女は行ってしまった。
私も戻ろう。
あの時は気付けなくてごめんね。
「え?」
振りかえってもその姿は見えなかったけど、
「いえ、私も。ありがとう」
「あ、戻ってきた」
おーいとゆかりはまなに向かって手を振る。
「お昼食べよう?」
さあやとちかちゃんの二人はすでに海のそばにある食事が出来る場所に行き、席を取ってくれている。ゆかりもまなをつれて二人が待つ席へ向かう。
「そういえば、どこに行ってたの?聞いてもいい?」
「少し歩いていただけよ。ただ、昔の友人がいたから話してたの」
「昔?中学の時?」
ええ、とまなは、友人に会い、向こうが複数人で来ていることを話した。質問に関しては話さなかった。
あまり、不安にさせたくなかったからだ。
「そうなんだ。あ、あそこ」
ゆかりとまなも席に座りお昼を食べ始める。
全員、できたての熱い焼きそばを食べました。
なかなか人が多いので、のんびりというわけにはいきませんでしたが、四人とも楽しんでました。
ゆかりとさあやの二人が浅瀬で水のかけあいっこをしているとき、まなとちかの二人はお店の中、長いテーブルに隣同士で座ってかき氷を食べながら話をしています。
「まなさんって、ゆかりさんのことが好きなんですよね?」
「んぐっ!げほっげほっ!」
「あ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
あまりに突然でストレートな物言いにまなは、思わず咳き込んでしまった。
「大丈夫よ。ど、どういうことかしら?」
「えーと。まなさん、ずーっとゆかりさんのこと見てるから、好きなのかなって」
「そんなにみてるかしら」
「はい。そりゃあ・・・もう・・・、恋する乙女の様に、見つめてました」
ちかは、頬に手を当て、身を捩る様にくねくねと体を動かす。
そんなになのか。たしかに最近よく見るようになった気がする。それは、そう。
「もうすぐ、ゆかりの誕生日なのよ。なにをあげたら喜ぶかしらと」
うそではない。一つの理由だ。
「そうなんですね。でも、それだけじゃないような・・・」
ちかはまなの顔をのぞき込んでくる。
「うん。やっぱり、それだけじゃ納得できないです。恋のような、愛のような、そんな感じがするんですが。あ、いや、プライベートもありますし、しつこく聞くのはいけませんね。すいません」
鋭い子なのだろう。まながゆかりを見ている目から、そこまで読みとってしまうのだから。
まなは観念して、話し始めた。
「ええ、私はゆかりのことが好きよ」
周りには聞こえないように小さな声で、隣のちかに話しかける。ちかも体ごとこちらに近づき話を聞く。
これまでにあったこと、相当大雑把に話した。
卵焼きのこと、親子丼を作ったこと、デートしたこと。
それ以外にも、学校でのことや休日に遊びに行ったことなど。
「へぇ、けっこうガチですね。ふむふむ」
ちかは手を顎に当てて、考え事をしている。
話してよかっただろうか。ゆかりに許可もとらずに。
「どうかしら、こういうの」
ちかはまなの方をみてニコッと笑うと、一度かき氷を口に入れてから、話し始めた。
「いいと思いますよ。私も・・・」
そこで一度切ると、まなのほうを見た。
「私も、お姉ちゃんのこと好きですから」
「そうなの?それって」
「どうですかね。まなさんたちみたいなきれいなものじゃないと思います」
きれい。私たちが?
「はい。そばにいたいって、不安ながらも寄り添う感じ。いいと思います」
間違ってはいないと思う。私は、不安でも、それでもゆかりのそばにいたいって思ってる。ゆかりもきっと、そう思ってくれているはず。
それがきれいなのかはわからないけど。
「ちかのは違うの?」
「私のは、そう。欲望です」
にやっと笑うと、くふふと笑う。
なんだろう。いやな予感。
「お姉ちゃんはけっこう純粋ですからね。あれをどう染めてあげるか・・・。くふふ」
「そ、そう。まぁ、人それぞれ愛のかたちはあるから。それはそれでいいんじゃないかしら」
何をしているのだろう、気になる・・・。
「まぁ、私がお二人の関係に気づいたのはお姉ちゃんが家で、ゆかりさんが最近まなさん話したり遊びに行くようになったというのを聞いて、勝手にもしかしたらと妄想したら、今日お二人の様子をみて確信できた、というだけなんですけどね」
「妄想・・・。そう、そこまでわかるのね。すごいと思うわ」
「逆にお姉ちゃんについてはよくわからないんですよね。だから、面白いっていうか、興味があるっていうか」
二人は食べ終わったかき氷を横に片付け、ジュースを飲み始めると、
「いやー、つかれたー。あついー」
「はい、お姉ちゃん。オレンジジュース」
ちかは目の前に座った姉にジュースを手渡す。
「ふぅ~、冷たくておいしー」
そんな姉を眺めているちかの目はどこか、暖かいというか、優しい目というか。私も、こんなふうにゆかりのことをみていたのだろうか。
そうして、まなの前に座ったゆかりのほうに視線を移すと、ゆかりは自分の飲み物を飲んでいた。
ごくっごくっ、と飲むたびにのどが動いて、それをみているとなんだか・・・って、私は何を!?
これだから、ちかに気持ちがバレるのか。
横をみると、ちかはこちらを見てニヤニヤしている。
「あれ?まな、どうして顔が紅いの?気分悪い?」
「いえ、大丈夫よ!大丈夫だから」
「ん?そう、ならいいけど」
だめだな。妙に意識してしまう。いや、もともとそうなのか?だって、ちかにはわかってたわけで。
そんなちかは、ジュースを飲み過ぎている姉からジュースを取り戻すと、ゆかりの方を向いた。
「そういえば、ゆかりさん。誕生日っていつですか?」
ちか!?
「誕生日?」
「はい。さっきまなさんには聞いたので、ゆかりさんは何時なのかと」
話した記憶はないけど。
なんだろうと交互に顔をみると、
「私は8月24日だよ。そういえばもうすぐだ」
「ゆかりさんなにか欲しい物はあります?私、今日のお礼がしたいです」
「お礼?むしろお礼言うのはこっちのほうだよ」
「いえいえ、私も楽しかったので。それに、年上の知り合いが出来たのが嬉しかったんです。だから、誕生日にプレゼントを渡してグッと距離を、縮めたいのです」
「そう?なら・・・」
ゆかりは天井の方を、見て考え事をしている。
そういえば、私が誕生日プレゼント何にしようかと言ったのを気にして?
「ぬいぐるみ、かな」
「ぬいぐるみ?」
さあやは、どうやら自分のジュースを買ってきてたようだ。全然気がつかなかった。
さあやがそう質問すると、ゆかりは少し恥ずかしそうに答えた。
「うん。この前、まなとゲームセンターに行ったときにクレーンゲームの景品にあった猫のぬいぐるみが可愛くてね。それじゃなくていいんだけど、何かのぬいぐるみがほしくて」
「なるほど、ぬいぐるみですね」
ちかはこちらをみて、ウインクをした。
なるほど。それを買えばいいと、そういうことか。
でも、それじゃあちかはどうするのだろうか?
一緒に買いに行くか?そうすれば、
「あ、でも、私今月のお小遣い使い切っちゃったんですよね~」
「え!?いつも貯金してるちかが?」
「お姉ちゃんは黙ってて!」
ちかが睨むとさあやは何も言わずジュースを飲みだした。
「そうなの?なら無理しなくていいよ。ありがとう、ちかちゃん。気持ちだけでうれしいよ」
「すいません。でも、手作りのクッキーとか用意しますね」
ちか、すごい子ね。そんな方法で聞き出すのか。
ぬいぐるみ、猫のぬいぐるみか。
その後少し海で遊び、疲れた四人は着替えて電車で帰りました。
疲れたのかゆかりは電車の中で眠っていた。まなの肩に寄りかかって。
今日、ずっとはしゃいでいたから疲れたのね。ふふ、子供みたい。
「まなさん。誕生日いつですか?」
そういえば、私には聞いてなかったね。
「1月6日よ。年明けだから、無理に合わせなくていいわ」
「でも、プレゼントは欲しいんですね?」
「ゆかりにはあげて、私にはくれないの?」
「まなさんって、以外と子供っぽいんですね」
ふふふとちかは笑っている。
そういえば。聞きたかったことがあるんだった。
まなは、ゆかりとさあやが眠っていることを確認してから質問した。
「ねぇ、ちかってさあやに何してるの?」
「何って、ナニですよ」
「例えば?」
「洗濯物で・・・」
「いえ!やっぱりいい。大丈夫よ」
「なんだ。面白いのに」
また、ちかはくふふと笑っている。
悪戯好きな子は難しいわ。そんな子でも、姉が何を考えてるのかわからないのね。
「不安じゃない?さあやは・・・」
「別に不安じゃないですよ。私が勝手に想ってるだけですから」
「片思い?それじゃあ」
「いいんです。お二人はそれでいいと思います。うらやましい限りです。相思相愛って」
「なら、ちかだって大丈夫よ。そこまで想ってるなら」
「そうですかね?」
「ええ。ちゃんとつたえなきゃだめよ」
「ふふ、強いですね。まなさんは」
その横顔はとても複雑で。
こんなこと、言うべきじゃなかったのかしら。
「でも、ありがとうごさいます。勇気はでました」
ほんとに、心でも読めるんじゃないかしら。
「それじゃあ、ゆかり、まな、また今度ね」
「お二人とも、また、誕生日のときにでも会いましょう」
「うん。今日はありがとね、ちかちゃんも」
「楽しかったわ。また行きましょうね」
すると、皆がまなの方を見ている。
「あれ、何かしら?」
「まなさんの笑顔、いいですね」
「まな、最初だるそうだったのに、随分楽しんでたな」
「ちか、さあやも」
何を言ってるのよ。別にいいでしょう、楽しかったのは本当なんだから。
二人はそのまま、バスで家に帰っていった。
ゆかりとまなも、歩いて帰った。
「まな、今日楽しそうだったね」
「え?あなたも?私は・・・」
なんだか恥ずかしくて。口には出しにくかったけど。
いや、言うべきね、正直に。せっかくつき合えたのだから。
「私は、ゆかりといっしょにいられればそれだけで楽しいわ」
まなは、顔を紅くしてゆかりからは目をそらし、まっすぐ前をみて歩いている。
「うん。私もまなといるといつでも楽しいよ」
二人は見つめ合う。そして、歩き出す。
ここ、道の真ん中だ。
8月24日。まなの家。
「おめでとうーゆかりー」
「ありがとう、さあや」
「おめでとうごさいます。はい、ゆかりさん」
「ちかちゃんもありがとう。嬉しい」
ゆかりの誕生日会はまなの家で小さく行われた。
実家のほうでも誕生日会はあるそうで、お菓子とジュースを飲みながらのかるいものだ。
「ゆかり、誕生日おめでとう。これ」
「ありがとう、まな。これは?」
「ぬいぐるみ。欲しいっていってたから」
小さな白猫のぬいぐるみ。ゆかりはそれを大事そうに抱えている。
「ありがとう、嬉しい。でも、大丈夫?これ」
「大丈夫よ、私物だから」
もともと、まなが小さいときに買って大事にしてきたものだ。
「え、まなさんそれは」
「だ、だめだよ、まな。これはまながもってなきゃ」
ゆかりはそのぬいぐるみをまなに渡そうとすると、まなは首をふりゆかりの方へ返した。
「いいのよ。受け取って欲しいの、ゆかりに」
その白猫の名前はアマンテ。スペイン語で・・・。
「そう、わかった。せっかくのプレゼントだし、貰うね。ありがとう。まな」
ゆかりはぬいぐるみごとまなに抱きついた。
「ゆかり!ちょっと」
「あー、まな。私たちのことはあんまり気にせずに」
さあやにまで気をつかわせちゃって。
「そうそう。まなさんも、ゆかりさんも、もっと素直になるべきですよ」
ちかにも。
でも、
「ゆかり」
目を閉じて、顔を、唇を出す。
「うん。まな」
もう、周りのことは見えなかった。二人だけの空間のなか、ゆかりとまなは何度もキスを。
「やりすぎだ!」
さあやにつっこまれるまで続けた。
それから、誕生日会は終始笑顔に包まれたまま行われた。
みんなでお菓子を食べて、思い出話しをして、夏休みの宿題について話して。
そして、帰り。
さあやとちかの二人は、二人をおいて先に家を出た。
「あいつらすごいな。なんというか、情熱的というか」
「してみたい?」
「え?き、キスをか?」
「そう。お姉ちゃんがしたいっていうなら・・・」
ちかは頬を紅くしち唇に人差し指を当てる。
「いいよ・・・」
「いや、さすがに姉妹ではできないだろ」
両手を左右に振り否定する姉。
そんなことないよ。と、
「っん!」
お姉ちゃんのほうが背が高いので、背伸びをして、肩に手を置いて思いっきり顔を上に向けてキスをする。
お姉ちゃんの唇は熱くて、柔らかくて、ちょっぴりお菓子の塩っぽい味がする。
キスをするのは今回が初めてじゃない。小さいときにもしたことがある。あの時はただの親の真似事だったけど。
「ちか!な、なにを」
「すいません。あの二人のを見てたらしたくなっちゃって」
「私じゃなくて、ちかがしたかったんじゃないか」
お姉ちゃんはあの二人よりも、私よりも顔を紅くしてはずかしがってる。
くふふ、たのしいっ!
こんな感じでも、続けられるのならそれでいい。
私は幸せだし、お姉ちゃんも。
「まぁ、私も、昔を思い出すようで・・・、悪くは、なかったと思うけど」
ちょっと素直じゃないけど、今はお姉ちゃんの気持ちがわかった気がする。
またしてあげよう。
今度は、あの二人のように、甘い卵焼きでも食べた後に。
柔らかい、ふわふわのキスを。




