episode2
そのトンネルの先には空き地。
所詮は夢だったんだなと思った。
その時、どこからか歌が聞こえた。
悲しくも美しい旋律。
ふとその歌が止む。
青年「おや、これはこれは可愛いお嬢さん」
彩音「あ…」
そこには青年がいた。その青年はまるで綺麗な人形のような…
おそろしいほどに綺麗で、整った顔をしていた。
そう、まさに眉目秀麗を形にしたような。
青年「お嬢さん…?」
彩音「は、はい!」
思わず見とれてしまった。
絹糸のような金の髪、宝石のような碧眼。
青年「はじめまして。俺は湊。君は?」
彩音「彩音です…」
湊「君は向こう側から来たのかな?」
彩音「はい…あの、ここは?」
湊「うーん…君達が異世界、だなんて呼んでる所かな」
彩音「異世界…」
私の望む非日常。それが今まさに目の前にある。
湊「さあ、行こうか」
彩音「どこへ-…」
湊「異世界」
彼は私の心を読んだように答えた。
彩音「ちょっ…!」
湊「…違うの?」
彩音「そういうわけじゃなくて…」
湊「じゃあ、どういう事?」
彩音「急になんて…」
湊「誰もが君を歓迎するよ。外からくる人間は稀少だからね」
彩音「…」
湊「行くよ。」
彼は手を差し出した。
私はその手を取った。
湊「ようこそ、異世界へ。歓迎するよ彩音ちゃん」
やっと私の望んだ世界だ。
彼は何か呪文のような言葉を唱えた。
するとぽっかりと穴が現れた。
彩音「これが異世界への入口…」
湊「そう。いい?絶対に手を離さないで。」
彩音「はい!」
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その穴の中は大きな迷路となっていた。
螺旋階段を降りていく。
彩音「うわぁ…!」
湊「驚いた?」
彩音「はい!」
彩音「あの、ここって異世界への入口なんですよね?」
湊「そうだよ。それがどうかしたの?」
彩音「異世界への入口なのに人が居ませんね…」
湊「だってあっちに行くことは出来ないから」
彩音「え?でも湊さんはなぜ…」
湊「俺だけの特権なんだよ。」
彩音「湊さんだけの特権…」
湊「だって俺、゛案内人゛だからね。」
案内人?
湊「でも、もう一人いるけどね」
彩音「案内人ってどういう役割ですか?」
私達の世界での案内人とは意味が違いそう…
湊「…君は知る必要ないよ。」
彩音「っ!?」
急に私の手を握る手に力が入った。
彩音「湊さん!?」
湊「……」
何も答えてくれない。
なんだか…怖い。
彩音「やっぱり私戻ります!!」
なんだかいけない世界に踏み込んだような気がした。
早く、ここから出てかなきゃ!
彩音「っ…!」
いくら力を込めて止めようとしても、彼に引きずられる。
その歩みは止まらない。
彩音「湊さんっ!!!離して!」
湊「この大迷路の中、脱出できると思うの?」
彩音「あっ…」
そうだ、出れない。どっちにしろ進み過ぎた。
あの入口はもうふさがってる。
湊「君を、戻すわけにはいかない。」