表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

交差

母親が亡くり、父親に捨てられた後は確かに大変だった。何も持たないまま、僅か十歳にして、文字通り独りになってしまったのだから。


けれども、精神的には重しが無くなって、楽になったような気がした。


数日間ふらふらと宛どなく歩いていた。


どうしようか、と思案にくれていたユーリを拾ってくれたのは年を取った無口な女性だった。

ユーリはその人から、最低限の生きる術を教わった。しかしその人も、そう時をおかずに亡くなってしまった。


それからユーリはずっと独りだった。


シンを連れてくるまでは。


ユーリは元々誰かと一緒に生活する、ということは一切考えていなかった。

女性が亡くなった後は特に。


それに、ユーリは自分を拾ってくれた人に、何もしてあげられなかった。

独りが寂しかった、ということだけじゃなくて、ユーリも自分を助けてくれた人と同じようにすることで、恩返しの意味もあったのかもしれない。


だけど結果的にはユーリの方が、シンの存在に大分助けられたように思う。


特に成長する以前の子供の頃、そのふさふさの耳と尻尾にはとても癒やされた。

膝の上に抱き上げて、とにかく日々もふもふを堪能していた。

抱き上げられなくなった後も、触らない日はなかった。


それでも日々思っていた。

この温もりは、今だけ。

シンが成人したらまた独りに戻るのだ、と。

そして、それ以降はずっと独りでいると。


そう決心していた。


確かに十八歳という年齢は適齢期なのだろう。

だけどユーリは自分が誰かと夫婦になることだって、一切考えていなかった。

だからこそ、シンに言われた言葉は全くの想定外で、理解ができなかったのだ。







「適齢期なんて……。なんで、関係ないよ。ただ、成人したら一人立ちするのが……」


それだけ、じゃないけれど。


「僕は成人した後も、ユーリとずっと一緒にいる。そう、思っていたけど?」


嬉しい。

その言葉を聞いて、率直にそう思った。

声音には非難の色がにじんでいたけれども。


それでも、その言葉に甘えることはしてはいけない。

自分なんかの傍にずっと居たら、シンはこの先未来永劫幸せになれない。

それどころか不幸になってしまう。

ユーリはその思いを変えることはできなかった。


だから、なんとしてでも説得しなければならない。自分から離れることを。






諸々併発しています。

皆様も心と身体をどうかご自愛くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ