2・ついてない朝
大和にイラッと来ても知りませんよ〜(苦笑)
間違いなく体に悪い朝食を食べ終わった俺は、『不機嫌ですオーラ』を全身から発している妹を避ける様にして台所に食器を持って行く。
ホントにチクチクするような視線を背中に受けながらすごすごと歩く俺は情けないの一言に尽きるだろう。
威厳ねーな……俺…。
ま、いいさ。追々お兄様の魅力を分からせてやるさ…きっと、いつか。
母親から弁当と食器を交換し、台所から戻ってきた俺は二階の自室へと戻ろうとリビングを出た。
決して長いとは言えない廊下を歩き玄関の近くにある階段へと歩を進める。
さっさと着替えて学校行こ……今日はついてない……。何か嫌な事が起こりそうな気がする…。
そう心の中で呟いて階段に足をかけようとした時、何かに裾を引っ張られた。
「なっ…!」
気を抜いていた俺はバランスを失い、そのままのけぞる様にして倒れて行く。いきなりか!いきなりなのか!
くそっ…………。
必死に手摺に手を伸ばすが、その手は空を虚しく掴んだだけだった。
このままじゃ後頭部と背中がヤベーっ………こんな時こそ、俺の力を発揮!
俺は持ち前の運動神経を十二分に活かし、体をひねって床に両手をつける形で受け身を取る。落ちる衝撃にそなえ、軽く力を抜くことも忘れない。
果たして直撃を免れた俺は安堵の溜め息を付き、自分が目を閉じていた事に気がついた。
ま、生理反応みたいなもんだ。恥ずかしいことじゃない。
溜め息まじりに目を開けた俺は一瞬で瞼を元に戻す。
なぜなら見たくないもの兼認めたくないものが脳に送られて展開したからだ。
だが、現実は歪めようがなく、認めたくなくてもそれは逃げることにしかならない。
俺は逃げるのが嫌いなたちの人間だから、目を開けた。
もう、わかるヤツはわかるだろう。
お約束だ。俺は妹を押し倒していました。
「…………………」
「…………………」
無言で見つめ合う二人の間に形容し難い雰囲気が充満して行く。
体験してみてわかる、これは動けない。つか、動かない。
「………………なんだ」
なぜ裾を引っ張ったんだ?と明確に言わない俺の問いを妹は理解したらしく、小さく告げた。
「……兄さんに……謝ろうと」
「何を……?」
「醤油………ごめん。やりすぎた」
そう言うと頬を赤く染め、ギュッと目を閉じる。
これ何てゲーム?
…………妹にグッと来たのは久しぶりだ。念の為に言っておくが、俺にロリコン兼シスコンの気はない。
俺は気にするなと告げると、プルプル震えていた腕に力を入れて立ち上がる。
ポゥ〜としていた妹を立ち上がらせ、乱れたパジャマを整えてやる。
よし、俺は着替えるからな。
コクと頷いたのを確認した俺は床に落ちていた弁当を拾い、自室に戻る。
ゆっくりとドアを開け、背中で閉めた俺は弁当を空っぽの鞄に放り込んで脱力した。
くそ………朝からなんてデンジャーな……。
急いで着替えた俺は挨拶もそこそこに家を飛び出した。
これ以上変な事が起きませんように……。
羨まし……ゲフン……感想は随時歓迎致します〜(笑)