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第二話 裏返しのレッテル

「あいつ、また何もないところに向かって話してるぞ」

「マジで不気味だよな」


 帰りのホームルームが終わった後、クラスメイトたちがヒソヒソと陰で話しているのが聞こえた。というか僕に聞かれている時点で、ヒソヒソ話というよりか、むしろ直接僕に悪口を言っているようなものだった。


 彼らは自分たちがどれだけ大きな声で話しているのか理解していないのか。


 そんなに大きな声で話して、その会話を僕が聞こえていないとでも思っているのか。


 それとも、僕に聞かれたところで、どうでもいいと思っているのか。

 

 僕が不快な気持ちになったり、傷ついたりすることを想像できないのか。


 今僕が考えたこと全て彼らにとって、取るに足らないことなのだろう。

 

 さっき僕の陰口を言っていた奴らは、肩を組み合って、今日は部活サボんなよ?とかなんとかふざけ合って教室から出ていった。静かになった教室には、校庭でランニングをしている部活生たちの掛け声が聞こえてくる。外を見るとサッカー部の放ったロングキックが夕日を掠めていた。


「ねえ、ライカ。どうしてみんな君のことを悪くいうか知ってる?」


ある日の下校中、僕の横を漂うユイが不意に訊いてきた。


「僕が不気味なやつだからだろ?僕みたいなみんなと違う人間をあいつらは受け入れられないんだよ」


そういうとユイが呆れた顔をして僕の視界を遮った。


「それは違うよ。てか何その不貞腐れた言い方(笑)」


「じゃあ何が原因だっていうんだよ」


「それはね、ライカ。君が——」



僕が——他者と向き合おうとしなかったからだ。



 あいつらは僕に『不気味なやつ』とレッテルを貼った。だけど、僕はそれに対して何か怒ったり、訂正させたりしなかった。


 ただ無視を続けた。

 

 あいつらは僕のことを悪くいう、僕の敵だ、悪いやつだと決めつけて。

 

 他人にレッテルを貼っていたのは僕の方じゃないか。


 そのことに気づいた時、僕はとても恥ずかしかった。僕は気づかない間に、自分が絶対になりたくない人種になっていたのだ。


 自分で勝手にたくさん敵を作って、人と関わらず、一人で過ごした中学三年間。


 本当に無駄な時間だった。


 もうあんな日々を過ごしたくはない。


 今日から、僕は、変わるんだ。

 

 僕はもう一度身なりを確認して、玄関の扉に手をかけた。



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