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世界は静かに壊れている【ショートショート集・短編集】  作者: 御影のたぬき


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【コメディ冒険譚】聖なるフンコロガシ

 俺の名前は、フンゾウ。フンコロガシだ。体長は三センチ。黒い甲羅を持ち、六本の足で歩く。仕事は、フンを転がすことだ。毎日、フンを探して、転がして、穴に埋める。それが、俺の人生だ。


 その日も、いつものようにフンを探していた。サバンナの乾いた大地を歩き、動物のフンを探す。すると、大きなフンを見つけた。象のフンだ。新鮮で、柔らかい。完璧だ。


 俺は、フンに近づいた。そして、後ろ足でフンを掴んだ。転がし始める。フンは、重かった。しかし、俺は諦めない。一歩一歩、転がしていく。


 しばらく転がしていると、フンが光り始めた。最初は、微かな光だった。しかし、徐々に強くなっていった。そして、まばゆい光になった。


「何だ、これは」


 俺は、驚いて立ち止まった。フンが、光っている。こんなことは、初めてだ。


 すると、フンの中から声が聞こえた。


「ついに、見つけた」


 俺は、さらに驚いた。フンが、喋っている。


「お前、誰だ」

「私は、フンの精霊だ」

「フンの精霊?」

「そうだ。このフンは、特殊な物質でできている。宇宙の創造エネルギーが凝縮されたものだ」

「宇宙の創造エネルギー?」

「そうだ。そして、お前は、そのフンを転がした最初のフンコロガシだ」

「だから、何だ」

「お前は、選ばれし者だ。このフンを守る使命を与えられた」

「俺が?」

「そうだ。これから、多くの者がこのフンを奪おうとするだろう。お前は、それを守らなければならない」


 俺は、混乱した。フンを守る?俺は、ただのフンコロガシだ。そんな大それたことはできない。


「待ってくれ。俺は、ただフンを転がしたいだけだ」

「しかし、運命は決まった。お前は、選ばれた」


 その時、空が暗くなった。雲が集まり、雷が鳴った。そして、空から巨大な手が降りてきた。それは、人間の手だった。いや、人間よりも大きい。巨人の手だ。


 巨人の手が、フンを掴もうとした。俺は、必死でフンにしがみついた。


「離せ!これは、俺のフンだ!」


 俺は、叫んだ。しかし、巨人の手は強かった。フンを持ち上げた。俺も、一緒に持ち上げられた。


 そして、俺たちは空に飛ばされた。風が、激しく吹いた。俺は、フンにしがみついた。離したら、落ちる。


 しばらくして、俺たちは別の場所に着陸した。そこは、もうサバンナではなかった。雪が降っていた。寒かった。


「ここは、どこだ」


 俺は、周りを見回した。すると、一人の男が近づいてきた。いや、男ではない。ペンギンだ。しかし、普通のペンギンではない。二足歩行で、服を着ている。


「やあ、フンコロガシ。よくぞ、ここまで来た」


 ペンギンが言った。俺は、驚いた。


「お前、誰だ」

「私は、時空管理局のエージェント、ペンペンだ」

「時空管理局?」

「そうだ。時間と空間を管理する組織だ」

「何の用だ」

「お前が持っているフンは、非常に危険だ。時空を歪める力がある」

「時空を歪める?」

「そうだ。もし、悪用されれば、宇宙が崩壊する」

「それで、どうしろと」

「そのフンを、我々に渡してくれ」

「嫌だ。これは、俺のフンだ」


 俺は、拒否した。ペンペンは、困った顔をした。


「困ったな。では、交渉しよう」

「交渉?」

「そうだ。そのフンを渡してくれたら、お前に報酬を与える」

「報酬?」

「そうだ。何でも好きなものを」


 俺は、考えた。何でも好きなもの。それは、魅力的だ。しかし、このフンも貴重だ。


「考えさせてくれ」

「わかった。一日だけ待つ」


 ペンペンは、去っていった。俺は、フンを転がして、安全な場所に隠した。そして、考えた。どうすればいい。


 その夜、俺は眠れなかった。フンのことが、頭から離れない。そして、朝になった。


 朝になると、また新しい訪問者が来た。今度は、ロボットだった。金属の体を持ち、赤い目が光っている。


「フンコロガシ、そのフンを渡せ」


 ロボットが言った。俺は、拒否した。


「嫌だ」

「渡さないと、破壊する」


 ロボットは、腕を振り上げた。俺は、逃げた。フンを転がしながら、必死で逃げた。


 ロボットは、追いかけてきた。速かった。俺は、もうダメだと思った。その時、ペンペンが現れた。


「待て、ロボット!」


 ペンペンは、ロボットの前に立ちはだかった。


「お前は、未来から来たのか」

「そうだ。このフンは、未来で必要だ」

「しかし、それは許されない。時空の法則に反する」

「関係ない。フンを渡せ」


 ロボットとペンペンが、戦い始めた。俺は、その隙に逃げた。フンを転がして、さらに遠くへ。


 しかし、逃げても逃げても、追っ手が現れた。宇宙人、悪魔、魔法使い、騎士、忍者。みんな、フンを狙っていた。


 俺は、必死で逃げ続けた。フンを守りながら。そして、ある日、俺は不思議な場所に辿り着いた。そこは、時空の裂け目だった。


 裂け目の中に入ると、そこは別の世界だった。過去の世界だ。恐竜がいた。巨大なティラノサウルスが、俺を見下ろした。


「小さな虫よ、何を持っている」


 ティラノサウルスが言った。俺は、答えた。


「フンだ」

「フン?それは、美味いのか」

「食べるな。これは、特別なフンだ」

「特別?」

「そうだ。宇宙の創造エネルギーが凝縮されている」

「よくわからないが、面白そうだ」


 ティラノサウルスは、俺を食べようとした。しかし、その時、隕石が降ってきた。大きな隕石だ。ティラノサウルスは、逃げた。俺も、逃げた。


 隕石が地面に激突した。大爆発が起きた。恐竜たちが、絶滅し始めた。俺は、時空の裂け目に飛び込んだ。そして、また別の世界に行った。


 次は、中世の世界だった。城があり、騎士がいた。俺は、城の前でフンを転がしていた。すると、王様が現れた。


「おお、フンコロガシよ。そなたが持っているのは、伝説のフンか」


 王様が言った。俺は、驚いた。


「伝説のフン?」

「そうだ。古い予言に書かれている。聖なるフンコロガシが、世界を救うと」

「俺が、世界を救う?」

「そうだ。そのフンの力で、魔王を倒すのだ」

「魔王?」

「そうだ。魔王が、この世界を脅かしている。そなたの力が必要だ」


 俺は、困った。魔王を倒す?俺は、ただのフンコロガシだ。


 しかし、断る間もなく、魔王の軍勢が襲ってきた。巨大なドラゴン、オーク、ゴブリン。みんな、俺を狙っている。


 俺は、フンを転がして逃げた。しかし、魔王の軍勢は強かった。俺は、追い詰められた。


 その時、フンが再び光った。そして、フンの中から巨大なエネルギーが放出された。魔王の軍勢が、吹き飛ばされた。


「すごい」


 俺は、呟いた。フンの力は、本物だ。


 しかし、その力を使うと、フンが少しずつ小さくなっていった。エネルギーを消費しているのだ。このままでは、フンが消えてしまう。


 俺は、決断した。もう、フンを使わない。フンを守る。それが、俺の使命だ。


 俺は、時空の裂け目に飛び込んだ。そして、未来の世界に行った。そこは、高度に発達した世界だった。空飛ぶ車、巨大なビル、ロボット。


 しかし、その世界も、フンを狙っていた。科学者たちが、俺を捕まえようとした。俺は、逃げ続けた。


 そして、ついに俺は、時空の果てに辿り着いた。そこは、何もない場所だった。ただ、白い光が満ちている。


 光の中から、声が聞こえた。


「よくぞ、ここまで来た、フンコロガシ」


 俺は、答えた。


「お前は、誰だ」

「私は、宇宙の創造主だ」

「創造主?」

「そうだ。そのフンは、私が作った」

「なぜ、俺に」

「お前を試すためだ」

「試す?」

「そうだ。お前が、フンを守り通せるか。欲望に負けないか。それを試した」

「それで、結果は」

「合格だ。お前は、フンを守り通した。欲望に負けなかった。素晴らしい」


 創造主は、俺を褒めた。そして、言った。


「お前に、褒美を与えよう」

「褒美?」

「そうだ。何でも望みを叶えてやる」


 俺は、考えた。何でも望み。それは、魅力的だ。しかし、俺が欲しいものは、もう決まっていた。


「俺は、ただのフンコロガシに戻りたい」

「ただのフンコロガシ?」

「ああ。サバンナで、フンを転がす。それが、俺の幸せだ」

「そうか。わかった」


 創造主は、俺を元の世界に戻してくれた。サバンナの乾いた大地。俺は、そこに立っていた。フンも、一緒だった。しかし、フンはもう光っていなかった。普通のフンに戻っていた。


 俺は、フンを転がし始めた。いつものように。そして、穴に埋めた。それが、俺の仕事だ。


 しかし、時々思い出す。あの冒険のことを。時空を超えた旅。様々な世界を見た。そして、宇宙の創造主に会った。


 それは、夢だったのかもしれない。でも、本当だったような気もする。どちらでもいい。俺は、今、幸せだ。フンを転がしている。それが、俺の人生だ。


 フンコロガシ、フンゾウ。それが、俺の名前だ。そして、俺は、今日もフンを転がす。


 しかし、平和は長く続かなかった。ある日、またフンが光り始めた。


「また始まったのか」


 俺は、ため息をついた。フンの精霊が、また現れた。


「フンゾウよ、すまない。実は、まだ終わっていなかった」

「何が」

「フンの力が、完全に消えていなかった。まだ、残っている」

「それで、また狙われるのか」

「そうだ。申し訳ない」


 その時、空から巨大なUFOが降りてきた。宇宙人の船だ。UFOから、緑色の宇宙人が出てきた。三つ目で、触手を持っている。


「地球のフンコロガシよ、そのフンを渡せ」


 宇宙人が言った。俺は、拒否した。


「嫌だ」

「では、力ずくで奪う」


 宇宙人は、触手を伸ばしてきた。俺は、フンを転がして逃げた。しかし、触手は速かった。捕まりそうになった。


 その時、地面から巨大なミミズが現れた。それは、普通のミミズではない。体長十メートルの巨大ミミズだ。


「フンゾウ、助けに来たぞ」


 ミミズが言った。俺は、驚いた。


「お前、誰だ」

「俺は、ミミ吉。お前の仲間だ」

「仲間?」

「ああ。土の中の生き物は、みんな仲間だ」


 ミミ吉は、宇宙人の触手に噛み付いた。宇宙人は、悲鳴を上げた。


「痛い!離せ!」


 宇宙人は、UFOに逃げ込んだ。そして、飛び去っていった。


「助かった。ありがとう、ミミ吉」

「どういたしまして」


 しかし、次の日、また新しい敵が現れた。今度は、タイムトラベラーだった。未来から来た人間だ。


「フンコロガシ、そのフンは未来で必要だ。渡してくれ」


 タイムトラベラーが言った。俺は、また拒否した。


「嫌だ」

「では、未来の技術で奪う」


 タイムトラベラーは、光線銃を取り出した。俺に向けて撃った。しかし、その時、別のタイムトラベラーが現れた。


「待て!そのフンを過去に持ち帰ってはならない!」


 新しいタイムトラベラーが言った。二人のタイムトラベラーが、戦い始めた。俺は、その隙に逃げた。


 逃げている途中、俺は魔法使いに会った。黒いローブを着た老人だ。


「フンコロガシよ、そのフンには魔力がある。私に譲ってくれ」


 魔法使いが言った。俺は、もううんざりだった。


「みんな、フンが欲しいのか」

「当然だ。そのフンは、宇宙で最も貴重なものだ」

「でも、俺にとっては、ただのフンだ」

「ただのフン?そんなわけがない」


 魔法使いは、杖を振った。俺は、カエルに変えられそうになった。しかし、フンの精霊が守ってくれた。


「フンゾウを傷つけるな」


 フンの精霊が言った。魔法使いは、驚いた。


「フンの精霊?本当に存在したのか」

「そうだ。そして、フンゾウは選ばれし者だ」

「選ばれし者?」

「そうだ。彼だけが、このフンを転がせる」


 魔法使いは、納得した顔をした。


「わかった。では、邪魔はしない」


 魔法使いは、去っていった。しかし、次々と新しい敵が現れた。


 吸血鬼が来た。


「そのフンの血を吸いたい」

「フンに血はない」


 狼男が来た。


「満月の夜、そのフンを食べたい」

「食べるな」


 ゾンビが来た。


「フンン、フンン」

「喋れ」


 みんな、フンを狙っていた。俺は、もう疲れ果てた。


「もういい。誰か、このフンを持って行ってくれ」


 俺は、叫んだ。しかし、フンの精霊が言った。


「それはできない。お前だけが、このフンを守れる」

「なぜ、俺だけなんだ」

「お前には、純粋な心がある。欲望に負けない心だ」

「でも、もう限界だ」

「あと少しだ。頑張れ」


 俺は、仕方なく、また逃げ続けた。そして、ある日、俺は異世界に迷い込んだ。そこは、フンコロガシの王国だった。


 王国には、巨大な城があった。そして、城には、フンコロガシの王様がいた。王様は、普通のフンコロガシよりも大きかった。体長五センチもあった。


「ようこそ、フンゾウ。我が王国へ」


 王様が言った。俺は、驚いた。


「ここは、どこだ」

「ここは、フンコロガシの理想郷だ。すべてのフンコロガシが、平和に暮らしている」

「すごい」

「そして、お前が持っているフンは、この王国の宝だ」

「宝?」

「そうだ。そのフンで、我々は永遠に繁栄できる」

「それで、俺にどうしろと」

「そのフンを、この王国に寄贈してほしい」


 俺は、考えた。フンコロガシの王国に寄贈する。それは、悪くない選択かもしれない。


「わかった。寄贈する」

「本当か。ありがとう」


 王様は、喜んだ。しかし、その時、城が揺れた。そして、巨大なアリが襲ってきた。


「王様、アリ軍団が攻めてきました!」


 兵士が叫んだ。王様は、慌てた。


「まずい。アリ軍団は、我々の天敵だ」

「どうする」

「戦うしかない」


 フンコロガシたちは、アリ軍団と戦った。しかし、アリは強かった。フンコロガシたちは、次々と倒されていった。


 俺は、フンを転がして逃げようとした。しかし、王様が言った。


「待ってくれ、フンゾウ。そのフンの力で、アリを倒してくれ」

「でも、フンの力を使うと、フンが小さくなる」

「それでも、頼む。王国を救ってくれ」


 俺は、迷った。しかし、仲間を見捨てることはできない。俺は、フンの力を使った。


 フンが、光った。そして、巨大なエネルギー波が放出された。アリ軍団が、吹き飛ばされた。


「やった!」


 フンコロガシたちは、喜んだ。しかし、フンは小さくなっていた。半分のサイズになった。


「すまない、フンゾウ。お前のフンを小さくしてしまった」


 王様が謝った。俺は、首を振った。


「いいんだ。仲間を救えたから」


 しかし、フンが小さくなったことで、新たな問題が起きた。フンの力が弱まり、時空の裂け目が不安定になった。俺は、元の世界に戻れなくなった。


「どうすればいい」


 俺は、困った。王様が言った。


「時空の魔法使いに会うといい。彼なら、元の世界に戻す方法を知っているかもしれない」

「時空の魔法使い?」

「そうだ。彼は、この王国の奥深くに住んでいる」


 俺は、時空の魔法使いを探しに行った。王国の奥深く、暗い洞窟の中。そこに、魔法使いがいた。


「やあ、フンコロガシ。待っていたよ」


 魔法使いが言った。俺は、驚いた。


「待っていた?」

「そうだ。お前が来ることは、わかっていた」

「どうやって」

「私は、時空を見ることができる。過去も、未来も」

「すごい」

「それで、何の用だ」

「元の世界に戻りたい」

「それは、簡単だ。しかし、条件がある」

「条件?」

「そうだ。そのフンを、私に渡せ」

「また、フンか」


 俺は、うんざりした。しかし、選択肢はなかった。


「わかった。渡す」


 俺は、フンを魔法使いに渡した。魔法使いは、フンを手に取った。そして、笑った。


「ついに、手に入れた。宇宙最強の力を」


 魔法使いは、フンの力を吸収し始めた。そして、巨大化した。城よりも大きくなった。


「これで、私は無敵だ」


 魔法使いは、叫んだ。俺は、騙された。魔法使いは、悪者だったのだ。


 しかし、その時、フンの精霊が現れた。


「魔法使いよ、お前はフンの力を悪用しようとしている。それは許されない」

「黙れ、精霊。私が、この力の新しい主だ」

「そうはさせない」


 フンの精霊と魔法使いが、戦い始めた。巨大なエネルギーが、ぶつかり合った。城が、崩壊し始めた。


 俺は、逃げた。しかし、どこに逃げればいいのか、わからなかった。その時、ミミ吉が現れた。


「フンゾウ、こっちだ」


 ミミ吉は、俺を地中に引きずり込んだ。そして、安全な場所に連れて行ってくれた。


 地上では、まだ戦いが続いていた。しかし、やがて戦いは終わった。フンの精霊が、勝ったのだ。魔法使いは、消滅した。


 フンの精霊が、俺のところに来た。


「フンゾウ、すまなかった。お前を巻き込んでしまった」

「いいんだ。でも、フンは?」

「フンは、消えた。魔法使いと一緒に」

「そうか」


 俺は、少し寂しかった。あのフンとは、長い旅をした。でも、これで終わりだ。


「しかし、お前には報酬を与える」


 フンの精霊が言った。


「報酬?」

「そうだ。元の世界に戻す。そして、新しいフンを与える」

「新しいフン?」

「ああ。普通のフンだ。光らない、喋らない、ただのフンだ」

「それが、一番いい」


 俺は、笑った。フンの精霊も、笑った。


「では、さらばだ、フンゾウ。お前は、素晴らしいフンコロガシだった」

「ありがとう」


 フンの精霊は、消えた。そして、俺は元の世界に戻った。サバンナの乾いた大地。そこに、新しいフンがあった。象のフンだ。


 俺は、フンを転がし始めた。いつものように。そして、穴に埋めた。それが、俺の仕事だ。


 あの冒険は、本当だったのか、夢だったのか、わからない。でも、どちらでもいい。俺は、今、幸せだ。フンを転がしている。それが、俺の人生だ。


 フンコロガシ、フンゾウ。それが、俺の名前だ。そして、俺は、今日もフンを転がす。世界を救ったフンコロガシとして。でも、誰も知らない。それでいい。


 しかし、運命は俺を放っておかなかった。ある日、またフンが光り始めた。今度は、もっと強い光だ。


「まさか、また」


 俺は、ため息をついた。フンの精霊が現れた。しかし、今度は違う精霊だった。金色に輝いている。


「フンゾウよ、お前の活躍は、全宇宙に知れ渡った」

「全宇宙?」

「そうだ。お前は、今や宇宙の英雄だ」

「英雄?俺が?」

「そうだ。そして、お前に新しい任務がある」

「また任務か」


 俺は、うんざりした。しかし、精霊は続けた。


「別次元のフンコロガシたちが、危機に瀕している。お前が、助けに行かなければならない」

「別次元?」

「そうだ。この宇宙だけではない。無数の並行宇宙が存在する。その一つで、フンコロガシたちが絶滅の危機にある」

「何があったんだ」

「巨大な掃除ロボットが暴走している。すべてのフンを掃除してしまう。フンがなければ、フンコロガシは生きていけない」

「それは、まずいな」


 俺は、考えた。別次元のフンコロガシを見捨てるわけにはいかない。同じフンコロガシとして。


「わかった。行こう」

「では、次元の扉を開く」


 精霊は、フンに触れた。フンが、巨大な門に変わった。俺は、門をくぐった。


 次元の向こう側は、見たことのない世界だった。空は紫色で、太陽は二つある。地面は、銀色に輝いている。


 そして、巨大な掃除ロボットがいた。高さ百メートル。無数のブラシとバキュームを持っている。ロボットは、地面のフンをすべて吸い込んでいた。


「あれが、敵か」


 俺は、ロボットに近づいた。そこには、たくさんのフンコロガシがいた。みんな、困った顔をしている。


「お前たちは?」


 一人のフンコロガシが答えた。


「俺たちは、この次元のフンコロガシだ。あのロボットのせいで、フンがなくなってしまった」

「そうか。俺が、何とかする」

「本当か」

「ああ」


 俺は、ロボットに向かって走った。ロボットは、俺を見た。そして、バキュームを向けてきた。吸い込まれそうになる。しかし、俺は必死で抵抗した。


「負けるか」


 その時、次元のフンコロガシたちが集まってきた。みんな、俺を助けようとしている。


「みんな、ありがとう」


 俺たちは、協力してロボットに立ち向かった。あるフンコロガシは、ロボットの足元に穴を掘った。ロボットが、バランスを崩した。別のフンコロガシは、ロボットの電源コードを見つけた。


「これだ」


 俺は、電源コードを切断した。ロボットは、停止した。そして、倒れた。


「やった」


 フンコロガシたちは、喜んだ。俺も、嬉しかった。


「ありがとう、フンゾウ」

「どういたしまして」


 俺は、元の次元に戻った。そして、また普通の生活に戻った。


 しかし、その後も、様々な依頼が来た。タイムパラドックスを解決してくれ。平行宇宙のフン危機を救ってくれ。宇宙フン盗賊団を倒してくれ。


 俺は、すべて引き受けた。そして、すべて解決した。俺は、いつの間にか、伝説のフンコロガシになっていた。


 ある日、フンコロガシの国際会議が開かれた。世界中のフンコロガシが集まった。そして、俺に勲章が授与された。


「フンゾウ、お前は、フンコロガシの誇りだ」


 フンコロガシの長老が言った。俺は、照れくさかった。


「いや、俺は、ただのフンコロガシだ」

「謙遜するな。お前は、英雄だ」


 しかし、俺は、英雄になりたかったわけじゃない。ただ、フンを転がしたかっただけだ。


 会議が終わると、俺は一人でサバンナに戻った。そして、フンを探した。普通のフンを。光らない、喋らない、特殊能力もないフンを。


 そして、見つけた。象のフンだ。新鮮で、柔らかい。完璧だ。


 俺は、フンを転がし始めた。いつものように。そして、幸せを感じた。これだ。これが、俺の人生だ。


 フンを転がしている時、俺は考えた。英雄だろうが、普通のフンコロガシだろうが、関係ない。大切なのは、自分が幸せであることだ。


 俺は、フンを転がす。今日も、明日も、これからも。それが、俺の生き方だ。


 フンコロガシ、フンゾウ。宇宙を救った英雄。でも、ただのフンコロガシ。それが、俺だ。


 そして、最後の冒険が訪れた。ある日、フンの精霊全員が集まった。金色、銀色、虹色。すべての精霊だ。


「フンゾウよ、最後の試練だ」

「最後?」

「そうだ。これが終われば、お前は本当に自由になれる」

「何をすればいい」

「究極のフンを作るのだ」

「究極のフン?」

「そうだ。すべての次元、すべての時間、すべての宇宙のフンの力を集めた、究極のフン。それを作れば、お前の使命は終わる」

「どうやって作るんだ」

「簡単だ。お前が、心を込めてフンを転がすだけだ」


 俺は、フンを転がし始めた。いつものように。でも、今回は違った。心を込めて、丁寧に、愛情を持って転がした。


 すると、フンが輝き始めた。すべての色が混ざった、美しい光だ。そして、フンは完璧な球体になった。


「これが、究極のフンか」


 精霊たちが言った。


「素晴らしい。フンゾウ、お前は成し遂げた」

「これで、終わりか」

「そうだ。お前は、自由だ」


 精霊たちは、消えていった。そして、究極のフンも消えた。俺は、一人になった。


 でも、寂しくなかった。俺には、仲間がいる。ミミ吉がいる。そして、フンがいる。


 俺は、また新しいフンを見つけた。そして、転がし始めた。これが、俺の人生だ。


 フンコロガシ、フンゾウ。伝説の英雄。究極のフンを作った者。でも、ただのフンコロガシ。


 今日も、フンを転がす。それが、俺の幸せだ。

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水が死んだ日

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