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世界は静かに壊れている【ショートショート集・短編集】  作者: 御影のたぬき


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【コメディ】怪異戦隊カイイーンジャー!

 居酒屋「妖怪の宴」は、今夜も賑わっていた。

 いや、正確には、人間には見えない特別な居酒屋だ。

 ここに集まるのは、都市伝説の怪異たち。

 口裂け女、トイレの花子さん、八尺様、メリーさん、テケテケ、赤マント。

 彼女たち、彼らが、年に一度の忘年会を開いていた。


「かんぱーい!」

 全員で、杯を掲げた。

 口裂け女は、マスクを外して(口が裂けているが)、ビールをゴクゴク飲んだ。

「ぷはー! やっぱり忘年会は最高ね!」

「そうね。一年の疲れが吹き飛ぶわ」

 トイレの花子さんが、おしぼりで顔を拭いた。

 彼女は、普段は学校のトイレに出没するが、今日は特別だ。

「しかし、今年も忙しかったですね」

 八尺様が、日本酒を飲みながら言った。

 彼女は、身長が八尺(約2.4メートル)ある女性の怪異だ。

 白いワンピースに、つばの広い帽子。

 見た目は美しいが、出会った男性を連れ去ると言われている。

「私なんて、毎日電話かけまくりよ」

 メリーさんが、疲れた顔で言った。

 彼女は、電話をかけてくる怪異だ。

「今、○○にいるの」と言いながら、徐々に近づいてくる。

「まあ、私たちの仕事も大変よね」

 テケテケが、唐揚げをつまんだ。

 彼女は、上半身だけの怪異で、肘で移動する。

 下半身がないので、椅子に座るのが楽だと本人は言う。

「赤マントさんは、どうでした?」

 花子さんが聞いた。

 赤マントは、トイレに出没して「赤いマントと青いマント、どっちがいい?」と聞いてくる怪異だ。

 彼は、無言で頷いた。

 口数が少ない。


 宴は、盛り上がっていた。

 料理が次々と運ばれてくる。

 焼き鳥、刺身、鍋。

 みんな、食べて、飲んで、笑った。

 口裂け女が、酔った顔で言った。

「ねえねえ、最近思うんだけどさ」

「何?」

「私たち、もっと世の中の役に立てないかなって」

「役に立つ?」

 花子さんが、首を傾げた。

「うん。私たち、怖がらせるだけじゃん。でも、もっと違うことできるんじゃないかなって」

「例えば?」

「ヒーローとか!」

 口裂け女は、立ち上がった。

「私たち、怪異戦隊を作るの! そして、悪と戦う!」

 一同、沈黙した。

 そして、八尺様が言った。

「……酔ってますね」

「酔ってない! 本気よ!」

 口裂け女は、拳を振り上げた。

「考えてみてよ! 私たち、怪異だから人間を怖がらせてるけど、本当は悪い奴らをやっつけたいじゃん!」

「まあ、それは……」

 メリーさんが、考え込んだ。

「確かに、怖がらせるだけって、ちょっと虚しいわよね」

「でしょ!?」

 口裂け女は、目を輝かせた。

「だから、戦隊ヒーローになるの! カッコいい名前つけて、変身して、悪の組織と戦う!」

「名前は?」

 テケテケが聞いた。

「怪異戦隊……カイイーンジャー!」

 口裂け女は、ドヤ顔で言った。

 一同、再び沈黙した。

 そして、花子さんが言った。

「……ダサい」

「ダサくない! カッコいいでしょ!」

「いや、ダサいです」

 八尺様も、同意した。

「じゃあ、他に案ある!?」

「ないけど……」

「なら、決まり! 怪異戦隊カイイーンジャー、結成!」

 口裂け女は、勝手に決めた。

 みんなは、呆れた顔をしたが、酔った勢いもあり、結局同意した。

「まあ、面白そうだし」

「やってみる?」

「いいわよ」

 こうして、史上最も奇妙な戦隊ヒーローが誕生した。


 翌日、口裂け女は二日酔いで目を覚ました。

「頭痛い……」

 彼女は、ベッドから起き上がった。

 そして、昨夜のことを思い出した。

「あれ、私、何か変なこと言ってなかった?」

 携帯が鳴った。

 メリーさんからだ。

「もしもし」

「口裂け女、昨日の話、本気?」

「昨日の話?」

「戦隊ヒーローの話よ」

 口裂け女は、動けなくなった。

「……ああ、そういえば言ったような」

「みんな、やる気よ。今から集合」

「え、マジで?」

「マジよ。私、もう衣装作り始めてるし」

「早っ!」

 口裂け女は、頭を抱えた。

 しかし、言い出したのは自分だ。

 責任を取らないと。

「わかった。どこに集まる?」

「廃ビルの屋上。一時間後」

「了解」

 口裂け女は、ため息をついた。

 そして、支度を始めた。


 一時間後、廃ビルの屋上に六人が集まった。

 口裂け女、花子さん、八尺様、メリーさん、テケテケ、赤マント。

 みんな、真剣な顔をしていた。

「よし、集まったわね」

 口裂け女が、前に出た。

「まず、役割分担よ。戦隊には、色があるでしょ」

「赤、青、黄色、緑、ピンク……」

 花子さんが、数えた。

「私たち、六人いるから、もう一色必要ね」

「黒でいいんじゃない?」

 メリーさんが提案した。

「いいわね。じゃあ、誰が何色?」

「私、赤!」

 口裂け女が、手を挙げた。

「リーダーは赤だから!」

「なんで、あなたがリーダーなのよ」

 テケテケが、文句を言った。

「だって、私が言い出したんだから」

「まあ、それもそうね」

 八尺様が、納得した。

「じゃあ、私は青」

「私は黄色」

 花子さんが言った。

「私は緑」

 メリーさんが言った。

「私はピンク」

 テケテケが言った。

「赤マントさんは?」

「……黒」

 赤マントが、小声で言った。

「よし、決まり!」

 口裂け女は、満足そうに頷いた。


 次に、衣装を作った。

 メリーさんが、裁縫が得意だった。

 彼女は、一晩で六人分の衣装を作り上げた。

 それぞれの色のスーツに、マスク。

 胸には、「カイイー」のエンブレム。

 ダサいけど、それなりに見える。

「試着してみて」

 メリーさんが、衣装を配った。

 みんな、着てみた。

 口裂け女は、赤いスーツ。

 八尺様は、青いスーツ。

 花子さんは、黄色いスーツ。

 メリーさんは、緑のスーツ。

 テケテケは、ピンクのスーツ。

 赤マントは、黒いスーツ。

「どう?」

 口裂け女が、ポーズを取った。

「……微妙」

 テケテケが、正直な感想を言った。

「でも、悪くはないわね」

 八尺様が、フォローした。

「よし、これで準備は整った!」

 口裂け女は、拳を握った。

「あとは、悪の組織を見つけるだけ!」

「どこにいるのよ、悪の組織」

 花子さんが、聞いた。

「それは……」

 口裂け女は、言葉に詰まった。

 確かに、悪の組織なんて、そう簡単に見つからない。

「まずは、パトロールしましょう」

 メリーさんが、提案した。

「街を見回って、困ってる人がいたら助ける」

「それだ!」

 口裂け女は、手を叩いた。

「よし、行くわよ! 怪異戦隊カイイーンジャー、出動!」

 六人は、街へ繰り出した。


 しかし、街をパトロールしても、何も起きなかった。

 平和だった。

「誰も、困ってないわね」

 花子さんが、ため息をついた。

「悪の組織も、いないし」

 テケテケも、がっかりした。

「もう帰る?」

 メリーさんが、聞いた。

 その時、悲鳴が聞こえた。

「助けて!」

 六人は、音のする方向に走った。

 そこには、コンビニがあった。

 強盗が、レジの金を奪おうとしていた。

「これは!」

 口裂け女は、目を輝かせた。

「初仕事よ! 行くわよ、みんな!」

 六人は、コンビニに飛び込んだ。

「待ちなさい、悪党!」

 口裂け女が、叫んだ。

 強盗は、振り返った。

 そして、六人の変な格好を見て、動けなくなった。

「な、何だ、お前ら……」

「私たちは、怪異戦隊カイイーンジャー!」

 口裂け女が、ポーズを取った。

「悪を許さない、正義の味方よ!」

「カイイーンレッド!」

 口裂け女が、名乗った。

「カイイーンブルー」

 八尺様が、名乗った。

「カイイーンイエロー」

 花子さんが、名乗った。

「カイイーングリーン」

 メリーさんが、名乗った。

「カイイーンピンク」

 テケテケが、名乗った。

「カイイーンブラック」

 赤マントが、名乗った。

「六人揃って、怪異戦隊カイイーンジャー!」

 全員で、決めポーズ。

 強盗は、笑い出した。

「何だよ、それ! コスプレか!?」

「コスプレじゃないわ! 本物のヒーローよ!」

 口裂け女は、怒った。

「おとなしく、縄につきなさい!」

「うるせえ!」

 強盗は、ナイフを振りかざした。

 しかし、その瞬間、八尺様が動いた。

 彼女は、一瞬で強盗の背後に回り込んだ。

 そして、肩を掴んだ。

「危ないですよ」

 八尺様の声は、低く、恐ろしかった。

 強盗は、恐怖した。

 振り返ると、2.4メートルの巨大な女性が立っていた。

「ひ、ひいい!」

 強盗は、ナイフを落とした。

 そして、逃げようとした。

 しかし、花子さんが前に立ちはだかった。

「逃がさないわよ」

 花子さんは、手を挙げた。

 すると、トイレットペーパーが飛び出して、強盗をぐるぐる巻きにした。

 強盗は、動けなくなった。

「やった!」

 口裂け女は、喜んだ。

「初陣、大成功!」

 店員は、言葉を失っていた。

「あ、ありがとうございます……?」

「どういたしまして! 困ったときは、カイイーンジャーを呼んで!」

 口裂け女は、ウインクした。

 そして、六人は颯爽と去っていった。


 その後、カイイーンジャーの噂は広まった。

 変な格好をした、六人のヒーロー。

 しかし、確かに悪を倒す。

 人々は、半信半疑だったが、感謝した。

 カイイーンジャーは、毎日パトロールを続けた。

 ひったくりを捕まえた。

 痴漢を撃退した。

 迷子を助けた。

 小さな善行を、積み重ねた。

 しかし、ある日、本当の敵が現れた。


 それは、悪の組織「ダークシャドウ」。

 彼らは、世界征服を企む、邪悪な集団だった。

 リーダーは、ドクター・カオス。

 彼は、天才科学者で、怪物を作り出す能力がある。

 ドクター・カオスは、テレビジャックをした。

 すべてのテレビに、彼の顔が映った。

「人類よ、聞け。我々、ダークシャドウは、今日からこの街を支配する」

 人々は、恐怖した。

「三日以内に、街を明け渡さなければ、怪物を解き放つ」

 ドクター・カオスは、笑った。

「さあ、どうする?」

 画面が、切れた。

 街は、パニックになった。

 しかし、カイイーンジャーは、立ち上がった。

「私たちの出番ね」

 口裂け女が、言った。

「ダークシャドウを倒すわよ」

「でも、相手は組織よ。私たちだけで大丈夫?」

 花子さんが、不安そうに言った。

「大丈夫! 私たちには、仲間がいる!」

 口裂け女は、胸を張った。

「それに、私たちは怪異よ。怖いものなんて、ない!」

「そうね」

 八尺様が、頷いた。

「やりましょう」

 六人は、ダークシャドウの本部に向かった。


 ダークシャドウの本部は、廃工場だった。

 外には、怪物が警備していた。

 ゾンビのような生物。

 彼らは、カイイーンジャーを見つけると、襲いかかってきた。

「来たわね!」

 口裂け女は、戦闘態勢を取った。

「みんな、行くわよ!」

 戦闘が、始まった。

 口裂け女は、素早い動きで怪物を倒した。

 彼女の武器は、巨大なハサミ。

 口が裂けているので、ハサミを使う。

 八尺様は、長身を活かして、高い位置から攻撃した。

 彼女の武器は、白い布。

 布で怪物を縛り上げる。

 花子さんは、トイレットペーパーで怪物を拘束した。

 そして、水を操って攻撃した。

 メリーさんは、電話で怪物を混乱させた。

 音波攻撃だ。

 テケテケは、高速で移動しながら、怪物を蹴り飛ばした。

 下半身がないので、軽くて速い。

 赤マントは、マントで怪物を包み込んだ。

 そして、消滅させた。

 六人の連携は、完璧だった。

 怪物たちは、次々と倒れた。

「よし、中に入るわよ!」

 口裂け女が、叫んだ。

 六人は、工場に突入した。


 工場の中には、ドクター・カオスがいた。

 彼は、白衣を着た、痩せた男だった。

「よく来たな、カイイーンジャー」

 ドクター・カオスは、笑った。

「噂は聞いている。怪異のヒーローとはな」

「あなたの野望は、ここで終わりよ」

 口裂け女が、言った。

「野望? これは野望ではない。正義だ」

「正義?」

「そうだ。この世界は、腐っている。強者が弱者を虐げ、金持ちが貧乏人を搾取する」

 ドクター・カオスは、拳を握った。

「私は、その不平等を正す。すべての人間を平等にする。そのために、この世界を作り直す」

「でも、そのために人々を苦しめるのは、間違ってるわ」

 花子さんが、言った。

「苦しみは、一時的なものだ。やがて、新しい世界が来る」

「そんな世界、誰も望んでない」

 八尺様が、言った。

「ならば、力ずくで従わせるまでだ」

 ドクター・カオスは、ボタンを押した。

 すると、巨大な怪物が現れた。

 キメラ。

 様々な動物の部位を組み合わせた、恐ろしい生物。

「これが、私の最高傑作だ。キメラ・デストロイヤー」

 キメラは、咆哮した。

 そして、カイイーンジャーに襲いかかった。


 戦いは、激しかった。

 キメラは、強かった。

 口裂け女のハサミも、弾かれた。

 八尺様の布も、破られた。

 花子さんの水も、効かなかった。

 メリーさんの音波も、無視された。

 テケテケの蹴りも、跳ね返された。

 赤マントのマントも、通じなかった。

「強い……」

 口裂け女は、歯ぎしりした。

「このままじゃ、負ける……」

 その時、八尺様が言った。

「合体技を使いましょう」

「合体技?」

「私たち六人の力を合わせれば、きっと勝てます」

「でも、どうやって?」

「私に任せて」

 八尺様は、前に出た。

 そして、全員に指示を出した。

「口裂け女は、前衛で攻撃。花子さんとメリーさんは、左右から援護。テケテケは、足元を崩す。赤マントは、後方から拘束。私は、上から仕掛ける」

「わかった!」

 全員が、頷いた。

 そして、作戦を実行した。


 口裂け女が、キメラに突進した。

 ハサミで斬りかかる。

 キメラは、それを防いだ。

 しかし、その瞬間、花子さんとメリーさんが左右から攻撃した。

 水と音波。

 キメラは、バランスを崩した。

 そこに、テケテケが滑り込んだ。

 そして、キメラの足を蹴った。

 キメラは、倒れた。

 赤マントが、マントを投げた。

 マントが、キメラを包んだ。

 動けない。

 そして、八尺様が上から飛び降りた。

 彼女の巨体が、キメラに衝突した。

 キメラは、押しつぶされた。

 勝負あった。

「やった!」

 口裂け女は、叫んだ。

 しかし、ドクター・カオスは、まだ諦めていなかった。

 彼は、別のボタンを押した。

「なら、これならどうだ!」

 工場全体が、爆発し始めた。

「自爆装置か!」

 メリーさんが、叫んだ。

「逃げるわよ!」

 六人は、走った。

 ドクター・カオスも、逃げた。

 工場は、大爆発した。

 炎と煙が、空に上がった。

 カイイーンジャーは、何とか逃げ延びた。

 しかし、ドクター・カオスは……。

 彼の姿は、見えなかった。

「死んだのかしら……」

 花子さんが、呟いた。

「わからないわ。でも、もう脅威は去った」

 口裂け女は、空を見上げた。

「私たち、勝ったのよ」

 六人は、抱き合った。

 初めての大きな戦い。

 そして、勝利。


 その後、街は平和を取り戻した。

 ダークシャドウは、壊滅した。

 カイイーンジャーは、街のヒーローとして認められた。

 市長から、感謝状ももらった。

 しかし、彼女たちは、有頂天にならなかった。

 まだ、やることがある。

 街を守ること。

 人々を助けること。

 それが、彼女たちの使命だった。


 ある日、六人は再び居酒屋に集まった。

 今度は、祝勝会だ。

「かんぱーい!」

 全員で、杯を掲げた。

「やったわね、私たち」

 口裂け女は、笑顔で言った。

「ええ。最初は冗談だと思ったけど、本当にヒーローになっちゃった」

 花子さんも、笑った。

「でも、楽しかったわ」

 八尺様が、言った。

「人を助けるって、いいものね」

「そうね」

 メリーさんも、同意した。

「私、もう人を怖がらせるだけの仕事、やめようかな」

 テケテケが、呟いた。

「私も」

 赤マントが、珍しく長く話した。

「じゃあ、これからもカイイーンジャー、続ける?」

 口裂け女が、聞いた。

 全員が、頷いた。

「続ける」

「もちろん」

「当然よ」

「私たちは、ヒーローだもの」

 六人は、笑い合った。

 そして、夜は更けていった。


 翌日、街に新しい敵が現れた。

 巨大なロボット。

 それは、街を破壊し始めた。

「また、仕事ね」

 口裂け女は、衣装を着た。

「行くわよ、みんな!」

 六人は、集合した。

「怪異戦隊カイイーンジャー、出動!」

 彼女たちは、空へ飛び立った。

 いや、走って行った。

 飛べないから。

 でも、それでいい。

 彼女たちは、ヒーローだ。

 変な名前で、変な格好で、変な能力を持つ。

 でも、正義の心は、本物だ。

 街を守るため。

 人々を救うため。

 彼女たちは、戦い続ける。

 怪異戦隊カイイーンジャーとして。


 ロボットとの戦いは、激しかった。

 しかし、六人の連携は完璧だった。

 口裂け女が、ロボットの足を切断した。

 八尺様が、ロボットの上に飛び乗った。

 花子さんが、水でショートさせた。

 メリーさんが、音波で回路を狂わせた。

 テケテケが、内部に侵入して、配線を切った。

 赤マントが、マントでロボットを包み込んだ。

 ロボットは、停止した。

 そして、倒れた。

「やった!」

 六人は、ハイタッチした。

 人々は、歓声を上げた。

「カイイーンジャー! カイイーンジャー!」

 六人は、手を振った。

 そして、去っていった。

 颯爽と。

 いや、普通に歩いて。

 でも、それでいい。

 彼女たちは、ヒーローなのだから。


 その夜、六人は屋上で星を見た。

「綺麗ね」

 花子さんが、呟いた。

「ええ」

 口裂け女も、同意した。

「ねえ、私たち、いつまでヒーローやるのかしら」

 メリーさんが、聞いた。

「さあね。でも、必要とされる限り、やり続けるんじゃない?」

 八尺様が、答えた。

「そうね」

 テケテケが、頷いた。

「私たちは、怪異だけど、ヒーローでもある」

 赤マントが、言った。

「いいこと言うじゃない」

 口裂け女は、笑った。

「じゃあ、これからも頑張りましょう」

「おー!」

 六人は、拳を空に突き上げた。

 星が、きらめいた。

 まるで、彼女たちを祝福しているかのように。

 怪異戦隊カイイーンジャーの戦いは、続く。

 街に平和がある限り。

 人々に笑顔がある限り。

 彼女たちは、戦い続ける。

 変な名前でも。

 変な格好でも。

 それでいい。

 彼女たちは、ヒーローなのだから。


(完)


おまけ:カイイーンジャーの日常


 ある日、カイイーンジャーは、子供たちの前でヒーローショーをすることになった。

 保育園からの依頼だ。

「やるの? 恥ずかしいんだけど」

 テケテケが、嫌がった。

「子供たちが喜ぶんだから、やりましょうよ」

 花子さんが、説得した。

「まあ、いいけど……」

 当日、六人は保育園に行った。

 子供たちは、大喜びだった。

「カイイーンジャーだ!」

「本物!?」

 口裂け女は、ポーズを取った。

「そうよ、本物のカイイーンジャーよ!」

 子供たちは、拍手した。

 ショーが始まった。

 悪役役は、園長先生。

 彼は、怪物の着ぐるみを着た。

「がおー! お菓子をすべて奪うぞ!」

 園長先生は、演技した。

「それは困るわ!」

 口裂け女が、立ち上がった。

「カイイーンジャー、出動!」

 六人は、園長先生と戦った。

 もちろん、演技だ。

 しかし、八尺様が本気で投げ技をかけてしまった。

 園長先生は、吹き飛んだ。

「ごめんなさい!」

 八尺様は、慌てた。

 子供たちは、大笑いだった。

 ショーは、大成功だった。

 最後に、子供たちと写真を撮った。

 みんな、笑顔だった。

「やって良かったわね」

 花子さんが、言った。

「そうね」

 口裂け女も、微笑んだ。

「子供たちの笑顔、最高」

 メリーさんが、言った。

「また、やりたいわね」

 テケテケも、同意した。

 赤マントは、無言で頷いた。

 八尺様は、まだ園長先生に謝っていた。

 怪異戦隊カイイーンジャーの日常は、こうして続いていく。

 戦いだけでなく、笑いもある。

 それが、彼女たちの生き方だった。


(本当に完)

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