【SFファンタジー】鋼鉄と魔法の冒険者たち
ギルド「スチール&スペル」の掲示板には、今日も依頼がびっしりと貼られていた。
「ドラゴン退治。報酬:金貨五百枚」
「遺跡探索。報酬:金貨三百枚」
「サイバー盗賊団討伐。報酬:金貨四百枚」
冒険者たちが、掲示板を囲んで依頼を品定めしている。
その中に、一人の男がいた。
名前は、レックス。二十五歳。
右腕がサイボーグアームになっている冒険者だ。
彼は、掲示板を見ながら腕を組んだ。
「今日は何にしようかな……」
その時、背後から声がかかった。
「レックス、決まった?」
振り返ると、エルフの女性が立っていた。
名前は、リーナ。魔法使い。
彼女の両目には、魔力を増幅するサイバネティック・レンズが埋め込まれている。
「まだだよ。お前こそ、何かいいのある?」
「これなんてどう?」
リーナは、一枚の依頼書を指差した。
「古代遺跡『クリスタルタワー』の探索。報酬は金貨八百枚」
「八百!? そりゃすごいな」
レックスは、依頼書を読んだ。
クリスタルタワーは、千年前の魔法文明が残した遺跡だ。
内部には、強力な魔法アイテムや古代のテクノロジーが眠っているという。
しかし、危険度も高い。
多くの冒険者が挑戦し、帰ってこなかった。
「危険そうだな」
「でも、報酬は魅力的よ」
「まあ、そうだけど……」
その時、別の声が割り込んできた。
「それ、俺たちがもらうぜ」
振り返ると、大柄な男が立っていた。
名前は、ゴードン。戦士。
全身の三割がサイボーグ化されている、ギルドでも有名な強者だ。
「ゴードン、お前もか」
「当たり前だろ。八百枚だぞ。逃す手はねえ」
ゴードンは、依頼書を掲示板から剥がした。
「待てよ、俺たちが先に目をつけたんだ」
「先に取った者勝ちだろ」
ゴードンは、にやりと笑った。
レックスは、舌打ちした。
しかし、その時、リーナが言った。
「じゃあ、一緒に行きましょう」
「は?」
ゴードンとレックスが、同時に声を上げた。
「クリスタルタワーは危険よ。一人より、複数のパーティの方が安全」
「でも、報酬は山分けだぞ」
「それでも、一人頭二百枚以上もらえるわ」
リーナは、にっこり笑った。
「それに、私たちには切り札がいるし」
「切り札?」
その時、ギルドのドアが開いた。
小柄な少女が、入ってきた。
名前は、ミア。十六歳。
見た目は普通の少女だが、彼女の正体はアンドロイドだ。
最新型の戦闘用アンドロイドで、魔法も使える特殊な存在。
「おはよう、みんな」
ミアは、笑顔で手を振った。
「ミア、ちょうど良かった。一緒にクリスタルタワーに行かない?」
「クリスタルタワー? 面白そう! 行く行く!」
ミアは、目を輝かせた。
ゴードンは、しばらく考えた後、頷いた。
「わかった。四人パーティでいこう」
こうして、即席のパーティが結成された。
翌日、四人はクリスタルタワーに向かった。
タワーは、街から東に百キロメートル離れた荒野にあった。
彼らは、ホバーバイクで移動した。
風を切って走る。
荒野には、何もない。
ただ、岩と砂が広がるだけ。
しかし、遠くにそびえ立つ塔が見えた。
クリスタルタワー。
透明な結晶でできた、美しい塔。
高さは、二百メートルを超える。
太陽の光を受けて、虹色に輝いている。
「すごい……」
ミアは、感嘆の声を上げた。
「見た目は綺麗だが、中は地獄だぞ」
ゴードンは、厳しい顔で言った。
「罠だらけ、モンスターだらけ。油断するな」
「わかってるよ」
レックスは、サイボーグアームを動かした。
装備を確認する。
リーナは、魔法の杖を取り出した。
ミアは、内蔵された武器システムを起動させた。
準備は万端。
四人は、塔の入口に向かった。
入口は、巨大な扉だった。
結晶でできた、透明な扉。
しかし、鍵がかかっている。
「どうやって開ける?」
レックスが聞いた。
リーナは、扉を調べた。
「魔法の鍵ね。解除できるわ」
彼女は、杖を扉にかざした。
魔力が流れる。
扉が、光り始めた。
そして、ゆっくりと開いた。
「さすがだな」
「当然よ」
リーナは、胸を張った。
四人は、中に入った。
内部は、外から見た以上に広かった。
天井が高く、壁は全て結晶でできている。
床には、古代の文字が刻まれている。
「これ、何て書いてあるの?」
ミアが聞いた。
「古代語だな。読めるやついるか?」
ゴードンが聞いた。
リーナは、文字を見た。
「『この塔を登る者よ、試練に耐えよ。頂上には、真実が待つ』……だって」
「真実? 何の真実だよ」
「わからないわ。でも、とにかく登るしかないわね」
四人は、階段を登り始めた。
一階は、静かだった。
モンスターも、罠もない。
しかし、二階に入った途端、状況が変わった。
床から、突然炎が噴き出した。
「うわっ!」
レックスは、横に飛んだ。
間一髪で避けた。
「罠だ! 気をつけろ!」
ゴードンが叫んだ。
しかし、次々と罠が作動する。
氷の槍が飛んでくる。
雷が落ちる。
床が崩れる。
四人は、必死で避けた。
リーナは、防御魔法を展開した。
「シールド!」
魔法の障壁が、四人を包んだ。
炎も、氷も、雷も、シールドに阻まれた。
「助かった!」
レックスは、安堵した。
しかし、シールドは長く持たない。
「早く先に進むわよ!」
リーナが叫んだ。
四人は、走った。
罠を避けながら、次の階段へ。
ようやく三階に辿り着いた。
リーナは、息を切らしていた。
「魔力、使いすぎた……」
「大丈夫か?」
「なんとか……」
ゴードンは、回復薬を差し出した。
「これ、飲め」
「ありがと」
リーナは、薬を飲んだ。
魔力が、少し回復した。
三階には、モンスターがいた。
クリスタル・ゴーレム。
結晶でできた、巨大な人型モンスター。
高さは三メートル。
腕は太く、拳は岩のようだ。
ゴーレムは、四人を見つけると、唸り声を上げた。
そして、襲いかかってきた。
「来たぞ!」
ゴードンは、剣を抜いた。
サイボーグ化された腕が、パワーを増幅させる。
彼は、ゴーレムに斬りかかった。
しかし、剣は弾かれた。
「硬い!」
「魔法攻撃よ!」
リーナが叫んだ。
彼女は、杖を振った。
「ファイアボール!」
炎の球が、ゴーレムに命中した。
しかし、ゴーレムは平然としていた。
ダメージは、ほとんどない。
「効かないのか!」
「じゃあ、これはどうだ!」
レックスは、サイボーグアームを変形させた。
腕が、プラズマキャノンになる。
最新のサイバネティック兵器だ。
彼は、ゴーレムに向けて撃った。
プラズマが、放たれる。
ゴーレムに命中した。
そして、爆発した。
ゴーレムの体が、粉々に砕けた。
「やった!」
レックスは、ガッツポーズをした。
しかし、次の瞬間、砕けた結晶が再び集まり始めた。
ゴーレムが、再生する。
「嘘だろ……」
「再生能力があるのね」
リーナは、冷静に分析した。
「コアを壊さないと、倒せないわ」
「コアってどこだよ!」
「たぶん、胸の中心」
「よし、俺が抑える。お前ら、コアを狙え」
ゴードンが前に出た。
彼は、ゴーレムに突進した。
そして、その巨体を受け止めた。
サイボーグ化された体が、ゴーレムのパワーに耐える。
「今だ!」
レックスとリーナとミアが、同時に攻撃した。
レックスは、プラズマキャノン。
リーナは、雷魔法。
ミアは、内蔵されたレーザー砲。
三つの攻撃が、ゴーレムの胸を貫いた。
コアが、砕けた。
ゴーレムは、崩れ落ちた。
今度は、再生しなかった。
「ふう……やっと倒せたな」
ゴードンは、肩で息をしていた。
「みんな、大丈夫?」
ミアが聞いた。
「なんとかな」
レックスは、腕の冷却システムを作動させた。
プラズマキャノンは、熱を持つ。
冷やさないと、壊れる。
四階、五階と登っていく。
罠とモンスターが、次々と現れる。
しかし、四人は協力して乗り越えた。
ゴードンの力。
レックスの技術。
リーナの魔法。
ミアの多機能性。
それぞれが補い合い、進んでいく。
六階では、巨大な蜘蛛型モンスターと戦った。
七階では、毒ガスの罠を解除した。
八階では、迷路を抜けた。
そして、九階に辿り着いた。
九階は、広い部屋だった。
そこには、一人の男が立っていた。
いや、男のような何かが。
彼の体は、半分が機械、半分が魔法生物だった。
サイボーグと魔法の融合体。
名前は、不明。
ただ、強力な存在であることは、一目でわかった。
「よく来たな、冒険者たちよ」
男は、低い声で言った。
「お前は誰だ」
ゴードンが聞いた。
「私は、このタワーの守護者。千年前から、ここにいる」
「千年……?」
「そうだ。私の役割は、頂上に辿り着く資格のない者を排除すること」
男は、手を挙げた。
その手から、魔力とエネルギーが溢れ出す。
「お前たちに、資格はあるか?」
「試してみるか?」
レックスは、プラズマキャノンを構えた。
男は、笑った。
「いい目だ。では、試そう」
戦闘が、始まった。
守護者は、強かった。
魔法とサイバネティック兵器を駆使して、四人を圧倒した。
ゴードンが斬りかかっても、かわされる。
レックスが撃っても、シールドで防がれる。
リーナの魔法も、相殺される。
ミアのレーザーも、効かない。
「強すぎる……」
レックスは、歯ぎしりした。
「このままじゃ、勝てないわ」
リーナも、焦っていた。
しかし、ミアが言った。
「みんな、協力しましょう。一人じゃ勝てなくても、四人なら」
「そうだな」
ゴードンは、頷いた。
「よし、作戦を立てよう」
四人は、一時的に後退した。
そして、作戦を練った。
ゴードンが前衛で敵を引きつける。
レックスとミアが左右から攻撃。
リーナが後方から強力な魔法を放つ。
シンプルだが、確実な作戦。
「いくぞ!」
四人は、再び守護者に挑んだ。
ゴードンが、守護者に突進した。
守護者は、それを受け止めた。
二人の力がぶつかり合う。
その隙に、レックスとミアが左右から攻撃した。
プラズマキャノンとレーザー砲。
守護者は、シールドで防いだ。
しかし、その瞬間、リーナが詠唱を終えた。
「サンダーストーム!」
巨大な雷が、天井から落ちた。
守護者に直撃した。
シールドが、破られた。
守護者は、ダメージを受けた。
「効いたぞ!」
「もう一回!」
四人は、同じ攻撃を繰り返した。
何度も、何度も。
守護者は、次第に追い詰められていった。
そして、ついに膝をついた。
「まさか……私が敗れるとは……」
守護者は、弱々しく言った。
「お前たち……資格がある……」
守護者は、消えた。
光となって、消えた。
四人は、勝利した。
十階への階段が、現れた。
四人は、疲れ果てていたが、登った。
頂上には、何があるのか。
期待と不安を胸に。
そして、十階に辿り着いた。
頂上は、小さな部屋だった。
中央に、宝箱が置いてあった。
それだけ。
他には、何もない。
「これが……真実?」
レックスは、首を傾げた。
ゴードンは、宝箱に近づいた。
そして、開けた。
中には、一枚の紙が入っていた。
「紙?」
ゴードンは、紙を取り出した。
そこには、こう書いてあった。
「おめでとうございます。あなたたちは試練を乗り越えました。しかし、本当の宝は物ではありません。それは、仲間との絆です。この冒険で得た信頼と友情こそが、真の宝物です」
一同、沈黙した。
そして、レックスが言った。
「……は?」
「は? じゃねえよ!」
ゴードンが叫んだ。
「報酬は!? 金貨八百枚は!?」
「ちょ、ちょっと待って」
リーナは、宝箱の底を調べた。
すると、小さな袋が入っていた。
「あった! これよ!」
袋を開けると、金貨が入っていた。
しかし、数えてみると……。
「十枚……」
「じゅ、十枚!?」
レックスは、絶句した。
「八百枚じゃないのか!?」
「嘘の依頼だったのね……」
リーナは、肩を落とした。
ミアは、笑っていた。
「でも、楽しかったよ!」
「楽しいだけじゃ腹は膨れないんだよ!」
ゴードンは、頭を抱えた。
しかし、その時、宝箱が再び光り始めた。
そして、新しいアイテムが現れた。
魔法の剣。
サイバネティック・アーマー。
魔力増幅の指輪。
エネルギーコア。
それぞれが、非常に高価なアイテムだった。
「おお! これは!」
ゴードンは、目を輝かせた。
「これなら、八百枚どころじゃない価値があるぞ!」
「やった!」
レックスは、ガッツポーズをした。
リーナとミアも、喜んだ。
結局、報酬はあった。
ただ、形が違っただけだった。
四人は、タワーを降りた。
そして、街に戻った。
ギルドに、報告した。
「クリスタルタワー、攻略完了です」
ギルドマスターは、驚いた顔をした。
「本当か!? あのタワーを!?」
「ええ。証拠もあります」
リーナは、アイテムを見せた。
ギルドマスターは、それを見て頷いた。
「確かに、本物だ。よくやった」
ギルドマスターは、四人に金貨を渡した。
報酬の八百枚。
さらに、アイテムの価値も認められ、ボーナスが追加された。
結局、一人頭三百枚以上もらえた。
「やった!」
四人は、喜んだ。
そして、祝杯を挙げた。
ギルドの酒場で、夜遅くまで。
鋼鉄と魔法の冒険者たちの物語は、まだ始まったばかりだった。




