【武侠アクション】天下第一の拳
武林大会が開かれていた。
場所は泰山の麓。
全国から集まった武術家たちが、天下第一の座を争う。
勝者には、伝説の秘伝書「九陽真経」が贈られる。
この秘伝書には、最強の内功が記されているという。
誰もが欲しがる宝だ。
大会は三日間続いた。
数百人の参加者が、次々と脱落していく。
剣術、槍術、刀術、拳法。
様々な武術が披露された。
だが、最後まで残ったのは二人だけだった。
一人は、楊天龍。二十五歳。
少林寺で修行した僧侶だ。
だが、今は還俗し、江湖を放浪している。
楊天龍の拳法は「龍虎拳」。
少林七十二絶技の一つで、剛と柔を兼ね備えた拳法だ。
楊天龍は筋肉質で、背が高い。
坊主頭に、鋭い目。
表情は穏やかだが、その眼光には強い意志が宿っている。
もう一人は、白霜華。二十三歳の女性。
峨眉派の弟子で、掌法の達人だ。
白霜華の掌法は「寒氷掌」。
掌から冷気を放ち、相手を凍らせる技だ。
白霜華は美しい。
長い黒髪、白い肌、澄んだ瞳。
だが、その美しさの裏には、冷徹な戦士の心がある。
二人は決勝戦の舞台に立った。
周囲には数千人の観衆がいる。
武林の名士たちが、固唾を飲んで見守っている。
審判が声を上げた。
「決勝戦、開始!」
楊天龍は拳を構えた。
龍虎拳の基本姿勢だ。
左足を前に、右足を後ろに。
拳は胸の前で握りしめている。
白霜華は掌を開いた。
寒氷掌の構えだ。
両手を体の前で円を描くように動かす。
掌から白い冷気が漏れ出す。
二人は動かなかった。
互いの隙を探っている。
風が吹く。
砂埃が舞う。
その瞬間、楊天龍が動いた。
地を蹴り、突進する。
拳を突き出す。
龍虎拳「猛虎下山」。
拳に内功を込め、相手を貫く技だ。
白霜華は身を翻して避けた。
軽功で空中に跳躍する。
そして、掌を楊天龍に向けた。
寒氷掌「氷霜千里」。
掌から冷気が放たれる。
冷気が楊天龍を襲う。
楊天龍は拳を振った。
拳から熱気が放たれる。
少林内功「金剛不壊」。
体から熱を発し、冷気を打ち消す。
冷気と熱気がぶつかり合い、蒸気が立ち上る。
白霜華は着地した。
すぐに次の攻撃を仕掛ける。
掌を連続で打ち出す。
寒氷掌「連環氷掌」。
掌の軌跡が残り、冷気の壁を作る。
楊天龍は拳で壁を砕いた。
龍虎拳「破山拳」。
拳に力を込め、一撃で壁を破壊する。
二人は接近戦に入った。
拳と掌が交錯する。
楊天龍は拳を連続で繰り出す。
白霜華は掌で受け流す。
だが、楊天龍の拳は重い。
白霜華の腕が痺れる。
白霜華は距離を取った。
楊天龍は追撃した。
だが、白霜華は素早い。
軽功で跳躍し、楊天龍の背後に回り込む。
そして、掌を楊天龍の背中に押し当てた。
寒氷掌「凍結封印」。
冷気が楊天龍の体に侵入する。
楊天龍の動きが鈍くなる。
体が凍り始める。
だが、楊天龍は内功を高めた。
金剛不壊の力で、体内の冷気を追い出す。
体から蒸気が噴き出す。
楊天龍は振り向き、拳を振った。
白霜華は後退して避けた。
だが、拳から放たれた拳気が白霜華を襲った。
龍虎拳「龍吟虎嘯」。
拳気が轟音を立てて飛ぶ。
白霜華は両掌を前に出した。
寒氷掌「氷壁護身」。
掌から巨大な氷の壁が現れる。
拳気が壁にぶつかる。
壁が砕ける。
破片が飛び散る。
白霜華は腕で顔を守った。
楊天龍は再び突進した。
拳を振り上げる。
龍虎拳最終奥義「龍虎合一」。
右拳に龍の力、左拳に虎の力を込める。
二つの力を同時に放つ技だ。
白霜華も覚悟を決めた。
寒氷掌最終奥義「極寒絶対零度」。
全身から冷気を放ち、周囲をすべて凍らせる技だ。
白霜華の体が青白く光る。
周囲の温度が急激に下がる。
地面が凍る。
二人は激突した。
楊天龍の拳が、白霜華の掌に当たる。
龍虎の力と、絶対零度の冷気がぶつかり合う。
凄まじい衝撃。
地面が砕ける。
観衆が悲鳴を上げる。
力のせめぎ合いが続く。
楊天龍は歯を食いしばった。
白霜華も必死に耐えている。
どちらも譲らない。
だが、やがて楊天龍の力が勝った。
龍虎の力が冷気を打ち破る。
白霜華は吹き飛ばされた。
地面に倒れる。
白霜華は起き上がろうとした。
だが、体が動かない。
力を使い果たした。
楊天龍は白霜華に歩み寄った。
手を差し伸べる。
「良い戦いだった」
白霜華は楊天龍の手を取った。
立ち上がる。
「私の負けです」
白霜華は頭を下げた。
「あなたが天下第一です」
審判が宣言した。
「勝者、楊天龍!」
観衆が拍手と歓声を上げた。
楊天龍には、九陽真経が贈られた。
だが、楊天龍は秘伝書を開かなかった。
代わりに、白霜華に渡した。
「これを受け取ってくれ」
白霜華は驚いた。
「なぜ、私に」
「お前は強い。この秘伝書は、お前に相応しい」
楊天龍は微笑んだ。
「俺は既に十分強い。これ以上の力は必要ない」
白霜華は秘伝書を受け取った。
涙が溢れた。
「ありがとう」
大会は終わった。
だが、楊天龍と白霜華の縁は続いた。
二人は共に旅をし、武術を磨いた。
そして、いつしか恋に落ちた。
数年後、二人は結婚した。
楊天龍は少林寺に戻り、僧侶として生きることを選んだ。だが、白霜華との愛は変わらなかった。
少林寺は特別に、楊天龍の結婚を認めた。
武林への多大な貢献を考慮された結果だった。
前代未聞のことだった。
その後、楊天龍と白霜華は、武林に新しい門派を立てた。
名前は「龍華派」。
龍虎拳と寒氷掌を融合させた、新しい武術を伝えた。
弟子たちは次々と集まり、龍華派は繁栄した。
ある日、楊天龍と白霜華のもとに、一通の手紙が届いた。
差出人は、血魔教の教主だった。
手紙にはこう書かれていた。
「楊天龍、白霜華。お前たちの武術は見事だ。だが、我々血魔教には敵わない。勝負を挑む」
楊天龍と白霜華は顔を見合わせた。
血魔教は、江湖で最も恐れられている邪教だ。
多くの武術家を殺してきた。
だが、楊天龍と白霜華は恐れなかった。
「行こう」
楊天龍は言った。
「ああ」
白霜華は頷いた。
二人は血魔教の本拠地に向かった。
険しい山道を登る。
やがて、巨大な城が見えた。
血魔教の城だ。
城門が開き、教主が現れた。
教主は巨大な男だった。
身長は二メートルを超える。
全身が筋肉で覆われている。
顔には無数の傷がある。
教主の名は、鉄山。
血魔教の最強の戦士だ。
「来たか、楊天龍、白霜華」
鉄山の声は雷のように響いた。
「ああ」
楊天龍は拳を構えた。
「お前を倒しに来た」
鉄山は笑った。
「面白い。では、戦おう」
戦いが始まった。
楊天龍と白霜華は二人で鉄山に挑んだ。
楊天龍は拳を、白霜華は掌を繰り出す。
だが、鉄山は強い。
拳を一振りするだけで、地面が砕ける。
楊天龍の攻撃を片手で受け止める。
白霜華の冷気も、鉄山には効かない。
鉄山の体は、内功で守られている。
楊天龍と白霜華は苦戦した。
だが、諦めなかった。
二人は力を合わせた。
楊天龍が鉄山を引きつける。
白霜華が背後から攻撃する。
連携が功を奏した。
鉄山の動きが鈍くなる。
そして、楊天龍と白霜華は同時に奥義を放った。
楊天龍の龍虎合一と、白霜華の極寒絶対零度。
二つの力が合わさり、巨大なエネルギーとなった。
鉄山に直撃する。
鉄山は吹き飛ばされた。
城の壁に叩きつけられる。
壁が崩れる。
鉄山は倒れた。
動かない。
楊天龍と白霜華は勝った。
血魔教の残党は逃げ去った。
楊天龍と白霜華は城を出た。
二人は手を繋いだ。
「やったな」
「ああ」
二人は微笑んだ。
その後、楊天龍と白霜華は武林の平和を守り続けた。
悪を倒し、弱者を助けた。
二人は英雄として語り継がれた。
そして、老いた後も、二人は共に生きた。
龍華派を弟子たちに託し、静かな村で暮らした。
ある日、楊天龍は白霜華に言った。
「俺は幸せだった」
「私もよ」
白霜華は微笑んだ。
「あなたと出会えて」
「俺もだ」
楊天龍は白霜華の手を握った。
二人は同じ日に、息を引き取った。
まるで約束していたかのように。
村人たちは、二人を同じ墓に埋葬した。
墓には、こう刻まれている。
「天下第一の拳、楊天龍。寒氷の掌、白霜華。永遠に共に」
月が昇る。
墓に花が供えられている。
風が吹き、花びらが舞う。
二人の魂は、今も共にある。




