【武侠アクション】血染めの剣
web漫画の武侠ものが面白かったので書いてみました。武侠の設定は詳しくわからないのでおかしな所も多いと思います。
月が昇る前、竹林に一人の剣士が立っていた。
名は李雲龍。二十八歳。
華山派の門下生で、剣術の達人として名を馳せている。
白い長衣を纏い、腰には一振りの剣。
鞘は黒漆、柄には龍の彫刻が施されている。
雲龍は目を閉じ、呼吸を整えていた。
今夜、宿敵と戦う。
十年越しの因縁に、決着をつける。
風が吹き、竹がざわめく。
雲龍は目を開けた。
気配がある。
前方、五十歩先。
黒衣の男が現れた。
名は魔剣・血無涙。三十五歳。
邪教「血魔教」の刺客で、百人以上を殺してきた。
血無涙の剣は赤い。
犠牲者の血で染まっているからだ。
「来たか、雲龍」
血無涙の声は低く、冷たい。
「待っていたぞ、血無涙」
雲龍は剣の柄に手をかけた。
「十年前、お前は俺の師父を殺した」
「ああ、覚えているとも」
血無涙は笑った。
「華山派の掌門、李天剣。良い剣士だった」
「師父の仇、今夜討つ!」
雲龍は剣を抜いた。
刃が月光を反射する。
血無涙も剣を抜いた。
赤い刃が、血のように輝く。
「来い、小僧」
雲龍は地を蹴った。
軽功を使い、空中に跳躍する。
三丈の高さまで舞い上がる。
空中で剣を構え、斬り下ろす。
華山派剣法「飛龍在天」。
剣気が走り、竹を斬り裂く。
血無涙は動かなかった。
剣を横に振る。
血魔教剣法「血河逆流」。
赤い剣気が雲龍の剣気とぶつかり合う。
衝撃波が広がり、地面が揺れる。
雲龍は着地した。
息を整える。
血無涙の実力は想像以上だ。
だが、退くわけにはいかない。
雲龍は再び攻撃した。
剣を連続で振る。
華山派剣法「連環剣」。
剣の軌跡が虹のように流れる。
一太刀、二太刀、三太刀。
血無涙は剣で受け流す。
だが、四太刀目で血無涙の頬をかすめた。
血が飛ぶ。
血無涙は舌で血を舐めた。
「やるではないか」
血無涙は反撃した。
剣を突き出す。
血魔教剣法「血光一閃」。
剣先から赤い光が放たれる。
雲龍は横に跳んで避けた。
光が竹を貫く。
竹が倒れる。
二人は距離を取った。
雲龍は内功を高めた。
体から白い気が立ち上る。
華山派内功「紫霞神功」。
雲龍の力が増幅される。
血無涙も内功を高めた。
体から赤い気が立ち上る。
血魔教内功「血殺魔功」。
邪悪な力が溢れ出る。
二人は再び激突した。
剣と剣がぶつかり合う。
火花が散る。
白い気と赤い気が絡み合う。
雲龍は華山派剣法を次々と繰り出す。
「白虹貫日!」
「蒼龍出水!」
「孤雁南飛!」
剣技が連続で炸裂する。
血無涙は血魔教剣法で応戦する。
「血海滔天!」
「修羅地獄!」
「魔王降臨!」
邪悪な剣技が雲龍を襲う。
竹林が剣気で切り裂かれていく。
地面に無数の溝ができる。
二人の戦いは、まさに死闘だった。
やがて、雲龍の左腕に血無涙の剣が掠めた。
深い傷だ。
血が流れる。
雲龍は顔をしかめた。
だが、攻撃の手を緩めない。
逆に、剣の速度を上げた。
華山派剣法最終奥義「九天玄剣」。
九つの剣気が同時に放たれる。
血無涙は防御に徹した。
剣を回転させ、剣気を弾く。
だが、一つの剣気が血無涙の肩を貫いた。
血無涙は後退した。
肩から血が溢れる。
「まだまだ!」
雲龍は追撃した。
剣を振り上げ、斬り下ろす。
血無涙は剣で受け止めた。
だが、雲龍の力は強い。
血無涙の剣が弾かれる。
雲龍の剣が血無涙の胸に迫る。
その時、血無涙は左手で暗器を放った。
三本の毒針が雲龍に向かって飛ぶ。
雲龍は剣で弾いた。
二本は弾けたが、一本が右脚に刺さった。
雲龍は膝をついた。
毒が回り始める。
体が痺れる。
血無涙は笑った。
「毒針の味はどうだ」
雲龍は歯を食いしばった。
内功で毒を抑える。
紫霞神功の力で、毒の進行を遅らせる。
だが、完全には防げない。
血無涙は剣を構えた。
「終わりだ」
血無涙は剣を振り下ろした。
血魔教剣法最終奥義「血染魔剣」。
剣から巨大な赤い剣気が放たれる。
雲龍に向かって落ちてくる。
雲龍は剣を握りしめた。
師父の顔が浮かぶ。
師父は言った。
「雲龍、剣は心だ。心が折れなければ、剣は折れない」
雲龍は立ち上がった。
毒の痛みを無視し、全力で剣を振った。
華山派剣法究極奥義「天剣帰元」。
雲龍の剣から、眩い白い光が放たれる。
光は剣気となり、血無涙の剣気とぶつかり合った。
白と赤の剣気が激突する。
凄まじい衝撃。
竹林が吹き飛ぶ。
地面が割れる。
二人は剣気をぶつけ続けた。
力と力のせめぎ合い。
どちらも譲らない。
だが、やがて雲龍の剣気が勝った。
白い光が赤い光を飲み込む。
血無涙の剣気が砕ける。
白い光が血無涙を貫いた。
血無涙は吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられる。
胸に大きな穴が開いている。
血が噴き出す。
血無涙は動けなかった。
雲龍は歩み寄った。
剣を構える。
血無涙を見下ろす。
「これで、師父の仇を討った」
血無涙は笑った。
血を吐きながら。
「良い剣だった……お前の師父と同じく……」
「師父を知っているのか」
「ああ……俺は元々、華山派の弟子だった……」
雲龍は驚いた。
「何だと」
「だが……追い出された……邪道に走ったとしてな……」
血無涙は咳き込んだ。
「お前の師父が……俺を追い出した……だから……殺した……」
雲龍は拳を握りしめた。
「そんな理由で……」
「復讐だ……それだけだ……」
血無涙は目を閉じた。
「だが……今の俺には……何も残っていない……」
血無涙は息を引き取った。
雲龍は剣を鞘に収めた。
仇は討った。
だが、心は晴れなかった。
血無涙もまた、被害者だったのかもしれない。
邪道に走った理由は何だったのか。
真実は、もうわからない。
雲龍は竹林を後にした。
毒はまだ体に残っている。
早く解毒しなければ。
雲龍は軽功で跳躍し、山を下りた。
翌日、雲龍は華山派に戻った。
師兄弟たちが出迎えた。
「雲龍、仇を討ったか」
「ああ」
雲龍は頷いた。
「血無涙は死んだ」
師兄弟たちは喜んだ。
だが、雲龍は複雑な表情をしていた。
その夜、雲龍は師父の墓に参った。
線香を上げ、報告した。
「師父、仇を討ちました。ですが……」
雲龍は言葉を詰まらせた。
「血無涙は、元華山派の弟子だったそうです」
風が吹いた。
まるで師父が答えているかのように。
雲龍は頭を下げた。
「師父、俺はまだ未熟です。剣の道は深く、険しい」
雲龍は立ち上がった。
「これからも、修行を続けます」
月が昇った。
雲龍は剣を抜き、型を演じた。
華山派剣法の基本から、奥義まで。
一つ一つ、丁寧に。
剣は心だ。
師父の教えを、雲龍は忘れない。
数年後、雲龍は華山派の新しい掌門となった。
弟子たちを育て、剣術を伝えた。
だが、雲龍は復讐を教えなかった。
剣は人を殺すためにあるのではない。
剣は心を磨くためにある。
それが、雲龍の信念だった。
ある日、一人の若者が華山派を訪れた。
若者は言った。
「俺の父は、血無涙です」
雲龍は驚いた。
若者は続けた。
「父を殺したのは、あなたですね」
「ああ」
雲龍は頷いた。
「復讐に来たのか」
「いいえ」
若者は首を振った。
「父は、間違った道を歩みました。それは理解しています」
若者は頭を下げた。
「ですが、剣を学びたいのです。正しい剣を」
雲龍は若者を見た。
真剣な目だ。
雲龍は微笑んだ。
「わかった。弟子にしよう」
「ありがとうございます!」
若者は深く頭を下げた。
雲龍は若者を育てた。
剣術を教え、心を教えた。
若者は成長し、立派な剣士になった。
そして、いつか華山派を継ぐ者となった。
雲龍は老いた。
だが、剣の腕は衰えなかった。
心が折れなければ、剣は折れない。
師父の教えは、今も雲龍の中に生きている。
竹林には、今も風が吹いている。
あの夜の戦いの痕跡は、もうない。
だが、雲龍の心には、永遠に刻まれている。




