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世界は静かに壊れている【ショートショート集・短編集】  作者: 御影のたぬき


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33/83

【ホラー】未読1

 午前二時三十二分、スマホが振動した。

 通知は出ない。画面も光らない。ただ、手のひらの中で一度だけ、確かに震えた。

 気のせいだと思って画面を見ると、ロック画面に未読通知が一件だけ表示されていた。

「写真 1枚」

 送信者は自分の電話番号だった。

 開こうとした瞬間、通知は消えた。

 トーク履歴にも何も残っていない。送信済みにも、ゴミ箱にもない。通信履歴を確認しても、送受信の記録そのものが存在しなかった。

 翌朝、会社で同僚にその話をした。笑われた。

 その場でスマホを操作してみせると、同僚が急に黙った。

「…これ、今撮った?」

 画面には写真が一枚表示されていた。

 暗い部屋。床に近い視点。布団の縁と、ベッドの脚が写っている。自分の部屋だった。

 そして写真の右下に、誰かの指が写り込んでいた。

 人差し指と中指だけ。肌の色が不自然に白い。

 Exif情報を見ると、撮影時刻は午前二時三十二分。

 その時間、自分は確実に布団の中にいた。スマホは枕元に置いたままだ。

 その夜、電源を切って寝た。

 午前二時三十二分、今度は音がした。

 スマホじゃない。

 部屋の中から、カメラのシャッター音。

 飛び起きて電気をつけた。誰もいない。

 枕元のスマホは、電源が入っていた。

 画面には、未読通知が一件。

「写真 1枚」

 震える手で開く。

 写っていたのは、眠っている自分だった。

 布団の中。口が少し開いている。

 撮影距離が近すぎる。顔の半分がフレームから切れている。

 今度は指ではなかった。

 肩から先の腕が、画面の端に写っていた。

 自分のものじゃない。毛の生え方も、骨格も違う。

 削除しようとした瞬間、画面が切り替わった。

 カメラアプリが起動している。

 インカメラではない。

 アウトカメラ。

 画面には、今の部屋がリアルタイムで映っていた。


 ベッドの横に何かが立っていた。

 顔はフレームの外。

 だが、腕の位置がさっきの写真と同じだった。

 スマホを落とした。


 床に当たる音と同時に、背後で呼吸音がした。

 耳元じゃない。

 首の内側から聞こえた。


 翌朝、スマホは警察に提出した。

 だが解析結果は異常なし。

 保存されていた写真は一枚もなかった。

 ただ、通信会社から一点だけ説明があった。

 午前二時三十二分、

 自分のスマホから、

 同じ基地局に向けて大量のデータ送信が行われている。

 送信先は、

「近距離端末」。

 距離、ゼロメートル。

 それ以降、スマホは鳴らない。

 通知も来ない。

 だが、午前二時三十二分になると、必ずバッテリーが一%だけ減っている。

 今も。

 この文章を書いている最中も。

 画面の端に、小さく表示されている。

 未読 1

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