【ホラー】未読1
午前二時三十二分、スマホが振動した。
通知は出ない。画面も光らない。ただ、手のひらの中で一度だけ、確かに震えた。
気のせいだと思って画面を見ると、ロック画面に未読通知が一件だけ表示されていた。
「写真 1枚」
送信者は自分の電話番号だった。
開こうとした瞬間、通知は消えた。
トーク履歴にも何も残っていない。送信済みにも、ゴミ箱にもない。通信履歴を確認しても、送受信の記録そのものが存在しなかった。
翌朝、会社で同僚にその話をした。笑われた。
その場でスマホを操作してみせると、同僚が急に黙った。
「…これ、今撮った?」
画面には写真が一枚表示されていた。
暗い部屋。床に近い視点。布団の縁と、ベッドの脚が写っている。自分の部屋だった。
そして写真の右下に、誰かの指が写り込んでいた。
人差し指と中指だけ。肌の色が不自然に白い。
Exif情報を見ると、撮影時刻は午前二時三十二分。
その時間、自分は確実に布団の中にいた。スマホは枕元に置いたままだ。
その夜、電源を切って寝た。
午前二時三十二分、今度は音がした。
スマホじゃない。
部屋の中から、カメラのシャッター音。
飛び起きて電気をつけた。誰もいない。
枕元のスマホは、電源が入っていた。
画面には、未読通知が一件。
「写真 1枚」
震える手で開く。
写っていたのは、眠っている自分だった。
布団の中。口が少し開いている。
撮影距離が近すぎる。顔の半分がフレームから切れている。
今度は指ではなかった。
肩から先の腕が、画面の端に写っていた。
自分のものじゃない。毛の生え方も、骨格も違う。
削除しようとした瞬間、画面が切り替わった。
カメラアプリが起動している。
インカメラではない。
アウトカメラ。
画面には、今の部屋がリアルタイムで映っていた。
ベッドの横に何かが立っていた。
顔はフレームの外。
だが、腕の位置がさっきの写真と同じだった。
スマホを落とした。
床に当たる音と同時に、背後で呼吸音がした。
耳元じゃない。
首の内側から聞こえた。
翌朝、スマホは警察に提出した。
だが解析結果は異常なし。
保存されていた写真は一枚もなかった。
ただ、通信会社から一点だけ説明があった。
午前二時三十二分、
自分のスマホから、
同じ基地局に向けて大量のデータ送信が行われている。
送信先は、
「近距離端末」。
距離、ゼロメートル。
それ以降、スマホは鳴らない。
通知も来ない。
だが、午前二時三十二分になると、必ずバッテリーが一%だけ減っている。
今も。
この文章を書いている最中も。
画面の端に、小さく表示されている。
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